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MLB Column from USA

成長ホルモン使用の「罪と罰」

李啓充 = 文

text by Kaechoong Lee

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2005/03/18 00:00

 下院政府改革委員会がサミー・ソーサ、マーク・マグワイアなど、現・元大リーガー7人を証人として召喚することを決めるなど、MLBはまたまた薬剤スキャンダルで揺れている。

 セリグ・コミッショナーにしてみれば、「ようやっと回数無制限の抜き打ち検査体制をスタートさせたのに、なぜ議会からいじめられるのか……」と、不本意な気持ちだろうが、識者の評価は、MLBの薬剤に対する対応は検査も処分も「甘すぎる」ということで一致している。議会が証人召喚を決めたのも、「MLBに自浄能力なし」と考える世論を反映したにすぎないのである。

  MLBの検査がどれだけ甘いかということをもっともよく示しているのは、事実上、成長ホルモンがまったく規制されていないことだろう。成長ホルモンは、確かにMLBの禁止薬剤のリストに含められてはいるものの、現在の技術では血液の検査でしか検出できないので、尿の検査だけに頼るMLBのやり方では絶対に検出不能なのである。MLBの検査の「大穴」をせせら笑いながら、一部の選手は、せっせと成長ホルモンを注射し続けていると噂されるゆえんである。

 検出されないので「安心」して使用できるのはいいが、使用する側にとって問題なのは、その入手がむずかしいことである。ステロイド製剤の場合は比較的単純な化学物質なので合成も容易であるし、インターネットやメキシコの薬局などを通じて入手することも簡単だが(獣医用=動物用のステロイドを使用することも広く行われている)、成長ホルモンの場合は「バイオ」製剤なので高度の技術と施設がなければ製造することもできないので、簡単には入手できないのである。

 では、スポーツ選手がどうやって成長ホルモンを入手するかというと、「闇市場」からである。そして、「闇市場」に成長ホルモンという「商品」を供給しているのは誰かと言えば、生活に困ったエイズ患者である。米国では、激しい体重減少など「消耗症候群」に陥ったエイズ患者に対して、成長ホルモン治療の有効性が認められ広く実施されているが、成長ホルモンを処方されたエイズ患者が生活費を得るために闇市場に売っているのである(筋肉増強剤疑惑の渦中にある選手はジャイアンツやアスレチクスに多いが、サンフランシスコ地区はとりわけエイズ患者が多いことで知られ、決して偶然ではない)。

 大金持ちの選手達が成長ホルモンを使うことで「キン肉マン」化している影に、貧窮に喘ぎ、ガリガリにやせ細ったエイズ患者が多数存在することを思うと、その「罪」は極めて大きいと言わなければならない。

 「使ってもばれないし効果も抜群とすると、成長ホルモンを使う選手にとっては使い得なのか。世の中に正義はないのか」と、読者はがっかりするかも知れないが、実は、成長ホルモンを使うような不心得者には、これ以上はないという「罰」が待っているので安心されたい。というのも、生物の「長生き(そしてその反対の短命)」に関与する遺伝子の研究がここ数年大きく進展し、成長ホルモンの過剰は「短命」を招くということがわかってきているからである。

  「成長ホルモンは若返りの薬と聞いた。使った選手が早死にするなんて嘘だろう」と疑問に思う読者には、50年代にヤンキースの黄金時代を築いた名将、ケーシー・ステンゲルの口癖として有名になったせりふでお答えしよう。

  「You can look it up (調べればちゃんと出ている)」。

(たとえば、米科学誌「サイエンス」2003年2月28日号に簡明な総説が掲載されている)。

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