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photograph by Yukihito Taguchi
MLB Column from USA

松井秀喜の大間違い。

李啓充 = 文

text by Kaechoong Lee

photograph by Yukihito Taguchi

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2004/09/10 00:00

 日本では「タイムリー・ヒット」と言うが、アメリカでは「クラッチ・ヒット(clutch hit)」と言うのが普通である。また、「クラッチ・ヒッター(clutch hitter)」は、「クラッチ・ヒット」をしょっちゅう打つ「勝負強い打者」の意味だが、決して「タイムリー・ヒッター」とは呼ばないので注意が必要だ。

 さて、勝負強さを現す指標としてもっともよく使われる数字は、「得点圏に走者を置いたときの打率(runners in scoring position の頭文字をとってRISPと略される)」であるが、これで見ると、ア・リーグ1位はレッドソックスの2割9分4厘(8月30日現在)であり、錚々たる顔ぶれのスーパースターで「史上最強打線」を編成したはずのヤンキースは2割7分6厘とリーグ5位にしか過ぎない。しかも、「アウトカウントが2死のときのRISP」は2割3分2厘(リーグ12位)と、数字は、ヤンキースの打線が意外とチャンスに弱いことを示している。

 チャンスに弱いヤンキース打線を象徴するのが、アレックス・ロドリゲスだ。RISP2割1分4厘は、(チャンスでの打席数100以上の選手中)リーグ77位と、「並み」にも満たない成績であるだけでなく、ヤンキースのレギュラーの中でも最低の数字なのである。ロドリゲスについては、「ニューヨークのプレッシャーの下で活躍できるか」ということがシーズン前に危惧されたが、今の所、「しっかりプレッシャーに負けている」と言ってよいだろう。最近は、チャンスで凡退する度にヤンキー・スタジアムで激しいブーイングを浴びるようになったが、年俸2170万ドルとメジャー一の高給を取っているのだからこれも仕方あるまい。

 では、チャンスに弱いヤンキース打線を支えているのは誰かといえば、これは、ゲリー・シェフィールド(RISP3割2分8厘)と松井(同じく3割0分8厘)の二人につきる。しかも、松井の場合、本人が「不本意だった」とした昨シーズンでさえもRISP3割3分5厘はチーム1位だったのだから、その勝負強さはを特筆に価する。

 こうした松井の「勝負強さ」は、当地のヤンキース・ファンにも、当然、明瞭に認識されている。たとえば、ヤンキース専属アナウンサーのマイケル・ケイが、ラジオ聴取者を対象に「ワールドシリーズ第7戦終盤、ここで打てば同点というチャンスに打席に立たせたいのは誰?」というアンケート調査を行ったところ、「是非松井に打たせたい」という答えががダントツの1位を占め、同率2位のシェフィールドとジーターを大きく引き離したのである。昨季ア・リーグ選手権第7戦8回裏にペドロ・マルティネスから放った痛烈な二塁打を始めとして、松井が放った劇的ヒットの数々が、ヤンキース・ファンの脳裏に鮮烈な印象を焼き付けたからこそのアンケート結果に他ならないのである。

 ちなみに、ケイが、「ファンがクラッチ・ヒッターとしての松井をどれだけ頼りにしているか」というこの調査結果を伝えたところ、松井は「No, no, they must be wrong(ファンの間違いに違いない)」と答えたそうである。松井の奥ゆかしい性格が言わせた言葉なのだろうが、RISPを見ても明らかなように、数字はファンが正しいことをしっかり証明している。

 ……松井君、間違っているのは君の方なのだぞ。

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