昨年末スタインブレナーが倒れた際に、私が、「レッドソックス・ファンから」とサインした見舞い状を送った話を前々回に書いたが、先々週、スタインブレナーから、礼状が届いたので驚いた。
「親愛なる啓充殿、多忙であろうに、わざわざ時間を割いて私の病気回復を祈るカードを送ってくれてありがとう」と書き出してあったが、すぐに、「あなたがレッドソックス・ファンなので、私は二重に感謝した」と続いたのには、笑ってしまった。
さらに、「あなたとあなたのご家族にとって2004年が幸せで健康な年となりますように」と結んでいたが、その文頭に「Nevertheless」という副詞を使って、「お前はレッドソックス・ファンではあるけれども不承不承祈ってやるのだぞ」というニュアンスがこめられていたので、大笑いした。
見舞い状を出したときに、「ひょっとしたら礼状がくるかも知れない」と思ってはいたが、くるとしても球団が用意した形式的なものだろうと予想していた。それが、このようなユーモア溢れる礼状が届いたので、驚くと同時にスタインブレナーのユーモアのセンスにも感心した次第である。
メジャーのスターの中には、専門の業者を雇ってファン・レターに対する返事を「処理」する選手もいるというが、ファンとしては、返事をもらうだけでも嬉しいものである。しかも、いかにも大量に印刷されたかのような紋切り型の文面ではなく、本人がわざわざ時間を割いて書いてくれた返事であったりすると、一も二もなく感激することになる。
『Baseball Letters』(セス・スワースキー著、1996年)という本があるが、これは、ファン・レターに対する返事を集めただけの本である。ファン・レターとはいっても、ただ「頑張って下さい」と激励するのではなく、たとえば、テッド・ウィリアムズに対して、「他の打者から役に立つ打撃アドバイスを得たことがあるか?」と聞くなど、本人でなければ答えようがない質問に対する返事を集めているので、メジャーの歴史に興味があるファンにとってはたまらなく面白い内容となっている。この本、そこそこ売れたようで、続編が2冊(『Every Pitcher Tells a Story』と『Something to Write Home About』)出ているほどだ。
ところで、『Baseball Letters』に収載された手紙によると、ウィリアムズにとって一番役に立ったアドバイスとは、「(むずかしい球は捨てて)やさしいボールを打つこと」であったという。アドバイスの主はロジャース・ホーンズビーだったが、メジャーの長い歴史の中でも、二度、三冠王になったのはウィリアムズとホーンズビーの二人だけだったことを考えると興味深い。
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