◇キリンチャレンジカップ2012 日本1−1ベネズエラ
疲労困憊(こんぱい)の中で死力を振り絞った90分間を終えると、DF吉田は札幌ドームの天井を見上げて大きく息を吐いた。「疲れているのは僕だけじゃない。昨日、一昨日来た人も時差ぼけもあるし、内容も結果も最低限のもの」。1失点ドローを悔やみつつ、吉田は長い道のりを走りきった充実感もにじませた。
ロンドン五輪で全6試合にフル出場し、休む間もなく合流したベネズエラ戦。9月のW杯最終予選イラク戦で出場停止となる今野、栗原が不在のため、吉田のパートナー探しが守備陣の主題となった。そのため、「90分やるだろうと予感はあった」と覚悟はできていた。ただ後半17分の失点シーンでは疲労の影響が出た。ゴール前で相手FWフェドルの後ろにつき、一度はシュートを防いだが、そのこぼれ球を体を預けられながら押し込まれた。「五輪で力を出せても、こっちで出せないと評価されない」。守備陣全体での失点だったが、言い訳はなかった。
イタリア、イングランドなどの数クラブから打診を受けている移籍話はいまだまとまらず、一度オランダに帰る。すでにリーグ戦が始まっている所属のVVVフェンロからは即チーム合流の要請が来ており、休む暇なくシーズンに突入する可能性も高い。ただ、W杯最終予選前の5月の合宿から約80日間、青いユニホームをまとい続けた旅は終わった。「ホッとしていますね。やっと終わった」。誰よりも濃い経験をした夏を経て、23歳は日本の守備の大黒柱に成長した。 (宮崎厚志)
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