◇キリンチャレンジカップ2012 日本1−1ベネズエラ
苦虫をつぶした。空砲に終わったMF本田は、どこか納得しきれない色を顔に浮かべた。「先制しただけに勝ちたかった」。後半は1トップにも入ったが無得点に終わった。不完全燃焼。新ヘアスタイルのように鮮やかに試合を彩れなかった。
後半17分に同点にされると、一気にギアを上げた。前半はほとんど発動しなかったスプリントを連発した。失点から2分後、君臨していた中央から左サイドへ突如動きだした。香川からの浮き球パスを引き出し、ワントラップから左足を強振した。
「中と外は状況を見て。両サイドに顔を出すことは意識した」
序盤は中央でポスト役に、終盤は一転して外を使った。後半21分には豪快なジャンピングボレー。同22分にも右足でシュートを放ったが、枠を捉えきれなかった。そして、同29分には交代したFW前田に代わって、2010年南アフリカW杯で務めた1トップに入った。
ザッケローニ監督は「シンプルに本田と中村を代えようと思ったが、前線が疲れているように見えたのでキープできる人間を入れたかった」と起用の意図を語った。本田を始点に2列目の機動力を生かす。スクランブル用の攻撃パターンを試したがネットは揺れなかった。
本田は「厚みがなかった。連動をしきれなかった」と強い口調で言った。チーム最多となる7本のシュートも空砲に。ロシアリーグでは4戦2発と得点力を示したが、前半21分のシュートはポストに嫌われた。「原因はいろいろある」。そう言うと目に力を入れた。試合を決める一撃−。背番号「4」の意識は、その一点に集約された。 (占部哲也)
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