「使用済み小型電子機器再資源化促進法」(小型家電リサイクル法)の成立を受け、各地で携帯電話やデジタルカメラなどのリサイクルの機運が高まっている。中部地区は自治体と中間処理業者が一体となって促進法成立に先駆けて、小型家電の回収・再生を実践してきた。“コストのかかる廃棄物”から“循環できる有価物”へと転換させた「中部モデル」が、促進法成立を機に注目されている。(名古屋編集委員・山中久仁昭)
3日に成立した小型家電リサイクル法では自治体の範囲を超えて回収する事業者を国が認定。携帯電話やデジタルカメラ、二次電池などの再資源化を後押しする。2013年度にも施行される見通しだ。中央環境審議会(環境相の諮問機関)小委員会の11年度資料によると、国内の小型家電は約11億7000万台。このうち、約2億6000万台は使用後も顧客が保管し、9億台超が廃棄されている。廃棄分のうち国内でのリサイクル量は15%。残りは市町村が埋め立て・焼却したり、一部は海外流出したりしている。
【新法の背景に】
しかし、小型家電は各種金属の“宝庫”。鉄やアルミニウム、銅などのベースメタルを多く含む。金や銀などの貴金属、レアメタル(希少金属)も使われる。「小型家電の排出総量に対するレアメタルの量は少なすぎる」(関係者)現実もあるが、地道に積み上げれば“宝の山”ができるのも夢ではない。
小型家電リサイクル法が当初いわれた規制法ではなく、振興法に落ち着いた背景には「中部モデル」の存在があるとされる。中部モデルとは、小型家電の回収・選別を工夫して有用金属を一定の量にまとめ、中間処理事業者に有価物として売買する産官の取り組み。自治体には廃棄物処理業務に大きく変えなくてよいほか、ゴミ減容化と薬剤の低減によってコスト削減につながる利点もある。
同モデルでは自治体と事業者が、いわば「ウイン―ウインの関係」を構築できる。旗振り役である中部経済産業局の紀村英俊局長は「中部モデルでは経済原理を働かせればゴミが資源になることを立証した。自主的に取り組む精神も評価された」と新法に一定の影響を与えたと語る。
【フォーラム設立】
中部経産局は中部モデルの核となるリサイクルの普及・啓発組織「資源循環フォーラム」を11年に設立。現在38自治体とアビヅ(名古屋市港区)、トーエイ(愛知県東浦町)、トヨキン(同豊田市)、ハリタ金属(富山県高岡市)、三豊工業(富山市)、エコネコル(静岡県富士宮市)の6社が参加する。管内の参加自治体は全体の約25%を占め、同局所管外の長野、静岡、福井県内の3自治体も入会した。
中でも先進的なのはゴミ処理費の削減が喫緊の課題だった愛知県豊田市。小型家電などを年72トン選別して事業者に販売する。価格は一キログラム当たり約0・5円。電子部品のハンダ付けに使う鉛など有害物質が土壌に溶け出さないようにする薬剤「キレート剤」の年間使用量を数千万円に半減させた。
岐阜県多治見市も破砕施設や破砕残渣(ざんさ)焼却処理にかかるコストの軽減に11年7月から取り組み、約8カ月間で小型家電を約94トン回収した。経済産業省が11年にまとめた「自治体における小型家電リサイクルの先進的取組事例」の全国25件のうち、18件が中部地域の実績だ。小型家電の回収ボックスを自治体が所定の場所に設置して満杯になったら事業者が引き取るほか、他の金属類と合わせて小型家電を回収するなど量をまとめる工夫をしている。
同フォーラムは12年度に、会員全体で前年度比25%増の2500トンという小型家電の回収目標を掲げる。これまでの取り組みに手応えを感じる中部経産局は「実は有価で売却できることを知らない自治体が多く、“発想の転換”を促したい」(環境・リサイクル課)という。同局によれば、小型家電は人口10万人当たり月間2―10トンが見込まれ、中間処理事業者への売却価格は一キログラム当たり0・5―21円が相場だ。
【堅実かつ合理的】
中部モデルは、堅実で合理的な県民性などに支えられて広がりをみせる。中部地区はモノづくりの先進地域。「循環型ビジネスの重要性を考え、静脈産業を振興したい」(同)と、小型家電リサイクルには産業振興の狙いもある。
小型家電リサイクル法はあくまで振興法であり強制力はない。中部の関係者には同法を生んだ精神をかみしめ、同法の施行をビジネスチャンスにするしたたかさもうかがえる。