2011年11月30日(水)

雑!南蛮文化館

Theme: ミュージアム

              2011年の11月27日(日曜) 11月最終の日曜日に行ってきました!

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ここは知る人ぞ知る名品の宝庫、というものの足を運んだのは今回が初めて。
その名を知ったのは忘れもしない高校時代。
当時の美術の先生(あだ名はヌルヲ)が
『俺は煮詰まったら、いつもあそこに行くんや。おもろいで~。』と言っていたのを思いだしたから。

しかし、場所が変。
阪急沿線の中津駅という梅田ターミナル駅の次であるがゆえに
ほとんど乗降者がいない辺鄙な駅なのだ。
用事がないので降りない。
だから、あるのは知っていたし、看板も見えるが一度も行ったことがなかった。

ところが、今年中津周辺の辺鄙さに写欲がそそられ、降り立った際、
こちらにも足を運んだが、なんと閉まっていた。
そうなのだ、南蛮文化館はいつの頃からか、
年二回しかオープンしないことになっていた。
5月と11月の2回に限って、開館するという。
そこで、今回初めて訪問したというわけ。
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上は文化館1階から2階を見た画像。
毎回、テーマが変わり、少しは展示品を替えているようだが、
たくさん美術館や博物館を見てきた者にとって、ここほど凄いところは見たことがない。
いやいや、所蔵されている品も凄いが、陳列の仕方が凄い!

相当希少価値があると素人目にもわかるほどの作品群が
まさに『雑!』に陳列されていることが凄い!
他のミュージアムなら当然ガラス製の保管ケースに入れるはずが、
ここでは、そのまま放置(?)プレイ状態でポンと置かれているのだ!

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イエズス会の南蛮寺(教会)で使用されていたであろう
紋章入り書見台(蒔絵螺鈿:上図)や鳥獣草花蒔絵紫檀大櫃(西洋で使われた宝箱:下図)などが
そのまま誰でも触れる状態で置かれている。

中には、ハプスブルク家紋章入りの古伊万里花瓶が
作品の裏側に隠すように置かれていたり、
よくわからない物品が、これもコレクションのひとつなのだろうが、
足元に隠すように置かれていたのは何だったのだろうか?
とにかく、ツッコミどころが多すぎる。

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その上、陳列されている作品の情報が少ない!
タイトルだけという有様なのだ。
中には、なんの但し書きもなく、そのまま放置されているものも少なからずあった。

置かれている作品のほとんどが桃山時代かと思われるものの、
戦後日本を代表する彫刻家船越保武氏の『原の城』や『マリア像』などもあり、
様々なものが雑然と混合する摩訶不思議な世界。

作品全ての情報は『図録を買え』ということなのか?
結局、帰りに図録を購入したが、包装紙に入れるでもなく、
そのまま渡されたのにも驚いた。
無駄なことはしないというコンセプトなのだろうか。

この文化館の収蔵品には、重文指定の南蛮屏風がある。
作者不詳だが、特筆すべきは南蛮寺(教会)の様子が描かれていることだ。
フロイスの日本史によると、
宣教師らにとって、日本の布教で最も試練だったのは、
迫害でもなく、言葉でもなく、『正座』だったそうだ。

屏風には、慣れない正座をして、お茶(!)を飲む姿が描かれている。
当時、布教をする上で、日本で大流行していた茶の湯を取り入れていたことが
よくわかる貴重な資料だ。

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そして、イエズス会の宣教師が聖杯を捧げる図も描かれている。
千利休が完成した『侘び茶』にもキリスト教の儀式の影響が見られる。
聖餅といわれたものは日本では麩菓子の一種だったろう。

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また、屏風には当時の風俗も克明に描かれている。
南蛮渡来品は、当時のイケてる庶民の最先端ファッションだったことがよくわかる。
当時の人たちに会ってみたいものだ。

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黒い服をまとっているのは日本人宣教師で、後方には舶来品を扱う店が並ぶ。
扱う品々は『帽子、反物、壺などの調度品、毛皮、刀剣』など。
刀剣や反物は、南蛮人が土産に買ったのだろうか。

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犬?鹿?アルパカ?それとも空想の動物か?
南蛮人が連れ歩くペットちゃんの赤いリボンが可愛い。

とにかくこの南蛮文化館の収蔵品は凄い!
絵画から漆芸、像、陶磁器、金工、古地図、書籍、茶器、火縄銃などなど、
この時代が好きな人ならば、おそらく狂気乱舞するのではないか
と思われるものばかりが詰め込まれているのだ!
その中でも気になった巻物をひとつ。

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稲富一夢が創始した稲富流鉄砲秘伝書
戦国時代から江戸初期(1552~1611)まで活躍した砲術家がしたためたものらしいが、
それにしても胴長の人間が大きいのか、馬が小さいのか?
正解は、馬が小さい。
この時代の馬は今のポニーくらいの大きさだった。
この文化館の館長兼オーナーが北村芳郎氏だが、
氏に関しても詳しいことはわからずじまい。
ご自分のことはあまり語らない人らしい。

つくづく感嘆したのは、1600年前後の(桃山から江戸初期まで)人たちのほうが
鎖国に入った江戸人よりもよほど科学的に優れていたということ。
この時代の流行は、世界・日本地図屏風で、大抵の裕福な家にはあったようだ。
大航海時代を肌で知り、地球が丸いことも理解し、
西洋の楽器(リュートやリコーダーなど)を奏でていた。

坂本龍馬は、19世紀後半に初めて、地球が丸いことを知ったのに、
およそ250年前の人は、とうに知っていたのだから…。
鎖国は平和を作り出したけれど科学的にはかなり遅れた時代だったのですね。

下は、1610年前後に描かれた世界地図屏風 
日本人絵師により日本が描き入れられたことで当時最先端となった地図。
現在、神戸の香雪美術館に収蔵されている。
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そうそう『額縁をくぐって物語の中へ』もいよいよ佳境に入りましたね。
先週は『パリ周辺を歩く』
11月21日(月) ルノワール『ムーラン・ド・ギャレット』
22日(火) モネ 『サン・ラザール駅』
23日(水) カサット 『パリ・オペラ座の黒衣の女』
24日(木) ドガ 『アブサントを飲む人(カフェにて)』
25日(金) マネ 『草上の昼食』

今週からは『古今東西宴会風景』
11月28日(月) 古代ポンペイの壁画 『宴会の場面』
29日(火) ヴェロネーゼ 『カナの婚礼』
30日(水) 歌川広重 『東都名所高輪廿六夜待遊興の図』
12月1日(木) コタン 『マルメロの実、キャベツ、メロン、胡瓜』
2日(金) モネ 『午餐』

最近の額縁は、番組の進め方もすっかり堂に入り、
関連絵画の集め方もたいしたものだし、
関連エピソードを含めるとわずか15分ですが、
その準備たるや大変だと思います。

特に感銘したのはドガの『アブサントを飲む人』
まるで写真のような構図でしたね。
これからも意外な作品に出会えるのが楽しみです。

美の饗宴などは、たまに時間が余るのか、
実験風景など時間延ばしにしか思えないコーナーを
放り込むよりはよほどマシですね。

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