負担増の社会:消費税10%へ/2 雇用悪化、貧困化する30代
毎日新聞 2012年08月15日 東京朝刊
政府は増税時に、現金給付で低所得者を支援する方針だ。対象は住民税非課税世帯(約3100万人)とする案がある。東京23区で夫婦と子供2人の世帯なら年収255万7000円が目安だ。吉田さんは300万円前後で、対象から外れる可能性が高い。復興増税なども加わり、消費税が10%になる頃には、年間の負担増が20万円を超えそうだ。生活必需品の消費は減らしにくく、低所得者ほど増税の負担感が重い「逆進性」が吉田さんを直撃する。
この4月、ローン返済を相談しようと駆け込んだNPO法人の担当者に「完済まで、マンションの事実上の所有権は債権者にあります」と言われ、力が抜けた。「今手放せば、これまでの返済が無になる」。悩む吉田さんだが、増税の負担が決断を促そうとしている。
30代の雇用者の年収は、97年に500万〜699万円の比率が23・7%で最も高かったが、雇用環境の悪化で07年には300万円台が18・7%で最多となり、「低所得にシフトした」(内閣府)。野田佳彦政権は「分厚い中間層の復活」を掲げるが、資産形成や子育てにお金がかかる30代で貧困化が進む。過去の消費増税では所得減税などで負担を相殺したが、今回は純増税。限られた財源を生活の苦しい現役世代にどう配分するか、家計の負担軽減策が問われる。=つづく
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◆538万円