東京電力福島第1原発事故で放射性物質に汚染された森林の実態を明らかにしようと、野生の猿を利用した汚染マップ作りを高橋隆行・福島大教授(ロボット工学)が計画している。高橋教授は「森林の汚染を調べるのは難しく、まさに神ならぬ、『猿のみぞ知る』だ。詳細な調査のために一役買ってもらう」と期待を込める。福島県の7割を占める森林の汚染は、今も実態の把握が進んでいない。
調査は、県鳥獣保護センターと共同で実施する。まず、旧計画的避難区域の飯舘村や警戒区域の浪江町など汚染度の高い地域に生息する野生の猿を捕獲。猿の首に、線量計やGPS(全地球測位システム)などを備えた小型計測器を取り付けて山に放す。約1カ月間、計測器に計測器に空間線量を記録した後、計測器を遠隔操作で取り外してデータを回収する。
高橋教授によると、猿は群れで行動し、平均約4ヘクタールを縄張りにする。1頭から始め、頭数を増やして範囲を広げたい考えだ。
昨年10月に福島市内の野生の猿1頭で実験して計測器を回収したが、機器の不良でデータがとれていなかった。今秋の実験再開を目指し、計測器の改良を進めている。高橋教授は「文部科学省が航空機でモニタリングしているが、詳細な線量は把握できておらず、早期の実態調査が必要だ。猿でうまくいけば、イノシシや野犬にも応用したい」と話している。【神保圭作】