先祖代々の故郷が放射能で汚染されたということ
鬼城の俳句に「生き代わり死に代わりして打つ田かな」という名句がある。田というものをつくるには世代を重ねなければならない。世代を重ねた田だけが本当の田であり、できたばかりの田は「新田」と呼ばれて区別された。田が放射能に汚染されて耕作不適地どころか居住不適地となったことの意味は先祖代々の努力がほぼ未来永劫に失われたということである。セシウムは30年で半減期を迎えるのだから未来永劫は大袈裟でないか、と反論が出るかもしれない。除染という手段もある。除染すれば居住や耕作が可能になるのだから、永その土地が久に失われると言うのは悲観に過ぎよう。理屈の上では確かにそうだが、現に高濃度放射能に汚染された田や畑を除染するとして、誰が、いつどうやってするのか?除染した廃土をどこにどのように保管するのか?除染の費用は誰が出すのか?汚染された土地が安全になるまでそこに住んでいた農業者は何をして生きていけばいいのか? 除染が済むまで耕作地や居住地や住宅の売買はできるのか?その価格は市場原理に任せていいのか?
農家にとって水田は生産の場であり生活の環境であり、財産であり、人として生きて行くことを可能にする条件であった。それが一挙に崩れ去ったのである。
東電が原発と引き換えに支出した補助金が関係市町村をどんなに潤したにせよその代償は余りにも大きい。この取引は言わば人々の命と引き換えたに匹敵するめちゃくちゃな取引だった。原発には恐ろしい欠陥があった。この欠陥は原発を理解していた人々はあることを知っていたが、彼らはなぜか安全神話という作り話を広め、危険はないと人々に信じさせた。
原発につかわれる燃料棒は使いきった後、少なくとも万年を超える期間安全に保管し続ける必要がある。しかも初めの百年間は電気で冷やし続けないともっと大きな事故を起こす危険がある。その事故が起きれば福島県どころか東京を含む関東全域が居住不可能な汚染地域になる恐れが否定できない。
3・11後の今考えると、なぜこんな恐ろしいものを作ってしまったのか理解しがたい。原発は即刻全廃を決議すべきである。一部運転を続けながら40年後に廃炉すべきであると説く人がいるが、現実を無視した暴論である。どんなに金がかかろうとも全廃以外にわれわれが十年後に生きていることを期待できる道はない、と覚悟すべきである。今度事故が起きたらおそらく日本はお終いになる。つまり滅亡である。原発というおもちゃは滅亡を賭けた遊びだった。(峯崎淳)
原発のやっかいなところは、即刻全廃を決議したところで、即刻全廃など出来ないところにあると思っています。
正確に言うと原子炉、原子力発電所は全廃できますが、使用済み燃料はどうにもなりません。100年は原発の中(使用済み燃料プール)で冷却を続け、その後はガラス固化などの処理をして万年の単位で保管する必要があります。
空冷式の貯蔵施設を造れば、原発の中(使用済み燃料プール)で冷却をしなくても済むようになります。しかし、そのような施設は現在日本にほんの少ししかありません。
仮に今即刻原発を全廃すれば、ほぼ満杯の使用済み燃料プールがなくなると言うことです。そうすれば、使用済み燃料が行き場を失い冷却も出来無くなりますから、燃料棒が融け閉じ込められていた放射性物質が漏れ出てきます。また、使用済み燃料といっても核分裂性のウランやプルトニウムもたっぷり入っています。融けて形状管理が出来なくなれば再臨界の恐れもあります。
さらに、原発をすべて止め電力供給が不安定になれば、燃料プールを冷却する電力にも支障が出ます。
今日も運転停止中の東通原発で、停電による冷却ポンプの停止がニュースになっていました。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/dogai/362634.html
使用済み燃料の冷却をするためにも電気が必要で,その電気を安定供給するために原発に頼らざるを得ないのが現実です。
ドイツも脱原発を決めましたが、何十年もかかる見通しです。日本で脱原発をやるにも何十年も必要です。息の長い話だと思います。
代替え電力を造ることと平行して、使用済み燃料の貯蔵施設を造る必要があります。これは脱原発ですが、脱核ではありません。脱核は原理的に不可能です。
また、これから、使用済み燃料の再処理を委託したフランス、イギリスからプルトニウムも戻ってきます。
身近に使用済み燃料という放射性物質を置いて、リスクを分散して受け入れつつ管理を継続していくしか方法はないように思えます。
さらに、やっかいなことは中国とインドが原発推進に熱心なことです。エネルギー不足の両国に、原発保有国が先進国の論理で原発やめろと言っても簡単ではないと思います。でも、これらの国で事故が起これば他人事ではなくなります。特に中国の事故は風下の我が国にとっては深刻です。
やっかいな問題を抱えたと思います。
投稿: 杉山弘一 | 2012年4月 4日 (水) 22:40
黄砂に乗って中国からセシウム137が飛来しているというニュースです。
http://www.hokkoku.co.jp/subpage/HT20110706401.htm
投稿: 杉山弘一 | 2012年4月 4日 (水) 22:59
原発勉強すればするほどやっかいなしろものだ。進むのも地獄、止めるのも地獄。
人間がコントロール出来ない物事に取組むのは不遜である。
投稿: 一市民 | 2012年4月 6日 (金) 21:19
アルメニア(旧ソ連)の原発事情についての記事が目に止まりました。
世界でもっとも危険な原発、アルメニア原発 廣瀬陽子
http://synodos.livedoor.biz/archives/1759243.html
投稿: 杉山弘一 | 2012年4月 7日 (土) 14:43
ドイツの脱原発事情はこれが参考になります。
http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51635415.html
投稿: 杉山弘一 | 2012年4月 7日 (土) 16:50