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メンバーの裁判

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2012年3月27日 (火)

安心・安全宣言、どこまで安心か。

 毎日新聞群馬版(3月24日付け)に、食品の放射性物質の暫定基準値が4月1日から厳しくなる(100Bq/kg)ことを受けて、県が県内全域の野生鳥獣4種類・77検体を検査したところ、4割超の36検体から新基準値を超える放射性セシウムが検出されたことを23日発表、飲食店などに提供自粛を要請した、とある。
 記事によれば、県は16市町村のイノシシ25検体から1キロ当たり368~109ベクレル、8市町村のニホンジカ11検体から同308~106ベクレルを検出したそうだ。そして、その16市町村にも8市町村にも片品は含まれている。つまり、片品では当面、イノシシやニホンジカは食べない方がいい、ということだ。
 私の手元に、昨年10月16、17日に東小川方面で、17日に尾瀬方面で有害鳥獣の駆除が行われ、それぞれの地区で捕獲された6頭ずつのニホンジカの肉を、猟友会が自主的に専門機関に依頼して放射性物質の検査をした結果のデータがある。それによれば、全頭からヨウ素は検出されなかったものの、東小川方面の6検体から1キロ当たり44~270ベクレル、尾瀬方面の6検体から同93.5~214ベクレルのセシウムが検出されている。猟友会を管轄するのは農林建設課であり、有害鳥獣駆除要員として役場職員もいるから、このデータは役場も把握している。しかし、役場はこれを一切公表していない。
 片品村役場はあの大震災以降、住民の生活圏14個所の空間放射線量のデータだけを公開し、安心・安全宣言を繰り返してきた。スキーシーズンを前にした時点でも、スキー場の線量測定は各スキー場任せだった。北毛の線量が高いことがメディアに取り上げられ、国が費用を負担して除染をするからと言っても、片品は安心・安全だと言って申請さえしなかった。
 前出の昨年10月に行われた有害鳥獣駆除で捕獲された12頭のニホンジカの検査結果も、3月末までの暫定基準(500Bq/kg)以内だから良しとして公表を控えたのだろう。食品の放射性物質の暫定基準が3月いっぱいは1キロ当たり500ベクレル、4月1日以降は同100ベクレルといっても、それは安心・安全の基準ではなく、とりあえずここまでは我慢しましょう、というあくまで我慢基準なのだ。
 吾妻では有害鳥獣駆除で捕獲されたイノシシを専門の施設で食肉加工し、「アガシシ」というネーミングで商品化し、レトルトカレーに加工して販売したり、旅館や飲食店で調理して観光客に提供したりもしている。いつどこで捕獲されたものなのかのトレーサビリティーも把握し、あの原発事故以降に捕れたものはすべて廃棄処分しているという。
 しかし、片品村には野生鳥獣を食用として供することについて、吾妻のような公的な施策はまったくない。猟友会が捕獲したものが知り合いの民宿や旅館に渡り、野趣溢れる珍しい料理として都会から来た客に供される。昨年10月のデータが出て以降は、さすがに猟友会から民宿、旅館に渡ることはなくなったと思うが、以降のある宿のブログにニホンジカの肉をスモークしている記事を見た。ただし、そのニホンジカがいつ捕れたものかについては触れていない。
 風評は、いつ、何をきっかけに起きるか分からない。それが具体的被害につながった場合、打ち消すのは容易ではない。観光と農業が産業の大きな柱である片品村にとって、風評被害を避け、観光客や消費者の安心につなげるには、すべての情報を公開することである。せっかく200万円で食品の放射性物質の線量計を購入したのだから、仮に「素人の計測がどこまで信用できるか」との批判があったにせよ、村がすべての情報を公開し、真正面からきちんと取り組む"姿勢"を内外に示すことが、観光客、消費者の安心につながる方法だと思う。
 26日付けの朝日新聞の社説でも4月から適用される新しい基準に触れ、その最後に「厚労省は、こうした調査結果を公開して、消費者の理解を求める必要がある。ていねいな情報提供もふくめて総合的に取り組んでこそ安心につながる」とある。これが世の中の常識である。いつ、何をきっかけに起きるか分からない風評を怖れ、寝た子は起こすな、とばかりにひたすら情報を隠し、じっと嵐が過ぎるのを待つ片品村の頭脳と常識は世の中には通じない。安心にもつながらない。(木暮溢世)

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コメント

 利根沼田で汚染度が高いのはこういった市場に流通していないものですね。野生のキノコや山菜も要注意です。

 それにしても、安全宣言して片品に来てくれ、片品の農産物を買ってくれと言いながら、その何百分の1いや何千、何万分の1のリスクもないであろう震災瓦礫は受け入れられないというのは身勝手すぎます。

 ところで、チェルノブイリ事故後ノルウエーで、トナカイの放射性セシウム汚染が問題になりました。規制値が600Bq/kg →6000Bq/kg →3000Bq/kgと変遷しています。この過程は興味深いのですが、消費者と生産者の保護をどこでバランスさせるかと試行錯誤の結果です。料理法を工夫したり、トナカイ飼育者のモニタリングをしたりとさまざまな工夫が見られます。重要なのは、何らかの決定に消費者と生産者の代表が関与し、それを公開することです。合意し、理解し、納得した上で、基準値を決めています。そして、汚染度を理解した上で食べる自由も、食べない自由もあると言うことです。なお、このモニタリングは事故後20年以上継続されています。

(大切なのは基準値の数値ではなくこういった考え方だと思うのですが、数値を出すとそこだけに目が言ってしまいそうですね)

目は口ほどにものを言いますねw

<それにしても、安全宣言して片品に来てくれ、片品の農産物を買ってくれと言いながら、その何百分の1いや何千、何万分の1のリスクもないであろう震災瓦礫は受け入れられないというのは身勝手すぎます。>

 私もそう思いますが、心配は要らないかもしれません。5年前の小寺vs大沢では小寺べったりだったのが、去年は大沢後援会片品の会長だそうですし、賢二前村長の後継と言いながら、賢二さんが健在なら絶対あり得ない奴と手を組みましたから、知事が「頼むよ」と来れば、「喜んで」となるでしょう。「首都圏の水がめ? 何?それ」ってなもんです。
 最近は一部で「未曾有の震災おじさん」として親しまれていますから(笑)、大型バス23台連ねて瓦礫を取りに行っちゃうかもしれません。

片品村の農林建設課の隠蔽体質はひどいです。
村民や来訪者に伝えなくてはいけない情報はあるはずなのに

内部関係者の方、コメントをありがとうございました。

 村民や来訪者に伝えなくてはいけない情報とは、どんなものでしょう。ここに書くことはできませんか。内部告発→冷や飯といった類いの危惧があるのでしたら、私に直接伝えていただくわけにはいかないでしょうか。
 記事の中にある昨年10月のニホンジカのデータも、役場が公表しないのはまずいだろう、と猟友会のある人がここに書くように、と早い時期に私にくれたものです。ただ、風評は何がきっかけで起きるか分かりません。役場が公表してきちんと取り組んでいる姿勢を見せることがいい、と思うのですが、役場が公表しないからと言って、では、民間の一住民が公表することはどうなのか、その影響を想像しました。とりあえず3月末までの暫定基準値の500Bq/kg以下でしたが、家族連れのお客への提供は避けた方がいいと考え、旅館組合やペンション協会を通じて各宿泊施設には伝えてもらうようにお願いしました。そして、ここに書くにしても時期がある、と様子を見ていましたが、3月に県が公表したので、上の記事を書いたという次第です。
 隠蔽体質は農林建設課に限ったことではなく、役場全体のものだと思います。それによって不利益を被るのは住民です。おかしいことにはおかしいと、住民の一人ひとりが声を上げることが、少しずつでも、風通しのよい村になることにつながる一番の力になると思います。

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