いま、私たちが直面している「原発をどうすべきか」という問題に示唆を与えてくれる地域があります。三重県の南伊勢町と大紀町にまたがる芦浜です。1963年、中部電力の原発の候補地になって以来、地元は反対派と推進派にわかれて対立を深めました。2000年、住民の同意が得られないために、計画は撤回されました。この地域の人びとは、半世紀にわたって原発を自らの問題として考え続けてきたのです。そしていま、地元では、豊かさとは何かを問う新たな模索が続いています。貴重な証言を交えて、原発ができなかった町を見つめます。
黒崎めぐみ
(NHK名古屋放送局アナウンサー)
芦浜をのぞむ場所へ登る
★黒崎めぐみキャスターが地元の方の案内で 「熊野脇道」と呼ばれる山道を登り、中部電力の原子力発電所が計画されていた芦浜をのぞみます。
※芦浜は現在も中部電力の所有地であり、立ち入り禁止となっています。
番組で紹介した、芦浜を展望するポイントまでの山道は、南伊勢町観光商工課発行の「南伊勢 山歩きガイドブック」に記載されたコースです。
★南伊勢 山歩きガイドブック
町役場などで無料配布 下記HPよりダウンロードできます。
HP |
http://www.mik2.jp/nature.html (※NHKサイトを離れます) |
★南伊勢町観光協会
住所 |
〒516-0101 三重県度会郡南伊勢町五ヶ所浦3917(町民文化会館1階) |
電話番号 |
TEL 0599-66-1717(午前9時〜午後5時) FAX 0599-66-2477 |
HP |
http://www.mik2.jp/ (※NHKサイトを離れます) |
芦浜原子力発電所計画とは
三重県南部、熊野灘に面した「芦浜」と呼ばれる海岸に、中部電力が原子力発電所の建設を計画していました。計画がもちあがったのは1963年のことです。芦浜は、南伊勢町(旧南島町)と大紀町(旧紀勢町)の2つの町にまたがっており、南伊勢町の古和浦では当初、反対派が多く、大紀町の錦では推進派が多くを占めていました。熊野灘一帯の漁民が強く反対したため、1967年、当時の三重県知事が終止符を打つと宣言しました。しかし、70年代を通じて原発の立地を目指した地元への働きかけは続いていました。
1985年、芦浜原発計画は再浮上し、住民の対立はさらに深まっていきました。推進派は原発誘致による地域振興などを期待していました。反対派は、事故が起きた場合の放射能汚染などをおそれていました。2000年に当時の北川知事が、「白紙に戻すべき」という見解を表明。これを受けて中部電力は計画を取り下げました。
今回の番組では、東京電力・福島第一原発の事故以降、原発に対する人々の意識が大きく変わっている中、関係者の貴重な証言を交えて、二つの町の現状を取材しました。