除染をすると言うこと
利根沼田でも自ら除染をする方がいます。そこで、除染をするとはどんなことか考えてみます。
まず、今問題となっているのは放射性のセシウムです。除染すると言っても、化合物と違って分解して無毒にすることは出来ません。セシウムをはぎ取って別の場所に移すだけです。除染で出来ることはただそれだけです。そしてセシウムは土、特に粘土質の土と相性が良いので、多くの場合粘土に付着しています。したがって、排水溝などにこびりついた粘土を剥がしとる作業が除染と言うことです。
さて、実際に除染をしたという方の話を聞きました。放射能は恐いと言うことを広め、私が除染をしていないことを疑問に思っている方です。まったく心配しないのも良くないが、心配しすぎや恐怖を煽るのは良くないという私に反発している方です。
「除染をした。自分では出来ないのでお金を払って人にやってもらった。」
疑問:除染作業をすれば被曝をします。セシウムから出ているガンマ線に対して防護服は何の役にも立ちません。お金を払って他人に除染をしてもらったと言うことは、お金でその方に被曝をさせたと言うことにならないでしょうか。お金でその方の健康を買ったと言うことにならないでしょうか。規模こそ違いますが、それは、お金で地元を懐柔する東電のやり方と似ていないでしょうか。
疑問:除染で集めた土はどうしたのでしょうか。それは放射性廃棄物です。それを生活空間から離さないと除染の意味がありません。これが一番の問題です。
「井戸に捨てた」
そんなことをすれば地下水が汚染されます。セシウムは土と相性が良いので、地表数センチのところに大部分が留まっています。そのため、現在のところ地下水の汚染はとても少ないようです。でも、井戸に投げ込んだら間違いなく汚染されます。その井戸の水を誰かが飲んだら・・・そういう恐怖を煽っていたのではありませんか。
「除染したら線量は下がった。」
下がったということはどこかが上がったと言うことです。トータルで放射性セシウムが減ることはありません。減るのは時間が経過するのを待つしかありません。誰も近づかない場所に処理出来ればいいですが、そのような場所を確保するのはとても難しいことです。野山に捨てるわけにも行きません。そのような場所は自治体や地域で確保し(それがとても難しい)、看板でも立てておかないといけないでしょう。それをしないと、知らない誰かがより多くの被曝をすることになるでしょう。
低レベルの汚染を徹底的に除染すると言うことはそういうことです。危険だと考えれば考えるほど簡単には除染ができないのです。自分だけ良ければOKと考える人でないと出来ません。
除染で出る放射性廃棄物の処理方法を考えないまま除染をするということは、使用済み燃料の処理を考えないまま推進してしまった原発と似ています。
原発の問題とはそういうことです。そこに気づかないと脱原発は難しいと思います。(杉山弘一)
こんばんは、田村 恵です。
私の友人に、二本松市に住んでいる人がいます。先日、その友人から「今の私の問題は除染です」とメールが届きました。
私は、「除染といっても、屋根や壁を水で洗い流してから土を削って、どこに置くのさ?」と返事を返したのですが、答えはまだ返ってきていません。
多分、土のうに詰めて一箇所に置き、シートを被せたり、小屋に保管するのでしょうが、それって、意味がありませんよね。作業中も危なさそうです。
除染作業をしていても、分散するばかりだと思うのですが…間違った知識でしょうか?
除染って、なかなか難しいですね。変にやらないほうが無難でしょうか?
国は、自衛隊の「命」や「健康」を無視して作業させるようですが…。私は、国のそういうやり方、考え方が理解出来ません。
話は変わりますが、二本松市の学校給食に、汚染米を使ってはどうかと知事や市では言っているようです。保護者達がカンカンに怒っているらしいです。
本当に、どうなっちゃっているんだろう…?????
投稿: 田村 恵 | 2011年11月29日 (火) 23:13
田村恵さん
私の言い方、誤解を招きやすかったようです。
二本松の汚染レベルですと除染はそれなりの意味があると思っています。
長時間滞在する日常空間から高線量のところを除去してあげることによって被曝量は減ります。ただし、ご指摘のように水で洗い流したものは河川などに行きます。これはある程度仕方ありません。また、集めた父も土のうに詰めて一箇所に置き、シートを被せたり、小屋に保管せざるを得ません。ここに近づけば被曝量が増えます。しかし、これもある程度仕方ありません。除染作業中はそれなりの被曝をします。これもある程度仕方ありません。
大切なのは「ある程度仕方ない」と言うことです。少ない線量の被曝を気にすると除染まで出来なくなってしまうと言うことです。除染することによるリスクと除染しないことのリスクを天秤にかけて、よりリスクの少ない方を選ばざるを得ないということです。
また誤解を招きそうな言い方になってしまいますが「被曝による健康被害はたいしたことはない。」という前提がなければ除染など出来ないと言うことです。私が例に出した方が本当に利根沼田の線量レベルで健康被害が出ると思っているなら、避難するしかないのです。本当のところは、ご自身で言いふらしているほど危険だとは思っていないということです。その矛盾に気づいていない。
<変にやらないほうが無難でしょうか?>
そう思います。局地的に高いところで簡単に除去出来るところだけやればいいと思います。1μSv/h がいちおうの目安ですがそれを超えていたとしてもあまり気にする必要はないと思います。
その際、河川に流すことは許容される範囲だと思いますが、それによって河川ひいては海を汚しているという感覚を持つことが大切だと思います。それによってやり過ぎを防げます。井戸に捨てるは論外です。
また、屋根の除染は落下等のリスクと屋根から被曝する可能性が低いこと(屋根裏から被曝はしますが)を考えれば、慎重に考えるべきだと思います。
こういうバランス感覚が大切です。ICRPはそれを言っているのですがなかなか理解されません。
<二本松市の学校給食に、汚染米を使ってはどうかと知事や市では言っているようです。>
たとえ、汚染レベルが低く影響が無視出来るほど少ないとしてもわざわざ子供たちに食べさせる意味があるとは思えません。そんなことをすれば無用な混乱を招くだけです。
今、子供たちに食べさせることによって避けられるリスクが何なのかよく解りません。
ただし、もし何も食べ物が無くなって、栄養失調などのリスクが増大している状況であれば、話は違ってきます。そうなってしまえば、汚染米であっても食べさせるべきです。でも、今はそうではありません。
放射線防護の基本は、無用な被曝はしないです。裏を返せば、被曝を受け入れることによって他のリスクの増大を避けることができるのなら被曝を選ぶ、選ばざるを得ないと言うことです。そして、このリスクトレードオフは自分だけで完結させるのではなく、出来るだけ他人のことも含めて広く考えると言うことです。
それには正しい知識と冷静な判断が必要だと思います。デタラメな情報で被曝の恐怖を煽り、ゼロリスクを求めることではありません。
投稿: 杉山弘一 | 2011年11月30日 (水) 07:35
おはようございます!
杉山さん、一つ一つの疑問に答えていただき、ありがとうございます。
すべて納得しました。疑問に思っていたことが解決し、スッキリしました。
井戸に投げ込んだ人も、正しい知識を持っていたら、おかしな行動は取らなかったと思います。
今の日本人には、私のように知識不足の人が多く、儲け主義のジャーナリストや評論家、大学関係者の語ることを鵜呑みにする人が多いと思います。私は杉山さんに出会えて、すぐに疑問を相談できるからいいものの…。
人によっては、不確かな情報をキャッチし、すぐブログなどで「拡散お願いします」と流しているようです。そして、後から「ああだった」「こうだった」と付け加えて扇いでいるみたいです。風評被害を拡散していることに気がつかない人が多いようです。
何が正しく、何が間違っているのか、客観的に物事をとらえる努力をしていかなければいけないと、ますます思っているこの頃です。
投稿: 田村 恵 | 2011年11月30日 (水) 10:52
田村さんが心配していた福島県知事、二本松市長が放射能汚染米を学校給食に使うとの発言は、やはりデマでした。
事の真相は以下の通りです。
九月に発表された収穫前の予備調査で500ベクレル/kgが検出された田んぼのある二本松市は、本検査の重点調査区域に指定され、市内の288箇所で調査が行われた。http://www.asahi.com/special/10005/TKY201109230497.html
その結果、すべての調査地点で暫定基準値を超えなかった。また、同時期に行われた福島県内すべての調査地点からも暫定基準値オーバーはなかった。これらの結果を受けて県は安全宣言を出し、
http://www.asahi.com/national/update/1013/TKY201110120767.html
また二本松市長は、「改めて二本松市産米の安全を宣言する。安全でおいしい二本松のコメを全国の皆さんに食べてほしい」とあいさつしたようです。http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111018/dst11101816510010-n1.htm
NHKは、「福島県は、今後、知事や職員が首都圏などの消費地に出向いてピーアールを行ったり、飲食店や学校給食で県内産のコメの積極的な利用を呼びかけたりするなど、風評被害対策を強化することにしています。」と報道しているとされていますが、これは、当時の本調査の結果を踏まえての対応なので全く問題なしです。(このNHK報道だけは、孫引きで確証はありません。)
http://hibi-zakkan.sblo.jp/article/48515754.html
このHNK報道を利用して事実を捻じ曲げた主張をしていると思います。
さらに福島県の水田畑作課の一連のプレスリリースhttp://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/suidenhatasaku_231116.pdf
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/suiden_111118_3hou.pdf
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/suiden_111119_4hou.pdf
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/download/1/suiden_111122_kinkyuchousa.pdf
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/contents?CONTENTS_ID=26517
からも明らかなとおり暫定基準値を超えた地域は、福島市の旧小国村や伊達市の旧小国村および旧月舘町なので、二本松市とは、全く違います。さらに、二本松市の本調査の全データを見ても全く問題はありませんでした。
http://www.city.nihonmatsu.lg.jp/z-sinsai-osirase/230330-nouka-gougai-2.pdf
悪質な放射能被害の扇動者は、事実などどうでもかまわないのでしょう。恐ろしいです。
投稿: 岩上欣也 | 2011年11月30日 (水) 18:45
岩上さん
綿密な調査ありがとうございます。
事実は裏をとらないとダメですね。反省です。
投稿: 杉山弘一 | 2011年11月30日 (水) 23:01
岩上さん、ありがとうございます。
たくさんの情報までいただけて、うれしいです。
福島県に限らず、日本国中のお子さんを抱えたお母さんたちは、食に関してすごく敏感になっています。子供がいてもいなくても、老若男女、安全な食物を食べたいのは当たり前なことですよね。
私のようにデマに惑わされている人は沢山いることでしょう。誰かが「○○らしい」と発言したことが、いつのまにか「○○になっている」に変わってしまうのは、本当に怖いことだと思います。
発言する内容は、正しくわかりやすくハッキリと…特に、政府、東電、地方自治体の首長はしてほしいと思います。
私は、このように疑問を質問する場所があり、解決して下さる方がいます。感謝しています。
投稿: 田村 恵 | 2011年11月30日 (水) 23:06
【大拡散】福島県郡山市より「ずさんな除染に市民を巻き込まないで!」署名スタート
http://papamama-zenkokusawakai.blogspot.com/2011/11/blog-post_7830.html?spref=tw
考えさせられます。
たしかに杜撰な除染はまずいし、憎むべきは東電でしょう。でも、必要な除染は誰かがやらなければならない。これでは何も進まない。
投稿: 杉山弘一 | 2011年12月 2日 (金) 09:36