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2011年11月19日 (土)

稲藁の焼却は自粛すべきか

 利根沼田にもこんな心配をする方がいます。

「刈入れ後の田んぼ、0.3μ?/h の稲藁やもみ殻を燃やすのを自粛して欲しい。その煙の中を子供達が下校していく心配です。」

 結論は問題なしです。

 おそらく、セシウムで汚染された稲藁を食べた牛が汚染された事からの連想で、稲藁=セシウム汚染=危険と思われているのでしょう。子供たちのことを心配する気持ちはわからないではありませんが、やみくもに恐怖を煽ればかえって子供たちに悪影響を与えかねません。ここは冷静に考えて行動しましょう。

 まず、セシウム牛肉の汚染のメカニズムを思い出してみましょう。
高級牛に食べさせる稲藁が福島原発周辺で野ざらしにされていました。原発事故でセシウムなどの放射性物質を含んだ雲が上空に漂いました。そして雨で落ち、稲藁にセシウムが付着し、それを食べた牛が汚染。と言うことです。
 対して、利根沼田の稲藁はどうでしょうか。
 まず、3月4月以降セシウムはほとんど降っていません。現在、平常値より高い空間線量率が計測されるのは、3月に降ったセシウムが地面に留まり、そこから放射線が出ているからです。残念ですが、利根沼田の地面には高いところでは1平方メートルあたり10万ベクレル以上のセシウムが降り注ぎ、ほとんどすべてが地表面に留まっています。(なお、1立方メートルあたりですが、事故前から土の中には天然の放射性物質であるカリウム40が100万ベクレルくらいあります。)
 しかし、セシウムは関東ローム層のような粘土ととても仲が良いのです。地表面の数センチ以内でしっかり粘土と握手しています。このため、その下の土に根を伸ばし養分を吸収する農作物には、ほんの少ししかセシウムは移行しませんでした。だから、米を始めとする農作物からはセシウムが検出されなかったのです。
 したがって、今年採れた稲藁にもセシウムはほんの少ししか含まれていないはずです。3月にセシウムが降ったときに野ざらしにしていた稲藁とはまったく異なります。

 こういうとこんな反論が来そうです。

「ガイガーカウンターで測ると0.3μ/hが出る。だから汚染されている。」

 しかし、ガイガーカウンターで測るのはその空間の線量率です。汚染された土壌の上に、稲藁が置いてあります。土壌の中のセシウムから出た放射線(γ線)は稲藁など簡単に通り抜けてガイガーカウンターに届きます。稲藁から出た放射線を測っているのではなかったのです。なお、γ線が通り抜けることで稲藁が汚染されることはありません。

 こんな状況だからこそ、冷静に考えて対処する必要があります。

 もし、稲藁が置いてあるところだけ、空間線量率が上がるのであれば稲藁自体の汚染を考えるべきでしょう。そのうえで、遮蔽されたベクレルモニターに稲藁を入れて測るべきです。そのうえで対応を考えても決して遅くはありません。しかし、籾殻からはほとんど検出されていないのですから、稲藁から大量のセシウムが検出されることは考えにくいです。

 大切なのは量の概念です。土壌表面数センチのセシウムが1平方メートルあたり10万ベクレルです。それ以前に、天然のカリウム40が1立方メートルあたり100万ベクレルです。さらに、地面からは天然のラドンが漏れ出て常時内部被曝しています。宇宙線もあります。人体は6000ベクレルの放射性物質が含まれています。
 地球上の生物はみな放射線まみれの中で生きています(それでも地球は少ない)。そこに、原発事故でセシウムが降り、1平方メートルあたり10万ベクレル加算されました。我々はその中で放射線を意識することなく生きています。そして、生活パターンによって被曝量は大きく変わります。そのような状況の中で、数ベクレル、数十ベクレルのセシウムを気にすることにどれだけの意味があるのでしょうか。
 数ベクレル、数十ベクレルのセシウムを気にすることは、例えば右の靴の裏に砂粒が一つ付いていると右足が疲れて、その結果身体のバランスが崩れ・・・といったレベルの心配にしか思えません。
 私には、少なくとも農作業を自粛する程の影響があるとは考えられません。 それよりも、こういった根拠を欠く過剰な心配が、差別を生むことの弊害の方がはるかに大きいと思います。
 広島・長崎で起きたヒバクシャ差別が何から生まれたか。無知とエゴです。この教訓を忘れてはいけないと思います。(杉山弘一)

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