風評被害を防ぐために
昨日の上毛新聞によると、福島第1原発事故を受け、県内35市町村のうち12市町村が「放射性物質汚染対処特別措置法」に基づく国主導の除染を行う意向であるという。利根沼田では、沼田市、みなかみ町、川場村が同法の「汚染状況重点調査地域」の指定を受けて除染を行うが、片品村は同法の「汚染状況重点調査地域」の指定は受けず、必要があれば村独自に除染をする方針だそうだ。
片品村が指定を受けないのは、「指定を受けることで『村前提が汚染されている』と受け止められれば観光で成り立つ村経済に大打撃」となるからだそうだ。私は、冷静に考えれば、片品村の汚染状況では大がかりな除染をする必要はないと思う。また、観光客の減少を心配する気持ちも理解できる。しかし、この判断はまったく納得がいかない。風評被害の構造を理解していないし、希望と現実を混同した村社会独自の論理でしかないと思う。
風評被害とは理屈ではない。いくら問題がないと言っても起きるところには起きる。また、風評被害が起きて欲しくないといくら願ったところで、消すことは出来ない。それが風評被害の現実だ。まして、村内にも起きるはずのない被曝による遺伝的影響まで云々する不勉強な議員がいるくらいだ。風評被害をゼロにすることなど到底出来ない。
だとしたら、やるべきことは風評被害を最小化することだ。そのためには、他の自治体が「汚染状況重点調査地域」の指定を受ける今こそ一緒に指定を受けてしまうことだ。そして、線量率の高いところを見つけて、はやく除染をしてしまうことだ。その方が風評被害が少なくなる。
片品村だけ指定を受けなければ、風評被害をまき散らす人達からの攻撃の標的になるだろう。除染をしない自治体として、マスコミ報道もされるに違いない。その結果、最後になって指定を受けざるを得なくなることは容易に想像出来る。
指定を受ける方針のみなかみ町はこう言っている。
「指定を受ければ、短期的には風評被害は心配だが、長い目で見れば、必要なところを除染した上で安全をアピールした方が得策」
まったくその通りだと思う。
震災後いち早く被災者を引き受け全国にその名を広めた片品村が、こんなおかしな判断をするとは残念だ。
ついでに言えば、上毛新聞の記事のみだしは、風評被害と安全確保が板挟みとなっているがこれは誤解を招く。風評被害と安全確保とは相関関係にはない。風評被害と関係があるのは安全ではなく安心である。だから、安全をいくら確保しても風評被害は無くならない。大切なのは、安心感を与える安全確保のホーズなのだ。実質的な安全を犠牲にしても、安全確保のポーズをとる方が風評被害は無くなるだろう。残念ながら、それが現実だ。そこに突っ込んでこそ記事の価値が出てくると思うのは無い物ねだりか。(杉山弘一)
杉山さん
片品村を気にかけてくださってのご指摘、住民のひとりとして感謝いたします。ただ、村がこの記事を読んで、杉山さんのご意見の意図するところを理解できればいいんですが、どうでしょう。期待はしますが、これまでがこれまでですからねえ(笑)。
<風評被害の構造を理解していないし、希望と現実を混同した村社会独自の論理でしかないと思う。>
要するに「寝た子は起こすな」が片品村の考えなんでしょう。村はHPに線量の測定データhttp://www.vill.katashina.gunma.jp/soshiki/kanko/pdf/hosyasen.pdf
を載せ、10月27日付けで安心・安全宣言をしています。ただし、そのデータにある測定個所は住民の日常生活圏のものです。観光で成り立つ村経済への風評が及ぼす大打撃を心配するなら、むしろスキーシーズンを前にした現時点では7つあるスキー場の、特に人が集まるレストランやリフト、ゴンドラの乗降口、駐車場などのデータを計って公開することが重要なはずです。もしも線量の高い個所があれば、早々に除染をして、低くなったデータを公開する方がどれほどスキー客の安心につながるか、と思うんですが。
先日(10日)、私用で中之条・四万温泉へ行ってきました。四万の総合案内板と地区別案内板を作った立場の責任で、行くたびに4つの案内板の傷み、汚れをチェックして回るんですが、日向見地区で放射線量を計っている町役場職員と四万温泉協会事務局長に出会いました。聞いたところでは、中之条では町内300ケ所の線量を計測しているそうです。もちろん法に基づいて国主導の除染を行うそうです。それが観光客へのサービスにつながることを理解した上での冷静な判断だと思います。
そもそも風評は見えないものへの、見えないからこその恐怖心から生まれるものでしょう。片品村は「寝た子は起こさない」ままにして、いつ起きるかもしれない、見えない風評に怯え続けるのでしょうか。
<村内にも起きるはずのない被曝による遺伝的影響まで云々する不勉強な議員がいるくらいだ。>
「かっこよかった。いつも遊楽木舎で話しているようなことを今は村の議会という場で話す。なんだか泣けてきました」
http://numata-city.kazelog.jp/numata/cat4966202/
と言ってくれる無知な支援者への無知な政治的アピールでしょう。要するに、単なる不勉強の単なる“ええカッコしい”。
<指定を受ける方針のみなかみ町はこう言っている。
「指定を受ければ、短期的には風評被害は心配だが、長い目で見れば、必要なところを除染した上で安全をアピールした方が得策」>
まったく同感ですが、片品村にこの思考回路はありません。そもそも「長い目で見れば」の発想がない。村が欲しいのは、今日の米ですから。「長い目」は、現状の正しい把握があってこそのもの。しかし、片品村の現状を検討することを、村は後ろ向きとしか捉えません。どこの自治体にも問題はある、と言い訳して、問題を解決しよう、どころか、見ようともしない。♪明日という字は明るい日と書くのね、とあくまで幸せで能天気です。液状化でずぶずぶの足元に水平垂直の家が建つはずがないってことさえ想像できない。えっ? 問題は解決するはずがない? だからとっくに諦めた? そうして120年やってきた? まあ、そうかもしれない(笑)。
<震災後いち早く被災者を引き受け全国にその名を広めた片品村が、こんなおかしな判断をするとは残念だ。>
南相馬の人たち1000人受け入れについては、村のやり方を見れば知名度アップが目的だったわけですから、村としては大成功だったでしょう。ただし、受け入れを言い出した人、実際に受け入れた宿の人たち、途中から大人が加わって地に足がついたボランティアグループの人たちがいたからこそ成り立った、と私は見ています。この人たちの中で、俺が私が、と名乗った人を誰ひとり私は知りません。この人たちと村の違いを見れば、こんなおかしな判断は残念ですが、宜乎(むべなるかな)です。
投稿: 木暮溢世 | 2011年11月13日 (日) 06:31