TPPで二分した国論
民主党の議論はTPPに参加することを来週のAPECまでに決めるべきだという人々と今決めるべきではない、という人々に二分している。関税ゼロの自由貿易こそ日本の生きる道とする参加組と、参加すれば農業だけでなく国民皆保険制度も郵政民営化もけし飛び、すべてが米国基準になる心配があるとする慎重派が譲らない。
私は関税ゼロになっても農業がすべて駄目になるわけではないと考えるが、人々が心配している、中山間の小規模農家はいまのままでは壊滅的打撃を受ける心配はなしとしない。里山に守られた小規模農家の自給プラスアルファの生産・流通システムは今のままので生き延びることができると考えるのは甘い。その結果われわれが失うのは里山がつくりだす豊かな環境や小規模兼業農家が生産する手のかかったおいしい野菜や果物である。そういう兼業農家が廃業すれば環境は荒れる。農業以上のものをわれわれは失いかねない。非能率に見えるいまの農業は環境保全や高齢労働者の吸収による失業対策、老老看護による福祉補填など日本社会をもたせているいる風土を損なう恐れがおおきい。
今参加すると決めるなら緊急に行わなければならないのは、そのような役割を果たしている農村に、その役割を環境保全業として正当な評価を与え、地産地消の徹底とともに農家に誇りを与えることである。このような経済を金融資本主義の暴力から守るために、減価する貨幣を導入し小規模自給自足を可能にするなど、知恵に富んだ施策が必要なのだ。金融資本主義は里山経済と本質的に矛盾しているため、利殖に用いられる通貨では維持できないと思う。とにかく、いまこそ国民はあらゆる対策を考えだし、里山経済を守るべきである。(峯崎淳)
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