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2011年7月28日 (木)

原子炉設計現場の実態

 原子炉の設計というと設計図を書くというイメージを持たれていると思います。しかし、設計現場の実態はそういうイメージとはほど遠いのです。7年ちょっと原子炉の設計部門にいましたが、寸法の入った図面はほとんど見たことがありません。設置許可申請書の文言、設計指針の文言や工程表を見ることの方がはるかに多かったのです。
 なぜそうなるのか。それは、専門の細分化です。原子炉を造るためには、設計だけでも概念設計、基本設計、詳細設計、実施設計、制作設計と進んでいきます。私が携わったのは、概念設計、基本設計までです。基本的な設計方針を固め安全審査資料を造るのが基本設計です。ですから、建設に必要な細かなことは決めていないのです。
 それでも、「もんじゅ」や新型転換炉実証炉は、基本設計を10年以上もやっていましたし、客先に納品する基本設計書はキングファイル100冊といった量になり体育館に並べてチェックしていました。
 設計一つとっても、時系列によってこのように別れています。さらにそれぞれの段階で各専門に細分化しています。これは、大学病院をイメージしていただくと解りやすいと思います。診療科が別れてそれぞれに専門医がいるように細分化しているのです。
 基本設計も、大きく分けて、配管やポンプの系統を決める系統設計、危機の配置を決める配置設計、炉心の各物理的な設計をする炉心設計、各部屋の壁の厚みを決める遮蔽設計、各機器の構造を決める機器設計、配管設計、電気計装設計、事故時のシミュレーションをする安全設計などがあり、機器について言えば機器ごとに専門の設計者がいます。さらに、研究部門があり問題点を集中的に研究しています。そして、全体をまとめるプロジェクト部門があります。
 そして、各設計はそれぞれ関連しています。これも大学病院のイメージです。例えば、ポンプの容量を大きくすることになったとします。系統設計からスタートします。ポンプの大きさも変わりますから配置設計も変更します。配管も変わってきます。ポンプを動かすために必要な電気容量も増えますから、電気設備も設計変更が必要になります。配電盤の容量が大きくなればさまざまな設計変更が必要になります。もちろん、事故時の挙動も変わってきますからシミュレーションもやりなおしです。重さが変わるので耐震設計もやり直しです。ポンプが大きくなって部屋に入りきれなくなれば壁厚を削るしかありません。遮蔽設計の出番です。ポンプからの発熱量が増えますから空調設備も変更になるでしょう。また電気容量が変わります。複雑に絡み合った作業の積み重ねです。
 みなさん各分野の専門家ですから、プライドも高くその扱いは大変です。プロジェクトの言うことなど簡単には聞きません。「他部門のことなど知らない、今さらやり直しなどできるか。」ということになります。そんなわがままな専門家を、なだめすかし、時には脅し、ウソをついて、何とかまとめるのがプロジェクトエンジニアの仕事です。そんな仕事をしていた私にとって、設計とは人間関係の妥協の産物だと思えます。
 おまけに「もんじゅ」や新型転換炉実証炉の設計は、日立、三菱、東芝などの複数の企業グループでの共同作業です。原子炉1基の全体の設計を把握している人などだれもいません。(杉山弘一)

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Never would have thunk I would find this so indisepsnlabe.

Yes "indisepsnlabe" !!

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