サーベイメーターによる環境放射線の測定について
各地で放射線量を計測する動きが高まっています。行きすぎない限り、それを批判するものではありませんが、注意も必要です。放射線計測に係わった経験がある方(桐生市在住)からこんなご指摘も頂きました。とても大切なことだと思いますので紹介します。
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市販の簡易型サーベイメーターの測定値をそのまま発表してはいけません。サーベイメーターが直接測定できる物理量は、センサーに入射した電離放射線の一部に過ぎませんし、センサーの電極に電圧変化として現れるだけです。一般的にはCPM(カウントパーミニッツ)という単位時間(分)あたりの感知パルス数として表示されます。線源から放射される電離放射線量を測定するには、標準線源という既知の放射能量をもつ線源からの放射線量を測定してサーベイメーターの計数効率を知る事が必要です。CPMの単位で測定した値を計数効率で割る事で、線源からの放射線量が初めて測定できたことになります。Bq(ベクレル)で表す物理量です。
簡易型サーベイメーターのセンサーでは、入射した電離放射線の種類やエネルギーを知る事は出来ません。線源の核種を知るには半導体検出器を使った測定が必要です。
一般に原発事故の初期においてはヨウ素131からのγ線とみなしてxxSv/hと表示しています。時間が経過して、ヨウ素131が減少した現在ではセシウム137からのγ線とみなしてxxSv/hと表示しています。
測定値には線源からの放射線量以外に自然放射線も含まれるため、それを引いておくことも必要になります。
簡易型サーベイメーターの測定結果が群馬大学の測定結果の1.5~3倍を示していた事は、自然放射線量を含む事と後程書きますがノイズを多く含んでいるため誤差が多くなっているものと考えられます。
サーベイメーターのセンサーには、GM(ガイガーミュラー)管・比例計数管・電離箱・シンチレーションカウンター等がありますが、簡易型のセンサーはGM管がほとんどです。しかも小型のものです。一般に小型のセンサーほど感度が低く、感度を上げようと電極への印加電圧を上げると雑音(ノイズ)信号が増えてしまいます。目安にはなりますが、法的規制に用いたりすることは避けるべきです。
適正な計測でない測定値は、他の地点との比較や時間経過による環境放射線量の変化の参考にはなりますが、市民に公的な性格を持つデータとして公表してしまうと数値だけが一人歩きして、問題になる原因です。早急に正しい測定ができる体制をつくる事が重要です。また点としての測定でなく、市内全域の放射線量地図をつくるつもりで測定する事が必要です。
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県のホームページにも、サーベイメーターで測定した値の考え方 として、同じ趣旨の注意が欠いてあります。(県はバックグランドも入れた値をそのまま公表しています。)
桐生市も、こういった値であることを理解して慎重に取り扱っているようです(ここ参照)。ただ、発表の仕方は不十分だと思います。もっとも、こういった点をまったく理解しようとせず盲目的に騒いでいるだけの議員がいらっしゃるようなので、担当者もたいへんだと思います。(杉山弘一)
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