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2011年5月 3日 (火)

避難することのリスク

 今朝の朝日新聞に気になる記事がありました。
高崎で反原発デモ、500人行進 6月には前橋で というものです。反原発デモ自体は、まったく異論がないのですが、以下の部分に違和感を感じました。

参加した高崎市の小見久美子さん(52)は、先月15日に放射能の危険性を感じて沖縄に「避難」したという。小見さんは「3人いる孫のためにも、恐怖は味わいたくない」と話した。

 たしかに、先月15日に、群馬県の空間放射線量は高くなっています。県が公表している測定結果によれば、最大で0.562μSv/hになっています。通常は0.02μSv/h程度ですから、20倍以上になったと言うことです。この状態は約1日続いています。その後も、0.1μSv/h超えが1日続いています。その後、だんだんと下がっていますが、4月末でも、やや高い0.03μSv/hとなっています。
 ではいったい、群馬県民はどのくらいの被曝をしたのでしょうか。ざっと見積もってみます。
 先月15日に、屋外に8時間いたとします。簡単のために、空間線量率は0.5μSv/hとします。0.5μ×8時間=4μSvの被曝をしたということになります。その後10日間、0.1μSv/hの場所に1日8時間いたとすると、0.1×10×8=8μSvの被曝です。合わせて、12μSvつまり、0.012mSvとなります。
 被曝を気にする人が、3月中に屋外で8時間も過ごすことは考えられませんから、実際には、この半分の数μSv以下といったところでしょう。

 一方、沖縄に避難することもリスクがあります。空路で行ったとすると、一番大きいリスクは、墜落でしょうが、無視できないのは被曝です。飛行機に乗ることによって、被曝をするからです。では、それはどのくらいでしょうか。

 航路線量計算システム という便利なサイトがありますのでこれを使ってみます。
もっとも、これは国際線の計算しかできないので、成田~ソウル間759マイルで計算してみます。往復で7μSvと出てきます。羽田~沖縄は、984マイルですから、7×984÷759=約9μSv程度の被曝をしたということになります。

 つまり、この方は、数μSv以下の被曝を避けるために、9μSvの被曝を受け入れたということです。

 たしかに、3月15日の時点では、0.5μSv/hの空間線量率が1日で終わるか解りませんでした。その後もっと高い空間線量になることも十分あり得ました。水や食品からの内部被曝もあります。だから、一概に沖縄に避難したことに意味がないとは思いません。安心料の部分もあります。
 ただし、群馬にとどまって、外出を避けるなどの対策を取るだけで、1μSv以下にすることは十分可能でした。それに対して、飛行機に乗ることによる被曝は、乗った以上避けることが出来ません。現実に9μSv被曝しているのです。さらに、飛行機に乗るということは、事故のリスクも受け入れるということです。定量的な評価はしませんが、おそらくそれは、被曝リスクよりもはるかに高いでしょう。(★はるかに高いというのは間違いでした。詳細はコメント欄をご覧下さい。)

 結果論になりますが、「放射能の危険性を感じて沖縄に避難した」というのは、到底合理的な選択とは思えません。(杉山弘一)

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コメント

気になったので定量的な評価をしてみました。

1Svの被曝で、ガンの発生確率が0.05(5%)上昇するとされています。1μSv では、5.0×10-8の上昇です。沖縄往復は9μSvですから、4.5×10-7の発癌リスクということになります。

一方、運輸白書、交通安全白書によると飛行機の墜落リスクは、1.0×10-10/km程度です。(以下のサイトからの孫引きです。 http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/jspui/bitstream/2237/12838/1/p.47-51.pdf )

沖縄往復を、約3,200kmとすると、3.2×10-7となります。

墜落するリスクは被曝で癌になるリスクよりも少ないということでした。なお、墜落すればほとんど死亡しますが、癌の死亡率は少し低いですから、死亡リスクは同程度ということでしょう。

 また、自動車で移動する際の事故死亡率は、95×10-10/km程度です。これは人をはねた分が約半分含まれていますから、搭乗者の死亡率は約半分となります。前橋から羽田往復を約200Km とすれば、リスクは9.5×10-7となります。

 結局、沖縄に往復することによる死亡もしくは発癌リスクは、合計で8.4+3.2+9.5=21.1×10-7ということです。

群馬にとどまって、10μSv の被曝をすると、5.0×10-7、外出を控えるなどの対策をして1μSv にとどめれば、0.5×10-7のリスクですから、
避難することで、リスクを4~40倍もに増加させてしまったということです。

無知を承知で書き込みますが、今まで、この原発事故が起きるまで、飛行機搭乗で被曝することを知りませんでした。
数えるほどしか飛行機に乗ったことはありませんが、航空会社や旅行会社はこういうことを客に説明してきたのでしょうか。
パイロットやCAは当然それを知りながら業務に就いてきたのでしょうか。
私が関心を持たずにきただけで世間一般では常識だったのでしょうね。
ですが、杉山さんが計算されているような情報は風評被害などを考える上で大変重要なことと思います。

塩原田助さん
コメントありがとうございます。

<航空会社や旅行会社はこういうことを客に説明してきたのでしょうか。>

これはしていないと思います。

<パイロットやCAは当然それを知りながら業務に就いてきたのでしょうか。>

そうだと思います。
以下を見ると
乗務員組合の要請でガイドラインが設けられたようです。
http://www.nirs.go.jp/research/jiscard/information/05.shtml

航空機乗務員の宇宙線被ばく管理に関するガイドライン
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/housha/sonota/06051009.htm

<私が関心を持たずにきただけで世間一般では常識だったのでしょうね。>

いいえ、ほとんど知られていないと思います。

ついでに、関連情報です。

 宇宙飛行士の野口さんは昨年、国際宇宙ステーションに滞在しましたが、そこで受ける放射線は1日につき約1mSvだったようです。160日間ISSに居ましたから、累積で約160mSvの放射線を受けたということです。
 福島原発の作業員については、年間50mSvの基準を撤廃しようとしていますから、これよりも高いレベルです。
  
 私は、原発はやめるべきだと思いますが、そのために原発事故による放射線リスクだけをことさら過大に言いふらし、恐怖心を煽ることにもやめるべきだと思います。
 放射線のリスクはその程度を正しく理解して、合理的に行動しなくてはなりません。これを同じで、合理的にエネルギー問題を考えれば、脱原発という答えが出ると思います。

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