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2011年3月25日 (金)

消せぬ疑惑

 福島の原発事故はこれをつくるときに東電が考えていたレベルを超える地震と津波が来たために起きたものだと言われている。杉山氏のようにもんじゅの安全設計に携わった専門家も地震も津波も設計時の想定をはるかに超えるものだったことを認めている。

 誰がどのような根拠に基づき「想定」し、誰がそれを承認したのか? 承認者はどのような検討をしたのか? 想定は間違いだったため、今の事態が起きたのだが、責任は誰にあるのか? 東電はこの事故を無事にーつまり最悪の事態にならずに乗り切ったとしてもー膨大な補償で潰れると考えられている。政府は補償の肩代わりも考えているらしいが、責任を曖昧にし、カネでうやむやに処理することに私は反対である。

 私が心のなかで最初から感じていた疑惑は、これは天災に人災が加わって大事に至ったのではないか、というものである。東電も行政府の役人も、原発の安全問題を徹底的に追及する姿勢を持っていなかったのではないか、という疑いが消せない。

 太平洋沿地域には大きな地震が過去に何度か起きている。歴史記録にはっきり残っている大地震大津波としては、貞観十一年(869)に陸奥国を襲ったものがある。これは高等学校で日本史を学んだ人なら大抵知っているだろう。貞観(じょうがん)は藤原氏が台頭し地歩を固めていく時代である。
 この貞観の大地震で起きた津波は海岸から数キロまで押し寄せ、多賀城の城郭、倉庫、門櫓、城壁などが崩壊した。

 つまり仙台沖はマグニチュード8.3くらいの地震が起きる場所だった。

 そんな地震の巣に原発は立っているのだ。

 誰も気がつかなかったのだろうか? ありえない話だと思う。知ってて建設を強行したのだとすれば、最も責任が重いのはそいつである。そいつの提案をちゃんと検証せず認可した役人である。

 原発が稼動を始めてからだって強く警告した方がいた。海底考古学の研究者で地震津波の研究者河野幸夫氏である。河野氏は現在東北学院大学工学部の教授である。氏はカタストロフィーの研究者で、広い研究テーマのひとつが貞観の地震だった。海に潜って海底を調べ貞観の津波がどのぐらいの大きさだったか突き止め、計算式までつくられている。

 河野先生は研究の結果今回のような地震が来ることを予測し、機会あるごとに警鐘を鳴らして来た。地震の一週間前にも塩釜市で講演し、あの規模の大津波が仙台平野を襲うと警告されている。
 1999年にはNHK仙台のニュースでも先生の研究は報道されている。

 私は原発の建設管理に重大な油断があったという疑惑を打ち消すことができない。もし油断があったとすれば、原因は狎れと慢心であり、人間にはこんな危険なものを扱う資格はもともとないのではないか、と結論せざるをえない。失敗の代償は日本だけでなく、地球世界全体の危機を招きかねない。生物学はどんな栄えたせいぶつもいつかは絶滅することを示している。米国が仙台沖に真水を積んだ船を送り込み、海水注入という素人が考えても危なそうな措置をやめさせようとしているのは、燃料棒露出の重大性を知っているからではないかとさえ思うのである。(峯崎淳) 

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「米国が仙台沖に真水を積んだ船を送り込み、海水注入という素人が考えても危なそうな措置をやめさせようとしているのは、燃料棒露出の重大性を知っているからではないかとさえ思うのである。」(峯崎さん)

 海水注入が多くの問題を孕んでいることは、技術者ならすぐに思い浮かぶことです。アメリカだけでなく、東電も政府も皆十分承知でした。
 そして、日本の関係者も当然のこととして、燃料棒露出の重大性を知っています。だから、問題があっても真水の用意が出来るまでの間、緊急避難として海水を使わざるを得なかったのです。

 燃料棒を冷却できないというのは、それほど深刻な事態なのです。

 海水注入がもっと遅れていたら、炉心燃料はもっと融けていたでしょう。放射性物質の漏洩も今より深刻な事態になっていました。
 逆に、もっと早く海水注入が出来ていれば、炉心燃料は融けずに、今ほどの放射性物質の漏洩がなかった可能性が高いのです。

 詳細の事実関係が不明ですが、批判されるべきは、事故を起こしてもなお、原子炉の財産保護にこだわって、海水注入を渋った東電幹部でしょう。

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