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メンバーの裁判

« 愚民、暴君、民主主義(その3) | メイン | 片品は、伊達にどん詰まりじゃない? »

2011年3月23日 (水)

放射線リスクの過大評価はやめよう

 福島原発事故の影響で、群馬にも放射性物質が飛んできたようだ。群馬県産のホウレンソウとかき菜から、暫定基準値を超える放射能が検出され出荷停止になった。出荷停止を指示した国は、農家には補償をすると言っているが、現実には、これ以外の野菜も出荷できない状態に陥っているというから、とうてい補償では賄いきれないだろう。

 しかし、放射能が検出されたホウレンソウは本当に危険なのだろうか。

 県によると(こちら)、2,630Bq/kgのヨウ素が検出されたほうれん草を20g食べた時の人体への影響は、2,630 Bq/kg × 20/1000 × 2.2 × 10-5 = 0.00115 mSv    になる。 0.00115mSvの人体への影響は、胃のエックス線集団検診を1回受診した場合の人体への影響(約0.6mSv)の約500分の1だそうだ。(ここで、2.2 × 10-5  は内部被ばくに関する線量換算係数と呼ばれるもので、ホウレンソウに付着したヨウ素131を摂取してしまったときに、体内で人体が受ける放射線の実効量に換算する係数、核種ごとにICRPが定めている。)

 たしかに、胃のエックス線検診は、被曝することのリスクを上回る利益(胃がんを早期発見する)が同一人にもたらされるから、今回のように直接には何の利益もない被曝と同一に論じることは出来ない。メリットがないならわずかな被曝でも避けたいと思うのは人情である。

 しかし、それらを差し引いても、現状での被曝量は微々たるものである。気になるなら、ホウレンソウを良く洗って食べれば、大部分の放射性物質は流れるのだ。

 では、国はどうして、出荷停止を決めたのだろうか。

 それは、基準値以上の放射能が検出されていない他県の野菜を守るためである。問題はないが、少しでもあやしいものを切り捨てることにより、風評被害の広がりを防ぐことが目的なのだ。いわばトカゲのしっぽ切りだ。しかも、しっぽにはまだ危機が発生していないのである。それでも、しっぽを切り捨てるというパフォーマンスを見せることによって、本体だけは守ろうというものだ。しかし、この作戦はうまくいっていない。かえって風評被害を招いているようだ。その責任は国にもあるが、それを責めるだけでは、この難局は乗り切れない。

 我々は、被曝リスクを正しく理解して、冷静に対処する必要がある。被曝リスクを過大評価して、出荷停止もされていない野菜まで控えるなどと言うのは愚の骨頂だ。

 「念には念に入れて、安全サイドに考える。少しでもあやしいものは食べない。」

 この考え方は一見正しそうである。しかし、リスクは放射線による被曝だけではない。特に、未曾有の災害時の今、たくさんのリスクが発生している。他のリスクと比較して、もっともリスクの少ない方策を探っていく必要がある。

 たしかに、出荷停止になったホウレンソウを食べることによっても被曝リスクがある。ゼロではない。しかし、限りなくゼロに近い。今の放射線レベルならば、ほうれん草を食べて死ぬリスクよりも、風評被害で立ちゆかなくなった農家から自殺者が出るリスクの方が多いだろう。ましてや出荷停止がなされていない野菜まで食を控えていては、野菜不足で病気になるリスクの方が多いだろう。また、食べてしまった野菜が後から汚染されていることが判明したとして、心配することはない。放射線で甲状腺ガンになるリスクよりも、間違った知識に踊らされ心配しすぎてうつ病になって自殺するリスクの方が大きいだろう。

 現状の被曝リスクはその程度なのである。大災害の今こそ、何が本当に安全サイドかという点について慎重に考えて行動する必要がある。

 先日も、福島原発の周辺30KM以上離れた場所になる老人ホームからの避難の途中で、お二人が亡くなったとの痛ましい報道があった。周辺の住民がみな避難してしまい取り残されてしまったので仕方なく避難したというのだから、避難を決定した方を責めることが出来る状況ではないが、このように人によっては避難にも大きなリスクが伴うことを考慮すべきなのだ。

 また、30km以内の区間を通ることが出来ないため、被災者の物資の輸送に支障が生じているという。一時的にトラックで通行することの被曝リスクなど取るに足りない(運転手には十分な説明が必要だろうが)、それが原因でもっと大きなリスクを減らすことが出来ないとすれば、バカげた話である。

 繰り返すが、被曝リスクだけを避ければ、全て解決するわけではない。今、必要以上に放射線を恐れれば、農家が立ちゆかなくなる、そうすれば、経済全体にも影響が及ぶ。経済的に破綻し、医者にかかることも躊躇する方も増えるだろう。被災者の支援も遅れるだろう。全てが悪い方に回り、日本全体のリスクが増えてしまうだろう。

 このままでは、福島原発事故による最大の被害は風評被害になるだろう。そうならないために、群馬県産の野菜をたくさん食べようと思う。(元原子力プラント技術者、今は原子力発電推進に反対している杉山弘一)

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放射線リスクの過大評価はやめようを参照しているブログ:

コメント

内部被ばくに関する線量換算係数が解りにくいようなので追加説明です。

群馬県の公表内容は、「2,630Bq/kgのヨウ素が検出されたほうれん草を20g食べた時の人体への影響は、2,630Bq/kg × 20/1000 × 2.2×10-5 = 0.00115mSv になります。」とあります。

 ここで、20/1000は、2,630Bqが1キログラムあたりの放射能なので、これを20gに換算するためのものです。
これは簡単に理解いただけると思います。

 問題は,次の「2.2 × 10-5 」です。これは、内部被ばくに関する線量換算係数と呼ばれるものです。ヨウ素131を経口摂取したときに、体内で蓄積されることも考慮して、人体への照射量を50年にわたり積分し、シーベルトに換算するための係数なのです。
核種ごとに細かくICRPが勧告した数値です。
 http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html
 
 つまり、人体に蓄積されることを前提にしているのです。よって、ホウレンソウ草を食べて、一瞬に浴びる量が0.00115mSv ではないのです。
 20gのホウレンソウを摂取して、その一部が身体に蓄積して、甲状腺に放射線を浴びせ続ける、それを50年分積み上げた影響が、0.00115mSv なのです。
 なお、ヨウ素131の半減期は8日なので、1ヶ月ほどでほとんどなくなってしまいます。したがって、50年で0.00115mSv といっても、始めの1ヶ月ほどでその大部分を被曝することになるでしょう。
 そのうえで、県は「0.00115mSvの人体への影響は、胃のエックス線集団検診を1回受診した場合の人体への影響(約0.6mSv)の約500分の1です。」と言っているのです。

大人ならいいかもしれませんが、胎児や乳幼児などには、致命的な値になるのではないですか?
放射性ヨウ素の害は子ども達に被害がでるのですから。
汚染食品の摂取による汚染の上だけでなく、放射性のガスやエアロゾルの吸入、原発からの放出物や地面に堆積した放射能による被曝も加わるのですよ。

放射能汚染数値って解った様で解らない、生活への影響が良く理解できないのだ。
群馬の野菜が汚染された、これから他の産物も汚染されるのか?
東京の水道も汚染された、杉山氏の知識を吸収し風評に惑わされない行動を取りたい。

時間が経てば半減期の短い放射性元素は無くなりますし、半減期の長い放射性物質は大抵が重金属ですからそんな遠くには飛ばないと思うしあったとしても微量ほどでしかない。いちいちこんなことを気にしていたらCTスキャンもやらなければいい。だいたい日本の放射線に対する基準は他国と比べれば厳しいものがある。
専門家が安全ですといっても大多数の人間は何か裏があるんじゃないかと疑う。ただしマスコミの報道は信じる。
専門家の話は難しいと一蹴してはなから理解しようとしない
結局専門家の話はその専門に詳しい人しかわからない

こまちゃん さんへ

 説明不足でしたが、ICRPは、大人とは別に子供用の線量換算係数を定めています。また、経口摂取とは別に吸入摂取についても、線量換算係数を定めています。また、核種によっては化学形等によって複数の値を示しています。あなたの言われるような様々な形態での被曝を考慮しているのです。

「汚染食品の摂取による汚染の上だけでなく、放射性のガスやエアロゾルの吸入、原発からの放出物や地面に堆積した放射能による被曝も加わるのですよ。」

 そうですか。それらの影響が、どのくらいのオーダー(桁)なのか、想像してみて下さい。
 そもそも、ヨウ素131が身体に及ぼす影響で一番大きいのが甲状腺への内部被曝です。それ以外の影響は桁が低いのです。

 政府の発表が過小評価であれば、それに警鐘を鳴らすことは必要です。しかし、今はそういう状態ではありません。過小評価もダメですが過大評価もダメなのです。
 たしかに、これまでの政府や一部の原発推進派の言動に照らせば、信用出来ないのも無理はありません。しかし、今は、政府も原発推進派も嘘を言える余裕がありません(一部に言ってるバカがいますが)。

 冷却が出来ずに燃料棒が溶け、格納容器が破損する事態になれば、桁違いの放出が起てしまうのです。今はそのぎりぎりのせめぎ合いです。誰もどうなるか解らない状態です。そんな中、事故現場では、はるかに大きい放射線に晒されながら、何とかそれを防いでいるのです。守る利益が大きいから、被曝リスクを受けているのです。

 もちろん一般人があのような大きな被曝リスクを負うべきではありません。しかし、リスクは被曝だけではないのです。平常時ならともかく、事故時の今、反対のリスクを考慮しないまま、どうでもないような極めて小さなリスクだけをことさらに取り上げ、大騒ぎをする。その姿勢が風評被害を招くのです。

 あれこれと心配するお気持ちは解りますが、リスクの大きさを正当に評価し、冷静な対応をすること。
 これこそが、事故時の今、求められていることです。

>「念には念に入れて、安全サイドに考える。少しでもあやしいものは食べない。」

 この考え方は一見正しそうである。

専門的な知識をもたない人がリスクマネジメントしようとすれば正しい判断ですよ。


棄民さんへ

「専門的な知識をもたない人がリスクマネジメントしようとすれば正しい判断ですよ。」とのことですが、正しい知識がなければリスクマネジメントなどできません。
 念には念を入れるということは正しい知識を身につけると言うことです。それがリスクマネジメントです。

正しい知識を身につけるには時間的・金銭的コストがかかります。
時間的にも金銭的にも余裕がないひとにとっては合理的で正しいリスクマネジメントですよ。

棄民さんへ

姿勢の問題です。

専門的な知識と言っても、沼田市の図書館にある本で充分に正しい知識を身につけることが出来ます。その時間さえとれないというのは、優先順位の問題で、まさにリスクマネジメントが出来ていないということです。ちっとも合理的ではありません。

少なくとも、このブログが見れる環境にある方なら、正しい知識を身につける余裕は充分にあるはずです。
時間的にも金銭的にも余裕がないというのは、知的怠慢を正当化するための言い逃れでしかありません。

放射能を浴びたほうれん草を食べれるかどうか緊急に判断するときに、図書館で本を借りて何日もかけて読み込み(素人なので理解するのに時間がかかるでしょう)判断するのですか?
市民一人づつ借りてたら何日かかるのですか?
図書館には1冊づつしかないので時間に余裕があっても借りれない人が出てくるでしょう。そういう人はどうするのですか?
結局自分で買うしかないんじゃないんですか?

棄民さん

ご自分の意見をはっきり言いましょう。?で逃げるのは知的怠慢です。

そもそも、「放射能を浴びたほうれん草を食べれるかどうか緊急に判断する」場面などありません。暫定基準値以下でもホウレンソウは一律出荷停止になっていたのですから。

出荷停止になっていない野菜についても、それぞれの放射線量は計らない限りわかりません。あなたの言うような場面は、出荷されている野菜の放射線量を計測することが出来てはじめて遭遇するものです。

いまごろ、ホウレンソウのことを言ってくるなんて反論のための妄想でしかありません。

>出荷停止になっていない野菜についても、それぞれの放射線量は計らない限りわかりません

放射線量は計らない限りわからないのなら、結局あやしいものは食べないと判断したこと正しいじゃないですか。

私が間違えていました。
棄民さんの言われるとおり、知識を身に付けるのは面倒ですから、少しでもあやしいものは避けるべきですね。

 放射線量は計らない限りわからないし、プルトニウムが出すα線やストロンチウムが出すβ線などは計るのも難しいです。
 一方、福島原発から大量の放射性物質が出ていることは間違いないですから、この辺の水や食べ物はすべてあやしいと考えるべきでしょう。
 だから、何も飲まない、何も食べない。それこそが正しいのです。空気も間違いなく汚染されていますから、呼吸もしないのが正しいのです。
 これさえやれば安心です。健康に暮らせます。
 いや、外部被曝も避ける必要がありますね。日本はどこもあやしいので、海外に脱出しましょうか。それとも宇宙にいきますか。

http://junebloke.blog.fc2.com/blog-entry-38.html

クリストファーバズビー博士によればごく少量でも子供は危険みたいですね。老人は食っても多分大丈夫だろうけど。いずれにせよ日本は子供を育てるにはソマリアと並んで世界最悪の環境であることに間違いはないです。かといって宇宙に逃げる訳にはいかないし(仮に宇宙に逃げたら大量の放射線をあびますよん)。一番安全なのはやはり南半球でしょう。

バズビー博士とは、放射線リスクの過大評価の権化、教祖様です。
無茶苦茶な統計処理で都合の良い結果を出しているだけで、およそ科学ではありません。こういう批判が説得力あります。
http://d.hatena.ne.jp/buvery/20110520

また、バズビー博士が属する欧州放射線リスク委員会とは権威のある団体かのようですが、単なる任意団体でしかありません。
http://d.hatena.ne.jp/buvery/20110719

これまで見逃されてきた放射線被曝のリスクを科学的に明らかにして、警鐘を鳴らすという試みは推奨すべきものですが、バズビー博士のやっていることはもやは宗教の領域です。東京都民は全員避難すべきなどとおよそ現実的でない主著を繰り返すだけです。
こういうデタラメな連中が脱原発をカルトにしてしまっています。京大の今中助教でさえも、バズビーにはとてもついていけないと言ってますよ。
また、バズビー博士を盲信している方たちの特徴は、EM菌とか酵素玄米と言ったニセ科学を盲信していることです。どちらも同じようなものですから。

一方的に放射能をまきちらして一般人に望まぬ被ばくをさせている東電や政府も脱原発派以上にカルトだと思いますけどね

理事?さん

「東電や政府も脱原発派以上にカルト」

そこは同感。
「炉心溶融は起こらない。」という安全審査の論理は、カルトそのものです。また、「核燃料サイクル」は最大のカルトです。

 私は事故以降、東電に電気料金の支払いをしていません。被曝を必要以上に怖がりながら、電気料金を支払っている人の気が知れません。片品村がどうして電気料金を支払うのかも理解出来ません。

 また、東電だけでなく原発利権に群がった原子炉メーカー、ゼネコン、地方の政治家も同罪です。原発に反対のポーズをとることで利権に預かっていた連中も同罪。
 また、やみくもに原発(一番の問題は核燃料サイクル)を推進した政府に責任があることは間違いありませんが、そんな政治家を選んだのも国民です。ほとんどの国民が何らかの形で原発利権に係わっていると言っても過言ではないでしょう。
 だから問題は単純ではありません。東電は非難されて当然ですが、それだけでは問題は解決しません。

1 先日、東電に損害賠償請求のための書類を送付するように申し入れたら、もう少しだけ待ってくれと言われました。その時の私の回答。

 「待ちますよ。もっと困っている方もいらっしゃるでしょうから、そちらを優先してください。私はゆっくりで良いですよ。それまで、電気料金は払わないだけです。」

2 今度また、東電から電気料金の督促があった時にはこういうつもりです。

 「督促する前に、うちの庭の除染をしてくれ。東電がうちの庭にまき散らした放射性物質は、空間線量率に換算して、法定限度の年間1mSvを超えるでしょう。」

バズビー博士,ついに本性が出てきましたね。
http://www.busbylab.com/
不安を煽って、高額で放射能検査をし、高額でカルシウムのサプリを売る。それだけが目的、そのためには子供も利用する。

これも、面白い。
http://www.cbfcf.org/

こんな批判も、
http://transact.seesaa.net/article/227420152.html

6800円のサプリ。ぼろもうけですね。日本人はカモにされてます。
http://togetter.com/li/189644

子どもを放射能から守る全国ネットワークもバズビー博士のサプリ販売には困っているようですね。
http://kodomozenkokunet.sblo.jp/article/48039983.html

今さら関係ないと言っても、バズビー博士自身が、ビデオの中でサプリを販売すると言ってますからね。
http://transact.seesaa.net/article/227052954.html

もう、詐欺師と言っても良いでしょう。

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