利根沼田選挙必勝法
①相手のスキャンダルをばら撒け。
特に効果的なのは、下ねたとカネにまつわるスキャンダルである。候補者本人のものが最も望ましいが、近親者や親戚などでも効き目はある。探してもなにも見つからない場合は、デッチあげる。つまり嘘だ。まことしやかな嘘を運動員を通じてしつこく流すのである。嘘はでかいほど信じられやすいから、「・・・のおっかさんは、札幌のススキノのホステスだった」などという話が有効である。もちろん、こんな話は選挙後には真っ赤な嘘だったとばれるが、選挙など勝ちさえすれば後のことはどうにでもなる。ひっかかった馬鹿が悪いのだ。
②こちらの下品さを武器にしろ。
相手が良心的で汚いことができないタイプの場合は、「あんな弱気なボンボンでは地元のために役にたたない」と暗にほのめかす。これは、対立候補が紳士的で生真面目なタイプの場合に効く。高学歴だったり、名門校出の秀才だったりした場合には、田中角栄的なバイタリティーが不足していること、あれでは地元にカネや事業を持って来れないことを強調するのである。相手が育ちがいい洗練された都会人の場合、特に有効である。
③所詮、選挙はカネである。
選挙に勝つにはカネが要る。田舎にはまだ「ただで投票するなど馬鹿らしい。一票入れてやるから、それ相応のことはしろ」という有権者がいる。だから、警察にばれないように、温泉行きの無料バスやただで酒が飲めるバーなどを設けておくことも大切な心がけである。カネを惜しんでいると見られては勝てない。腹心を使って巧妙にやるのだ。
④相手を泥まみれにしろ。
人望、見識などで相手が自分よりも上の場合、スメア・キャンペーンを早くから展開する。
スメアというのは、泥や煤などを塗りたくることだ。アメリカの大統領予備選挙などにも多用されるこの手法は愚民あいてには特に効果がある。自分の長所を並べる一方、嘘もくそも一緒にまるめて相手に投げつけるのだ。これはどぶ板型の一軒一軒有権者を回って行う運動の場合とくに大切だ。「あいつは過激派と通じていて、警察もひそかに目をつけている」などと半ば脅しをこめて言うのである。
利根沼田の選挙は、沼田警察の捜査二課の話では、終わると一抱えほどのはがきが来るという。すべて選挙違反の垂れ込み投書だ。しかもそこに書いてあることは、ほとんどすべて事実だそうだ。しかし、警察は手が出せない。なぜなら、はがきには差出人の住所氏名が書いてないからだ。(峯崎淳)
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