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メンバーの裁判

« 愚民、暴君、民主主義(その2) | メイン | 沼田の将来像ーーある保守主義者の夢 »

2011年3月 9日 (水)

二元代表制を考える。

傍聴席から見た片品村議会の4年を振り返って

 3月4日(金)午前10時、片品村で3月定例議会が始まった。前の晩が徹夜になった私は、睡魔と相談しながら、一応、一般質問を傍聴に行った。質問者はひとり、高橋正治が村の観光政策を質問し、村づくり観光課長が群馬ディスティネーションキャンペーンをふまえた答弁をして終わった。周辺の自治体が羨むほどの豊富かつ貴重な観光資源に恵まれながら、それを活かす手立てを知らない、アイデアもないのだから、質問も答弁も通り一遍なのは当たり前だろう。仕方がない、では済まないのだが。

 4年の任期最後の議会で、ほとんどの議員の気持ちが次の村議選に向かっているのだろう、議場にも緊張感は感じられない。そういう私も前夜の徹夜で意識が多少おぼつかない上に、マイクがあるというのに、ぼそぼそと聞き取りずらいやりとりに、半分朦朧とした状態で聞いていた。
 一般質問に続いて議案第1号、片品村立学校のあり方検討委員会設置条例の制定についての質疑で、1期で退くことを美学とする(らしい)大竹文夫だけがいつもの活気を見せた。行政の委員会に議員を参加させることの是非だが、村の施策の執行権を持つ行政に、片や議決権を持つのが議会なのだから、理屈から言っても答は明らかだろう。要するに、執行側が追認するだけが能の議員を抱き込んで、うまく進めたいだけのことだろう。と言っても、申し訳ないが前述の通り、私の脳は機能が半分停止していたので、この記述に間違いがあれば、議員諸兄にはぜひ指摘、訂正のコメントを頂きたい。

 3月7日(月)3時5分配信の読売新聞から。同新聞社が、政令市初となる名古屋市議会の解散請求(リコール)成立から、4日告示された出直し市議選(13日投開票)を前に、市内の有権者を対象に4日から6日に実施した世論調査(電話方式、1206世帯のうち763人から回答、回答率63%)によれば、河村たかし市長が代表を務める諸派の地域政党「減税日本」の候補者に投票するとした人が28%に上り、自民党の17%、民主党の14%を大きく上回った、という。減税日本の過半数(定数75)については、全体の44%が「獲得する方がよい」と答え、「そうは思わない」という否定的意見も39%に上ったそうだ。
 共産を除く主要政党が一致して担ぎ4期続いた自民の前職を含め、30年にわたるオール与党体制が続いていた名古屋市議会に、2年前、河村市長が誕生し、市民不在の「なれ合い」体質に風穴を開け、市長と議会の間に緊張感が生まれたことは確かなようだが、いま、自らの政策に賛同する候補を擁立し、議会の過半数を制し公約を実現しようとするその手法は、自らが攻撃した「なれ合い」を逆に生む可能性もある。減税日本の41人の公認候補の中にも、減税日本が過半数を「獲得すればよい」と答えた44%の中にも、「減税」という耳ざわりのよいフレーズの単純な影響も見られる。実際、「地方自治の二元代表制を危うくするもの」と危惧する小野耕二名古屋大教授(政治学)の声もある。
 では二元代表制とは何か。地方自治体は首長も議会もそれぞれが住民の直接選挙で選ばれる「ふたつの民意」で運営される。国会議員が国会で首相を選出し内閣を作る議院内閣制とは、この点が異なる。政府と与党が一体となる国会とは異なり、地方議会は首長の執行機関とは独立、対等の立場にあり、執行権を持つ首長と議決権を持つ議会が互いに牽制して均衡を保つことが本来の目的である。
 議員は各種団体や地域が送り出す代表で、首長は自治体全体の運営を託され選ばれる。選ぶ基準が違うのだから、両者がぶつかり合うことは避けられない関係にあるが、チェック機能を果たさず追認機関になっている議会も多く、「二元なれ合い制」が多くの自治体に定着しているのも現実で、「八百長」、「学芸会」と揶揄される所以でもある。
 議会は議決権を持ちながら、執行責任を負わずにきたが、議案チェックだけが議員の仕事というなら、市民オンブズマンと変わらないとも言え、今回の名古屋市議会のリコール成立は、首長と議会の抱える矛盾への有権者の不満が噴出した一例であり、その背景には、2000年4月施行の地方分権一括法で地方分権の流れが加速し、国と地方が上下、主従から対等、協力の関係になり、国に責任を押し付けるわけにはいかなくなった地方の側に、地方自治法の旧態依然とした仕組みが残ったことも、大阪、名古屋を初め、全国に広がりつつある「地方の乱」がある、と見る。
 居眠り議会や、ざしきわらしさんが報告しているように、議員が携帯をさわっていたり、パソコンを開いて何かやっている沼田市のような議会がある一方、制度の不備を補ってきた議会もある。
 3月5日付け、東京新聞のコラムによれば、北海道夕張市に隣接する栗山町では、一問一答の議会討論を導入、政務調査費の透明化に取り組み、05年、議員が直接住民と意見交換する「議会報告会」を町内12会場で実施。一連の改革を制度化し、06年に全国で初めて議会基本条例を定めた。条例制定に尽くした元議会事務局長は「議場の狭い空間だけで物事を決めていてはダメ。個人や会派単位ではなく、議会として住民に説明責任を果たす必要があった」と振り返る。議会は、町の総合計画の原案に対案を突き付けて修正させたり、住民の意志を把握して審議を行っているそうだ。
 市民団体や学者でつくる「自治体議会改革フォーラム」(東京)によれば、議会基本条例の制定は1月末で163。4月の統一地方選までには200を超す勢いだという。
 実は名古屋市議会も昨年3月に条例をつくっている。結局はリコール成立に至ったが、河村市長の登場以降、市議会なりに改革は進めていた。前三重県知事の北川正恭早大大学院教授は「市議会自ら気が付いて条例を制定したことは大きい。議会が変わっていけば、今度は市長側が変わらざるを得ない」と語る。
 議会改革について、「公選された議員の中から執行権を持つ首長や部局長を選ぶ議院内閣制に似た一元代表制を、住民が選択できる制度に変えるべきだ。地域の問題解決に住民投票の制度を積極的に取り入れ、議会側も予算に対案を出し、条例づくりなど政策機能を発揮した方がいい」(元埼玉県志木市長、NPO法人地方自立政策研究所穂坂邦夫理事長)という提言もある。
 栗山町議会に注目してきた中村祐司宇都宮大教授(地方自治)は「名古屋や大阪ばかりがクローズアップされているが、全国各地で議会改革のうねりが起こっている。地方議会に大切なのは、首長と議会が切磋琢磨しながら改革をやりきることではないか」と、安易な議会批判にも釘を刺す。

 片品村議会では、一昨年の6月定例議会から、一般質問に一問一答式を採用した。これは一歩前進であるが、ひとり40分の制限時間を使いきったのは元村議の萩原一志氏が、尾瀬文学賞実施に際して行われた不適切な金額の寄付依頼について、飯塚欣彦前教育長を追求したときのただ一度である。一般質問といえど、要するに討論なのだから、執行機関にも反問権を認め、限られた時間を有効に使って活発に議論することが、議会の活性化にもつながる。実際、認められていない反問権を千明金造村長が行使したこともあったし、一問一答の意味さえ理解していないのでは、と疑わせる「通告にないので、答を控える」という村長による答弁も一度ならずあった。
 「地方議会に大切なのは、首長と議会が切磋琢磨しながら改革をやりきることではないか」。まさに、その通りだと思う。安易な議会批判にならないよう、私も肝に銘じよう。(木暮溢世)

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