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日韓、通貨融通枠5倍に拡充 首脳会談で合意

2011年10月19日14時3分

写真拡大共同記者会見を終え、笑顔で握手する韓国の李明博大統領(右)と野田佳彦首相=19日午後0時11分、ソウル・青瓦台、仙波理撮影

 野田佳彦首相は19日午前、韓国・ソウルの青瓦台(大統領府)で李明博(イ・ミョンバク)大統領と約1時間20分間、会談した。両首脳は通貨危機の際に外貨を融通しあう日韓通貨スワップの枠を現行の130億ドル(約1兆円)から5倍超の700億ドル(約5.4兆円)に拡充することで合意した。2004年から中断している日韓の経済連携協定(EPA)は交渉の早期再開に向けて実務者協議の加速を確認した。

 日韓首脳会談は9月下旬の国連総会の際、米ニューヨークで行って以来2回目。国際会議を除く首相の外国訪問は韓国が初めて。

 通貨スワップ枠の拡充合意は、欧州の政府債務(借金)問題の影響で韓国通貨ウォンの為替相場が下がっていることに対応した。日本銀行と韓国銀行の間にある現行30億ドルの円・ウォンの外貨融通枠を300億ドルまで引き上げる。財務省と韓国銀行間の現行100億ドルの枠も400億ドルまで増やす。双方が保有するドルをウォンや円に交換できる仕組みで、いずれも12年10月末までを期間とする。

 また、首相は未来志向の関係構築を重視し、植民地時代に朝鮮半島から持ち込まれた「朝鮮王朝儀軌(ぎき)」など図書1205冊のうち儀軌を含む5冊を直接渡した。12月10日の期限を見すえ、残りの引き渡しを念頭に大統領の年内訪日を招請した。大統領は「互いが頻繁に行き来すれば、どのような課題も乗り越えられる」と語り、訪日に前向きな姿勢を示した。

 両首脳は今後の国際的課題を検討する「日韓新時代共同研究プロジェクト」の第2期の開始でも合意。共同研究プロジェクトは08年4月、福田康夫首相(当時)と大統領の会談で合意し、昨年10月に報告書をまとめた。両政府は今後、第2期のメンバー人選や具体的な研究テーマの絞り込みを進める方針。

 会談で首相は、北朝鮮の拉致問題解決に向けた協力を改めて要請し、両首脳は北朝鮮の核問題で日米韓3国の連携をもとに、北朝鮮側に具体的な行動を要求することを確認した。

 一方、懸案の領土や歴史認識について、大統領は会談で「歴史を忘れず未来に向かっていくことが両国関係の根幹であり、日本の積極的な努力が必要だ」と指摘。首相は「時折困難な問題も生じるが、大局的見地で両国関係を前進させる気持ちを首脳同士が持っていれば乗り越えていける」と応じた。首相は会談後の記者会見で「従軍慰安婦の問題は、今回の会談では議論はなかった」と述べた。(蔭西晴子、牧野愛博)

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■日韓首脳会談の骨子

・日韓通貨スワップの枠を700億ドルに拡大

・経済連携協定(EPA)交渉の早期再開へ実務者協議の本格化で一致

・首相が「朝鮮王朝儀軌」の一部を手渡し、大統領の早期訪日を要請

・国際的課題を話し合う「共同研究プロジェクト」の第2期開始で合意

・北朝鮮の核廃棄に向けた連携を確認。大統領は拉致問題で支持と協力を表明

     ◇

 〈朝鮮王朝儀軌〉 15〜19世紀に朝鮮王朝の祭礼や行事の作法などを文書と絵図で記した公式記録。韓国併合後の1922年に朝鮮総督府が当時の宮内省に移したとされる。計3万3900冊のうち宮内庁が167冊を保管。これに詩文集といった文学関係や、政治、歴史関係を加えた計1205冊が引き渡し対象となる。今回は、大韓帝国2代皇帝純宗が王世子(皇太子)時代の1882年に純明皇后と結婚した時の記録である「王世子嘉礼都監儀軌(おうせいしかれいとかんぎき)」(2冊)や、「大礼儀軌」(1冊)、「正廟御製(せいびょうぎょせい)」(2冊)を引き渡した。

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