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2009年11月16日 (月)

コンニャク問答と沼田その2

 今コンニャク農家は忙しい。失業者が巷に溢れ、求人倍率が0.5を切ったところもあるというのに、今の時期のコンニャク農家の問題は人手不足である。コンニャクの売り先がないのではない、畑に出る人手がない。

 こうした問題をどうすれば解決できるのか、どんな解決の仕方が最善かを考えるのが政治の役割である。お隣の極端な格差社会に目を付け、研修生という名目で労働者を入れ、人権問題が起らぬ程度のぎりぎりの待遇でこき使い、用が済んだらさっさと追い返すという解決策を編み出したのも政治だった。中国貧民層には昔から出稼ぎを厭わぬ習慣がある。彼らは勤勉であり劣悪な条件でも黙々と働く。ここに目をつけた政治家は頭がいい。
 しかし、本当にそうなのか? 中国はつい最近まで餓死のある国だった。毛沢東の共産党は「鉄の飯碗」というスローガンで貧民に餓死をなくすことを約束した。中国共産党の一党支配が揺らぐ気配を見せない背後にはそういう歴史的背景があるからだ。だが、権力に永遠はない。中国共産党の鉄の規律も箍(たが)が弛みだした。格差社会になり、貧民層と富裕層の差がますます拡大し、貧困の中に置き去りにされた地方農民層に反乱の気配すらあるらしい。中国の歴史を知る人なら、盛大を誇った歴代の王朝も、地方から起きた反乱によって崩壊に至ったこの国の宿命を思わずにはいられない。共産党の一党独裁も王朝と同じ運命を辿るのか、と。それを誰よりも怖れているのが、共産党の中枢である。最近の施策には彼らの危機感が感じられるからだ。

 われわれが認識しておかなければならないのは、お隣の国のこうした事情である。今日のグローバリズムの世界においては、隣国がどうなるかで、こちらは好むと好まざるとに関らず影響を蒙る。北朝鮮のような犯罪国家にも油断できないが、そんな犯罪者より恐ろしいのはグローバリズムの枠内で共存共栄する相手である。その格差に乗じてひどいことをすれば、必ず反作用を覚悟しなければならない。

 WTOの枠組みに参加した中国は、国内法まで作り変え、国際ビジネス社会に適応しようとしている。地方との格差は相当大きいらしいが、法によって物事を決着する法定社会に変ってきた。伝統的人治主義から近代的法治主義に変ろうとしている。

 こうした事情から論理的に考えられるのは、コンニャクの輸入に日本が課している990%という関税が長くもつはずがないということだ。格差社会で貧困に喘ぐ中国農民が、製品価格の十倍という高関税に黙っているはずがない。沼田でコンニャクを作っている人だって、中国がもし日本の輸出品に十倍の税金をかけたと聞いたら憤慨するだろう。しかし、中国農民に言わせれば、なぜ自分たちが日本の市場に出すと商品の十倍の税金をはらわねばならないのか、納得できない、と言うだろう。

 実はコンニャクの人手不足と売り先に困らないという安心感は、同じことの両面なのだ。もし民主党がマニフェスト通り、ドーハラウンドを成功させるため、途方もなく高い関税を引き下げることに同意すれば、コンニャク市場には中国産の安いコンニャクがどっと入ってくる。それでも現在のコンニャク価格が維持できると考えている人がいるなら、それは無知の奢りでしかない。昨年、コンニャクをアルコールに漬けて輸入することを考えた業者が現れた。アルコールに漬けたコンニャクの関税は二割ちょっとだから、輸入してアルコールを抜けば十分使える。その所為かどうか知らないが、昨年コンニャクの価格はキロ千円下がった。
 沼田のコンニャク農家の人々が今何を考えなければならないか、お分かりだろう。なにも考えることが思いつかないのなら、君たちは自民党の保護の下に本物の馬鹿になってしまったのだ。せめて君たちの子供だけでも生き延びることができるように、教育に力を入れるよう星野市長にカツを入れたらどうだ。もう時間はあまりない。(峯崎淳)

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コメント

ご指摘の通りコンニャクだけではない。
13億の民を持つ一党独裁国家、情報が自由に飛び交う現代、統制政治で国民の信は得られるか?
政治・経済・環境・軍事どれをとっても13億の人口を持つ中国の動向に私の不安がよぎる。
小さな地方都市沼田市と言えどもアンテナを張り地域主権確立に努力しないと格差から取り残された沼田にる。それを回避するには市民の意識が重要だ。

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