「まちづくり事業」の事後評価?
沼田市中心市街地地区で行われている「まちづくり事業」の事後評価原案に対する意見募集がはじまった。14日までの意見募集の概要はここに記載されている。これによって、形式的には、一般市民が市の事業評価に参加できるということであるので、是非とも、多くの市民から意見が出されることを望むところだが、実態はそうならないだろう。
なぜなら、第1に、公表された事後評価原案を見ても、誰が何をどのように評価しているのかさっぱり解らないからだ。これを提示しても、意見を提出することはほぼ不可能だ。
第2に、「ご意見等に対しての個別の回答はいたしませんのでご了承ください。」というからだ。これでは意見を出す意欲が無くなる。なお、これは、行政改革大綱実施計画に盛り込まれているパブリックコメント制度の精神にも逆行するものである。
第3に、評価の対象となる事業変更の時期がおかしい。
市によれば「平成17年度から21年度の5ヶ年で事業を進めており、事業最終年度となる本年度において、まちづくりの目標や数値指標の達成状況を確認する事後評価を行」うというのであり、そのために平成21年9月に事後評価の原案を公表したのである。しかし、その一方で、平成21年8月に事業計画を変更しているのである。つまり、5カ年計画の事業の終了間近、評価原案を造る直前になって計画を変更したのである。これでは、評価に合わせて計画を作り直したと言われても仕方あるまい。
第4に、指標の設定、評価があまりにも恣意的である。これでは、まともな意見を出しようがない。
指標の一つである「公共交通機関の利用者満足度」をみてみよう。アンケート結果によると従前値が51%なので、目標値を80%に設定したところ、現在90%になったから目標を達成できたとなっている。
しかし、市民の実感としてこれはまったくおかしい。公共交通機関に対する満足度がこれほど高ければ、乗合タクシーの利用者が少なくて廃止することなどあり得ないからだ。そこで、よく見るとアンケートの対象が利用者に限定されていることに気づく。公共交通機関は不便だから利用しない方はアンケートの対象外なのだ。これなら満足度は高くなるのは当然だ。
また、従前値、目標値、評価値の設定もまったくおかしい。まちづくりの目標達成の確認の7頁によればこうである。
「利用者等に対し、実施前(平成17年7月)完成後(平成20年10月)にアンケートにより比較を行った。事業実施することにより利便性向上の期待を調査し、51%(従前値51)の方が向上すると回答した。この結果により目標値を80と定めた。整備後、アンケートを実施した結果、どちらとも言えない、変わらないが激減し、90%の方が事業効果を感じて良好(利用しやすくなった)としたため、評価値を90とした。」
つまり、事業実施することにより利便性が向上すると思うかと聞いたところ、51%の方が向上すると思うと回答した。だから、満足度が51%だと言うのである。これは、期待値と満足度の混同である。
もう一つの指標(にぎわいの指標)である歩行者数が「ほぼ目標値を達成した。」は、噴飯ものだ。
ところで、今回の事業評価原案に対する市民意見募集は、市が国から強要されたものである。市長は、議会で事業評価に市民を参加参加させる事に否定的な答弁をしたが、その考えが変わったわけではない。だからといって、これはないだろう。いくら評価されるのがいやでも、きちんと評価をしなければ、事業の成功などあり得ない。
このまちづくり事業の基幹事業である土地区画事業は「当初計画された事業完了のH22 年度が目前に迫っても、事業が10%程度しか進まず、25 年度まで計画の見直しが行われているが、完成まであと何年かかるかわからない。」(井之川議員)だそうである。そして、市はこのまま事業を終結する方針を示したのである。
10%の達成率。
これが、まちづくり事業に対するおおかたの市民の評価と一致するだろう。こんな茶番やはめ、10%の現実を見つめ、どうして10%しか達成できなかったのか、その原因を探ることから始めなければ中心市街地に未来はないだろう。(杉山弘一)
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