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2009年8月22日 (土)

沼田と格差(その3)農業について

 民主党は、戸別所得補償制度で農山漁村を再生する、ことをマニフェストに掲げている。その中身は、農山漁村を6次産業化(生産・加工・流通までを一体的に担う)し、活性化するのが政策の目的だという。具体的には、農畜産物の販売価格と生産費の差額を基本とする「戸別所得補償制度」販売農家に実施する、という。
 市場の競争原理に任せて放置すれば、農産物の販売価格が安く買い叩かれ、コストをまかないきれない。これは工業化社会が始まって以来、農業が背負わされてきた普遍的問題である。工業化社会で人間らしく生きるには、子供の教育費や、医療費など生産と直接関係のない費用が必要である。
 農業は土地と労働力があれば、新規投資や付帯経費などがかからない。かつて都会で失敗したら、「国に帰って百姓をする」という言葉があったのはそのためだ。農家の二、三男が産業予備軍たりえたのも、何はともあれ、「食わす」だけなら何とかなったからだ。

 沼田は、市街を少し外れると農村風景が広がる。市の全所帯数は約二万戸、農家は二千五百戸、そのうちの専業農家は約五百戸で、農家の八割は兼業農家である。沼田市の全人口は五万人だが、そのうち農業に従事しているのは六千人程度である。戸数でも人口でも約12%が農家である。これを少ないと見るか、多いと見るか?見る人の視点、価値観次第で答えは変わるだろう。しかし、沼田の平地に占める農地の比率ということになると農業の比率は高くなる。農地に山林を加えればそれは圧倒的な高さになる。つまり、空間を占める比率、環境を支配する力という点では、沼田は農業の市なのだ。それなのに、所得の比率は、人口比よりも低いと思われる。だから、市役所の組織でも農政課は経済部のなかの一課に過ぎない。軽視されている。
 ここに農業の置かれている位置が透けて見える。手っ取り早くカネを稼ぐことを重視する社会の軽薄な風潮が見えるのである。このカネ、カネ、カネの世の中において農業はないがしろにされてきた。その役割の大事さを人々は、自覚せず、携わるものは馬鹿にされてきたのである。

 民主党がどこまで気づいているのか、マニフェストからはわからない。いや、むしろ何もわかってないのではないかと怖れる。単なる票集めの方便にすぎないのかもしれない。ばら撒きをして農民を甘やかせば、農業がますますだめになる公算は大きい。所得補償には疑問がある。不安材料はまだある。FTC(自由貿易協定)を推進するようなことを言っていること。FTCは、日本の農業を壊滅させる恐れがある。政治的勇気と知恵の出しどころが、FTC問題である。

 八月二十一日の毎日新聞朝刊に、『日本は「農業」を捨てたのか』と題して柴田秋夫という人が書いていた。「長年商社の食料部門で穀物取引に携わってきた友人によれば、農業をおろそかにする国は滅びる、という考えが欧州には根付いている。欧州の国々は農業を犠牲にしてまで経済大国になろうとはしなかった。改めて日本という国を振り返ると、ひたすら工業化による経済大国を目指す一方、農業を切り捨ててきたのではないかと疑いたくなる。それは、自然に対する畏敬の念や他人に対する思いやりの文化をも失ってきた道でもある。現在の世界的な経済危機と食料危機は、日本にとって「農業」を根本的に立て直す好機と言えよう」。過去に自民党がやってきた農政は根本に哲学がなかった。その場しのぎのばら撒きを繰り返してきただけだった。根本的哲学的に農業を考えている人が民主党にいるかどうか知らない。しかし、政権交代した暁には、そういう深く考える人が出てこなければ何のための交代かということになる。交代を意味あらしめるのは、われわれ民衆の監視である。われわれには、既得権益などはないから、ものごとをありのままに見、はっきりと見たことを指摘できる。

 しかし、われわれがあるべき農業の姿のビジョンを持ち、われわれの側からそれを強く主張していけば、今まで自民党政府が取ってきたでたらめな行き当たりばったりの「農政とはノー政」と言われる政策とは少しは違ったものになる可能性はある。

 私は農業こそ今日の最も重要な政治課題だと信じる。皮肉なことに、農業再生の鍵は、われわれの社会が市民社会として成熟するか否かにかかっている。市民社会の成熟は、民主主義、情報公開の原則、による、完全に開かれた社会を意味する。すなわち、今の農村的なものの全面的否定である。今日まで沼田を支配してきた閉鎖的、情報過疎的、旦那的社会を打破することが絶対の条件なのだ。
 幸いなことに、そのための外的条件は昔とは比較にならないほど整っている。インターネットの普及で、意見の交換が安価に簡単にできるようになり、どんな権力もそれを邪魔できなくなっている。後は、われわれ自身の内なる充実だけが問題なのだ。農業の大事さをよくよく考えてみようではないか。(峯崎淳)

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