地方分権と沼田
例によって三粋人が集うと沼田談議に花が咲いた。
歴史好きの粋人が一昨日行われた都議選の結果について一言述べたのがきっかけで地方自治と沼田の議論となったのである。
歴:「自民党が大敗したね。民主党が第一党になった。私は共産党が十三人いた議員を五人も減らして八人に後退したこと、社民党がゼロだったことの方が意味がある変化だという気がする。社民党が旧社会党の分身で、口で言っていることを実行する気もないし、責任も持たないという過去の実績がこの厳しい評価につながった。共産党が党員数を相当増やしていると言われながら、惨敗を喫したのは、労働者を物品のように扱う小泉改革には反対であっても、資本主義ばかりか言論の自由といった市民的自由まで否定する変革まで望む人は限られているからだと見ていいだろうね」
ビジネスマン:「自民党は役人におんぶに抱っこで、役人天国を改革する力はない、とますますはっきりした。自民党に政権を任せているかぎり、役人の天下は続く。地方分権なども掛け声だけで現状が変る見込みはないね」
法律家:「官僚が変らないのは、政治家などを甘く見ているからだ。選挙で浮沈がある政治家などと違い、国法で厚く身分を保証されている秀才ぞろいの官僚の方がはるかに強靱なんだな。官僚制度を解体しそれに取って替わる制度を誰がつくる能力があるのか。自民党の滑稽さは、それさえも官僚に頼まなければならない、ところにある。民主党にどれだけそうした能力があるか、まったく未知数だが、意欲だけはあるようだ。だから、ひとつやらせてみてもいい、というのが国民の多数意見と成りつつ。そのことが今度の選挙でわかったということだろう」
歴:「都議選の争点がどこにあったのか、まだはっきりしてないけれど、石原都政もボロが出始めていたし、自民党の不人気が都議の選挙にまで影響したということだろう。論理的には、国政と地方議会は直接の繋がりはないわけだから、麻生自民党の醜状が地方自治に直接響いた、という甚だ皮肉な地方分権の実例になってしまった」
法:「沼田はどうだろう? 沼田の選挙は地縁、血縁、金縁がものを言う選挙だったが、これは変わるだろうか?」
ビ:「変る、と見る人は少ないね、残念ながら。この地域には、自分たちの地域を自分たちの知恵と意欲でよくして行こうという気風がまるでない。長いものには巻かれろ、偉い人には逆らうな、出すぎた振る舞いは人に嫌われる、と思っている」
歴:「役人天国があまりにも長く続いたことで人民が一種の去勢牛になってしまった」
法:「民主党は役人の権力機構を本気でぶち壊すつもりらしい。それには数々の法改正を行わなければならない。法律を作るのが官僚の仕事だから、官僚は自らの失権をもたらす法律を書くことになる。そんなことが民主党にできるかどうか。民主党のマニフェストには、時間表は載ってないらしい。時間表のないマニフェストなんて自民党の約束と同じで無意味に等しい。官僚機構そのものとの戦いだから、その大変さはわかるがね」
ビ:「民主党が天下を取れば沼田はどうなるだろう?」
法:「今まで地方の生殺与奪の権は役人が握っていた。地元出身の政治家は役人にすりよって予算のおこぼれを頂戴する乞食みたいな存在だったが、民主党の下ではどうなるか?最悪のシナリオは、権力の空白が生じ、一切のガバナンスが失われて大混乱が起きることだが、そこまでは行かなくても、政策立案力を持たない地方自治体は置いてきぼりにされる公算が高い。自らの未来を自らの頭で描き、現実的な計画をつくった地方自治体にチャンスが来るかもしれない。今日の官僚政治の巨大な無駄が取り除かれれば、地方に廻るカネが増えることが期待できる」
歴:「改革はうまくゆくことより失敗することの方が多い。歴史的な見方というものはそういうものだ。民主党が官僚機構をぶち壊せば、成功してもしなくても、大混乱が起きる。機を見て敏なる者が活躍するだろう。役人天国の発想法のままでいれば、飛んだ目に遭う」
ビ:「役人の重しが取れた世の中なんて沼田は今まで経験したことがない。どんなに清々するか、知らないんだ、この地方の人は。私はかつて米国に住んでみて、初めてそれを味わった。自由の味だよ。しかし、官僚の数を今の半分にするぐらいの大改革をやらなければ役人天国は解消できないよ。役人を半分に減らし、国政は外交と軍事と高等教育に専念するぐらいの大改革をしなければ、この国の役人専横はなくならないね。江戸時代以来の官尊民卑は消えないよ」
歴:「変らないようで変るのが、歴史の面白さでもある。われわれは嘘つきと本物とを見分ける選別能力を磨き、口先だけ改革を唱えるニセモノや進歩の皮を被ったインチキ連中に騙されないことだ。旧社会党のような体質は断固として斥ける知恵と勇気が必要だよ。嘘つきはもういらないんだ」
現在与党議員が見せている醜態は戦後の五十五年体制の断末魔の足掻きである。日本は、官僚が権力を握ったことでアメリカの保護下冷戦時代を巧みに乗り切り経済大国になった。しかし、小泉純一郎が採択した新自由主義的改革は、資本主義が最も愛する格差を拡大生産し、国民の大多数を占める弱者(地方在住者、低生産者、貧民、無特権者・・・)が不幸に陥った。民主党が政権を取ると予想されるが、官僚の抵抗を素早く粉砕し、新しいガバナンスを樹立できるか否かが勝負となる。今の民主党に官僚制を壊す能力などありそうもないが、火事場の馬鹿力を期待しよう。壊した後どうなるか。壊して見なければわからない。
投稿: 峯崎淳 | 2009年7月16日 (木) 20:28