住民の目!片品
私たち公金を扱う者は、賢明に支出し、悪弊を改め、外から見える形で仕事をするという、説明責任を求められる。それによってようやく、政府と国民との不可欠な信頼関係を再建することができる。(朝日新聞訳)
1月20日深夜2時過ぎのバラク・オバマ米大統領就任式の様子をテレビで見た。選挙戦中の彼の数々のスピーチに感心していただけに、就任演説ではどんな言葉が出てくるのか興味津々だったが、期待していたよりはるかに現実的な内容に意外な印象を持った。うさん臭いだけの美辞麗句の羅列などを期待したわけではないが、事前に漏れ伝わっていた話題にリンカーンやケネディ、キング牧師の名前が頻繁に出ていただけに、名演説と称される彼等のものに並ぶものを秘かに期待していたというのが正直なところであった。とはいえ、歴史を踏まえ現実を見据えたうえで周到に練られた印象は充分で、一枚かんでいたスピーチライターが27歳の若者というのを知って、これにも改めて感心した。
そのスピーチが3分の1ほど進んだところに冒頭の一節があった。取り立てて言うほどもないこの至極当たり前の一節がひっかかって聞こえたのは、私がいま住むところの行政が、この至極当たり前の一節とは対極にあると感じられるからだ。
07年8月末、尾瀬国立公園が誕生し、片品村はその記念として7つの事業を行うことを決めた。観光が産業の大きな柱のひとつである尾瀬の麓の村としては当然の発想であり、記念事業に某かの予算が組まれることも想定の範囲内であった。ただ私が見る限り、発表された7つの企画のうち4つは企画として穴だらけであり、首を傾げざるをえないものだった。決めたのは14名からなる記念事業実行委員会、うち8名は公職にあり6名は民間人である。問い合わせても、役場はこの6名の氏名を個人情報保護法を楯に明かさない。片品村の頭脳は、公式事業に関わる人間であっても、民間人は公的な立場ではないという解釈をする。つまり、片品村では公式事業を、存在は見えるが顔も見せない名前も明かさない正体不明の人間が決定、実行する。こんな馬鹿な話があるか。
記念事業のひとつは、前教育長が発案した尾瀬オゾンシアター。実はこの演劇スクール、50代の人たちの半定住、長期滞在を謳って20人の参加者を募って前年に第1回が開催されていた。半定住という曖昧な表現は、別荘でも建てさせようという意味なのかと、長期滞在は文字どおりに解釈し、日帰りが難しい首都圏の団塊の世代がターゲットと私は見た。素人劇団などいくつもある首都圏から、わざわざ1回の往復に2万?3万かかる片品まで毎週末の稽古に来る人がどれほどいるのか、ひとつの作品を大勢で作りあげる人たちの宿泊を280軒の民宿、ペンションにどう振り分けるのか、他にも幾多の疑問が私にはあったが、この事業に村が130万、県が50万の補助金を出した。実際に参加した20人はほとんどが利根沼田の人たちで、毎週末の稽古は毎回ほとんどが日帰りだったらしい。議会での質問に前教育長は「参加者が車中泊や自費で宿泊した苦労にご理解を」と答えた。この答弁、謳い文句とも現実とも矛盾していないか。しかも180万の補助金を受けながら、事後の総括もなく結果報告書もない。村長は私に、定住促進を謳えば交付税がもらえるからと言った。それがどれほどのものかは知らないが、10年後、15年後に想定される医療、介護にかかる費用を考えれば、都会で働き盛りを過ごした人の老後は、都会に責任をとらせればいいのではないか。
村はこの演劇スクールの第2回目を尾瀬国立公園誕生記念事業のひとつとして開催した。総括もなく結果も出ていない同じ内容の2回目に、村から支給された補助金は50万。第1回目の補助金で用意された大道具、小道具などの資材を流用し、その処分も決めないまま実行委員会は解散した。補助金で用意された資材は村の財産である。その処分が宙に浮いたまま主体がなくなる。ままごとじゃああるまいに。(木暮溢世記、続)
村の公的な委員会の委員名を秘密にするとは驚きです。行政委員会の委員になることは極めて不名誉なことなんでしょう。それなら、いっそのこと、議会も職員も皆覆面をして匿名で仕事をするようにしたらいかがでしょうか。本音で仕事が出来て良いかも?
投稿: 杉山弘一 | 2009年2月20日 (金) 14:32
名前を出さないのは、うっかり「委員」などになっていることが村人に知れると、あのやろう、調子に乗りやがって、ヨロクでもせしめるつもりだろう、けしからん、あそこのかかあでもいたぶってやろう、車に釘で引っかいて落書きしてやろろう、アンテナをひんまげ、バックミラーをへし折ってやるべい、となるからである。嫉妬が、利根沼田原住民を支配する強いメンタリティーである。原住民こそ王様なのだ。都会から流れてきた馬の骨とは身分が違う。昔は原住民をドンビャクショウとか田吾作とか呼んで馬鹿にしてた奴らを今こそ懲らしめるべきである。
投稿: 峯崎淳 | 2009年2月21日 (土) 13:39