ロス市警と沼田市警察

三浦和義容疑者がロサンゼルス市警の留置所で自殺した事件に思いがけない補足が付いた。ロス市警は、三浦容疑者は１９７０年に起きた白石千鶴子さん殺しの容疑者であったと発表した。この事件はロス市郊外の荒地で死体が発見され歯型から白石千鶴子さんと断定された。千鶴子さんがロサンゼルスに会いに行った相手が三浦和義であり、また三浦が白石さんのカネを使っていたことなどから殺したのではないかと疑われていた。しかし決め手になる直接証拠がなく逮捕にまでは到らなかった。この三十年前の事件の容疑者であるとロス市警は容疑者の自殺後一ヶ月も経って発表したのである。しかし新しい証拠が出たということではないらしい。日本で三浦和義の弁護を引き受けていた弁護士などは、人権侵害も甚だしい、遺族と相談して抗議を申し込むかどうか決めると言っている。
　ここでこの事件を考えてみたい。三浦和義は妻和美さん殺しの容疑で日本で逮捕され裁判を受け無罪で釈放された。疑わしきは罰せず、の日本司法の伝統が、直接的な証拠の不足を理由に三浦を釈放したのである。しかし、ロス市警はそうは考えなかった。証拠状況はまったく同じであったが、それでも有罪に持ち込むに十分と判断していたようだ。
　このような判断の差が生じた理由は、この事件の性格に対する判断の違いにある。つまり、犯罪者が狡知に長けているのみならず、ある人格型に分類される人間であった場合、従来の司法的手段では網の目からこぼれ落ちてしまうことがありうる、という認識がロス市警にはあったと思われる。私はこの事件に関する限り、ロス市警は日本の警察および司法界より一歩進んだ理解の仕方をしていたと思う。三浦和義の人となりを私は直接には知らないが、彼が有罪であるという考えは、和美さんの親と同様揺るがない。三浦は、日本人にはあまりなかった新しい性格型の人間だった。英語でサイコパス（ソシオパス）という。この性格の特徴は、ひと言で言えば、良心がないこと。良心がないから、良心の呵責もない。冷血、ぞっとするような冷たさこそこの性格の特質である。これは、必ずしも犯罪と結びつくとはかぎらない。日本にこういう人は少なかったが、徐々に増えている。米国では二十五人に一人いる、というデータもある。このタイプを見分ける最も手っ取り早い方法は、嘘つきであるかどうかである。サイコパスは平気で嘘をつく。口に出して言うことと、腹の中はまったく違っている。サイコパスは必ずしも犯罪者として警察に逮捕されるとは限らない。厄介で危険iなのは、司法の網から巧みに逃れているサイコパスである。
　表向きの顔では、談合反対のきれい事を唱えながら、裏では談合勢力のためを図るのに方法を選ばない、というのがそれだ。表では、沼田の希望の星などとよばれながら、裏では夫と組んで談合勢力の利益を図るという人などはサイコパスの疑いがある。九条の会に出ているから、憲法改正に反対なのかと見ていると、憲法改正を主張する政党の地域の委員になったりする。嘘をつくことをなんとも思っていない。その場限りの口当たりのいいことを言って人をたぶらかす術に長けている。このように平気で人を騙す活動家にはサイコパスの惧れがある。われわれは嘘に対してもっと敏感になるべきだ。とりわけ、政治に携わる人間の嘘は決して容赦しない厳しさを持つべきだ。沼田市民はこれから十年間以上毎年二億七千五百万円、望郷ラインの借金を払い続けなければならない。われわれがもっと嘘に敏感で厳しい体質であったなら、馬鹿な道路と借金を背負うことはなかった。沼田を食い物にすることしか頭になかった市長に騙されずにすんだはずである。

沼田市警察はロス市警とは天地の隔たりがある。知り合いが経営している事業所で盗難が頻発した。犯人の目星はついた。しかし、何度警察を呼んでも、従業員の指紋と足型と調書を取るだけ。一向に犯人を捕まえようとしない。ロス市警なら、署長はたちまちクビである。
日本の警察には犯罪をあってはならないもの（だからない）と考える傾向がある。人は隙があれば何でもする、（だから常に見張っている必要がある）と思っているアメリカの警察とは雲泥の差がある。だからアメリカの警察には裏金はない。あれば、それは犯罪で誰かが刑務所に行く。日本の警察は、裏金などあってはならないものである、だからあるはずがない、あったとしたら何かの間違いである。そういうわけで、日本の警察は今の警視総監が生まれる前から裏金を作り、使い続けてきた。誰一人、刑務所に行くことなく。