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メンバーの裁判

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2008年12月18日 (木)

シカゴで起きたことと沼田

市の北部に家の窓とか玄関の扉などを製造している「戸窓工業(株)」という会社がある。今度の金融危機のあおりを食らって戸窓工業(株)の経営陣は突然工場を閉鎖すると発表した。いろいろ考えてみたが、従業員に支払うカネがないため、閉鎖以外に方法はない、と言う。従業員は納得しなかった。辞めさせるなら、退職金や有給休暇分の給与を払ってくれ、と二百人ばかりが座り込みを始めた。
これを見た新聞記者たちが、オバマ次期大統領の記者会見で、コメントを求めた。どうせ決まり文句を聞かされるだろう、と記者たちは思っていた。つまり、こんなとき政治家が答える台詞はほとんど決まっていて、「暴力による占拠はいけない・・・神聖な私有財産権を侵犯している・・・法と秩序を尊重しなければならない・・・」などと言うに決まっていると思っていたのだ。ところが、次期大統領が言ったのは違っていた。「従業員たちが支払いを求めているのは当然です。働いて得た収入だからです。彼らは正しいことをしていると思う」とオバマはきっぱりと言い切った。そして、まるで、自動車三社救済法案の否決を見通したかのように、オバマは付け加えた。「戸窓工業(株)の従業員たちに起きていることは、アメリカ経済に全国で起きていることの反動だと理解する」。
さあ、これが報道されると大騒ぎになった。過去においては、アメリカ社会は、経済的な権利の要求には厳しく線引きし、公民権運動などと同列には見ないことになっていた。オバマは境界線を取っ払ってしまったのだ。次期大統領が公認したというので、従業員側は一挙に勢いづいた。座り込みしている従業員の家族までやってきて加わるし、一般市民や政治家たちも駆けつけてきた。法律の解釈まで変ってしまい、いままで労働者を抑えてきた行動基準がその権利を認める方向にずれてしまったのである。米国の大統領の権威それだけ重い。

資本主義は本質的に残酷な制度である。その酷薄な面を緩和するさまざまな工夫がなされなければ、社会は陰惨になってしまう。救済を考える場合に大切なのは、フェア(公平)という感覚である。特定の人々を特別扱いすることは許されない。

戸窓工業(株)の場合、従業員たちは自分たちの会社を苦境に立たせた直接の原因が銀行の貸し渋りにあったことを突き止め、銀行に厳しく抗議した。バンク・オブ・アメリカ銀行とJPモーガン・チェイス銀行は、「お前たちが政府に救済されたのに、われわれが捨てられるの間違っている」という従業員と世間の支持者たちの大合唱に屈した。戸窓工業(株)に必要な資金を用立てることを決めたのである。従業員たちは座り込みを解き、家路についた。「イエス、ウイ・ディド(そうだ、おれたちはやったぜ)」と歌いつつ。

オバマ次期大統領の選挙中のスローガンの一つは、「イエス、ウイー・キャン(そうだ、やれば出来る)」だった。

沼田に欠けているのはフェア(公平)の精神である。長い間愚劣な政治屋に支配され続け、フェアなどということは絵に描いた餅で何の足しにもならないと思い込まされてきた。市役所に就職するのさえ、能力よりもコネとカネがものを言う。しかし、沼田だって変えることはできる。シカゴと同じことが起こりうる。やる気になりさえすれば。理想を掲げる勇気さえ出せば。

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