デトロイトと沼田
アメリカの自動車産業が崩壊するかしないかの瀬戸際にある。政府が340億ドルの救済ローンをしてくれなければ、自動車大手三社、フォード、GM,クライスラーは倒産するしかない、と三社の首脳が訴えている。アメリカ政府と議会は救済の方向に傾いているようだが、半数近い国民が救済に反対している。反対の理由は、いままでいい加減な経営をやってきた無能な経営者たちや、特権的待遇を受けて甘やかされきた自動車組合の労働者をなぜ税金で救済するのか、無能と貪欲と怠惰にご褒美をやる必要はない、という資本主義のモラルに基づく厳しい批判が底流にある。刻苦勉励を尊しとするアメリカ人の倫理観からの、いわば感情的反撥である。だが、反対論はそういうものだけではない。ある反対論者は、最近デンマークとイスラエルに出来た新型事業モデルを紹介する。シャイ・アガシという事業家が開発したベター・プレイスという会社である。この会社はつい先週ハワイ州政府と組んで事業計画のテストを行う契約を結んだと発表した。ベター・プレイスは何をする会社か。簡単に言えば、電気自動車に電気を充電するシステムだ。太陽光や風力で発電したクリーンなエネルギーを供給する会社で、方法はバッテリー交換、差込プラグなどのステーションをそこらじゅうに設置、ガソリン車がガソリンをSSで給油するのと同じように電気を売る。デトロイトは車を売るが、ベター・プレイスは移動距離を売る。電気自動車の客は一マイルの移動に6セント(約六円)払う勘定になるが、ガソリン車の方は十二セント(十二円)払っている。顧客は電気自動車をルノーか日本の自動車メーカー(たとえばニッサン)から買うか、リースする。(アガシ氏はGMにも話をしたが、鼻であしらわれて終わりだった。) 今大手三社を税金で支えることは、iPodの登場前夜にレコード会社に投資するようなことになりはしないか。アガシは、車で移動することの新しい方法だと主張する。バージョン1.0が、従来のガソリン車なら、これはバージョン2.0なのだ。デトロイトはバージョン・アップに失敗している。こんなものを救済するのは税金をドブに流すのとお同じになりはしないか。とこの論者は言っている。現在どんなに大きな会社でたくさん従業員がいようと、商品が時代遅れなら未来はない。
沼田のグリーンベル21も時代の要求に合わないなら、税金を投入するのは止めるべきだ。それでも救済してもらいたければ、市民の必要に応えるには、こうすればいいという方法を明らかにしたうえでお願いすべきである。しかし、従来の商店に入居してもらってそのテナント料でビルを経営していくというバージョン1.0は駄目なことはもうわかっている。バージョン2.0に考え方を変えなければならないのだが、はてさて、今の頭コチコチの権利者たちにはちと荷が重すぎるようだ。バージョン・アップできなければ、今のまま倒産し、全国に珍しくもないシャッター・ビルとなるほかない。このバージョン・アップこそ、市民の目で私が初めから指摘したパラダイムの転換によって見えてくるものだ。
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