沼田とハワイの環境保護
「身銭を切る」という言葉がある。沼田では死語になって久しい。高度成長期の間になぜか卑しくなってしまい、なにをするにも市の補助金を当てにすることを恥ずかしいと思わなくなった。昔はそうではなかった。まだ水道がなかった時代、沼田に赤痢が流行し大勢の町民が死んだ。たとえば、明治三十一年には八十二人の死者が出ている。中町の横山桂助という人が中心になって中町に『沼田飲用水改善期成中町貯金組合』がつくられた。水道の必要を町民に啓蒙しつつ、積立金を水道敷設資金の足しにしようとしたのだった。当時はまだ水道など要らない、と反対する者もいた。横山ら沼田町民は、水道のため身銭を切るのは当然と思っていた。
さて、ハワイは太平洋のどまんなかにある群島で米国の州である。温暖化で水位が高くなると水没する危険があるため、州政府は2030年までに石油の使用を七十パーセント削減する計画を承認した。ところが、同州にある環境保護団体「青い惑星財団」はそんなことでは手ぬるいと、既成の政治エスタブリッシュメントを真向から批判した。ハワイ政府とハワイ電力は構造的変革を行わねばならない、とし、たとえば、陳腐化している電力供給システムを刷新、効率を高め、太陽光発電を設備した消費者が電力を自由に電力会社に買い取らせるなどの改革である。こうした改革の法制化を州政府に迫る一方で、「青い惑星財団」は、太陽光発電装置を増やし、風車を建設し、代替エネルギーの技術開発などに私財を投じると発表した。
公共のために、身銭を切ることが出来ない文明は長持ちしない。GB21を無料で沼田市に引き取らせるためには、三井だけでなく、権利者全員が、一切の私権を放棄しなければならない。抵当権を始め一切のマイナスが消滅した真ッさらなビルになって初めて、無料で譲渡することになる。持分所有者や入居者の既得権がついたままでは、無料ではない。
使用可能な状態でビルを維持管理していくだけで、最低でもざっと二千五百万円からの経費が必要である。本町通の再開発の核とするというコンセプトは有効性(バイアビリティー)を失っている。沼田市には、愚かで無能な権利者を救済する義務はなく、その余力もない。GB21に未来があるとすれば、沼田市民の切実な必要を満たすためGB21に何が出来るかにかかっている。経費とビルの使い道とを引き比べ、使用効果が経費に優るという結論が出てから引き取りを決めるのが本筋である。
それが不服なら権利者は身銭を切ってビルの再生に死力を尽くしてみることだ。身銭を切ったからといって活路が拓けるとはかぎらない。しかし、人のゼニを当てにする意気地なしに絶対に活路は見えないことだけはたしかである。
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