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2008年11月24日 (月)

沼田と元次官殺人事件

小学生のとき捨て犬を拾ってきてかわいがっていたが、その犬は人を見ると無闇に吠える癖があった。たまりかねた父親が保健所に頼んで処分してもらった。少年はショックを受けしばらく悲しみに沈んだ。そのときの恨みを晴らすため、元厚生省次官夫妻を殺傷した。自首してきた小泉毅は犯行の動機をそのように説明している。小泉毅の学歴や職歴を見ると、いわゆるフリーターと呼ばれる人々に分類されるようだ。志を得たとは言い難い人生であろう。すべてのフリーターがそうだとは言えないが、孤独で憤懣に満ち、出口の見つからない袋小路の人生を小泉は生きていた。被害者意識が肥大し、社会環境と応対する際のバランス感覚が平衡を失っていた。一口に言えば、社会的不適応者(ミスフィット)になっていた。
格差は、競争社会につきものである。小泉純一郎が米国型の競争社会を選択したとき、日本に小泉毅のような人物が出てくることは予想できた。何らかの理由で競争に敗れた人間は、精神的に孤立し、ミスフィットとなる危険に晒される。競争に破れる理由は、決して本人が無能ということにはかぎらない。不運の偶然の重なりでそうなる場合も少なくない。小泉毅の場合、何が彼を今日の境遇に追い込んだのか、詳しく検証してみないと分らないが、結果的に競争社会の落ちこぼれになってしまったことだけは明白な事実である。元次官夫妻殺傷事件は、格差社会の落ちこぼれが格差社会の優等生に腹癒せをした事件である。飼っていた犬を保健所が処分したことと、元次官夫妻の殺傷との間の論理的繋がりは、常識的には希薄である。しかし、格差社会に追い詰められ、孤独にさいなまれて風船のように妄想を膨らませていた小泉には、その重圧から脱出するには、保健所を仕切る厚生省の元高官を無残に殺すことが必要だった。

沼田のように人と人との関係が比較的濃密な村落的雰囲気を残す地域社会では、小泉毅のように孤独な人は比較的少ない。家族や一族や近所同士、同窓会その他の絆が残っていて、どんな人でも完全に他者と隔絶することがない。都市圏の人は原子(アトム)化し、他人と完全に断絶することが珍しくない。私の観察では、沼田は良くも悪くも村落共同体的な特徴を保っている。都会にくらべ、人と人との間の温度が村並みに高い。これに悪く付け込んでいるのが、政治だ。足の引っ張り合いは好きだが、正面から対決することを恐れる。表向きは穏便にことを運ぶように見せかけることを好む人々の傾向に付け込む調整型の指導者が幅をきかせる。自ら決断する責任を回避し、問題を先送りする。そのため蒙る損失は計り知れない。
沼田の主要産業は農業である。農業社会は、才覚が乏しくても、衣食住はなんとかなるという柔構造を持つ。沼田もそうで、出来の悪い子は家を継がせて百姓にする、と公然と言い放つ親も珍しくない。成功しなくとも自分が食っていくことぐらいはできる、というのだ。沼田が停滞し、世界の変化に遅れがちなのはそういう農業者の退嬰的な性格に起因するところも大きい。
グリーンベル21の問題で明らかになりつつあるのは、農業中心社会である沼田経済圏はあの高層ビルを維持するに足る購買力を持たないということである。では、GB21は役に立たない無用の長物なのか? 答えは、経営に対する考え方が今までのような物売りを中心にしたコンセプトに基づけば、イエスである。しかし、ビルは物売りだけが使うものとは限らないし、物売りが最高の利用方法とも決まっていない。もっと効果的な使い方はいくらでもある。しかし、一歩踏み出すには、今までの既成概念を全部御破算にすることが必要だ。それには、勇気が要る。知的勇気が要る。今の都市開発の経営者や、オーナーである沼田市にその知的勇気が期待できるか? 答えは悲観的にならざるを得ない。なぜなら、思い切ったパラダイムの転換を行う勇気と活力が彼らにあるとは思えないからだ。市長は、今の閉塞状況を打破するため、可能なパラダイムを探る知者の知恵をさぐるべきである。沼田の特徴を生かした新しいパラダイムを探るのである。そうでないと、市もGB21も、破産という不名誉な雪隠詰めになるしかない。

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コメント

記事は核心を突き格調も高く遠くからコメントを送る筆者も同感。今日のアクセス回数220を越えている、息を殺してじっと見ている人が入るのだろう。
これだけでも「市民の目」が大きな役割をはたしているのが現実です。次回の投稿を期待!!!

来月から12月議会開催、議員は沼田の将来に腰の据わった議論をして下さい。

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