鎖国政策の弊害(1)
沼田市は公共工事の入札に「沼田市内に本店を有する者」と言う極めて厳しい地域制限を課してしまった。これによる弊害は、企業誘致を困難にするだけにとどまらない。
第1に、入札談合による公金の無駄使いである。たしかに、一般競争入札にすれば、小規模の公共事業においては、談合は困難であろう。「沼田市内に本店を有する」との制限を設けても資格を有する業者がかなりの数にのぼるから、誰と談合して良いか解らないからである。
しかし、大規模工事ではまったく事情が異なる。大規模工事を受注できる資格であるAランクの業者の数は極めて限られているからである。この中で、「沼田市内に本店を有する者」と言えば、十数社しかない。しかも、かつて談合が発覚し公取委から排除勧告を受けた業者ばかりだ。これでは、談合の輪の中に公共工事を投げ入れているようなものだ。問題はそれにとどまらない。入札参加資格登録簿 が市のホームページに公表されているのである。これを見れば、入札に参加しようとする業者は、お互いにどの業者が入札に参加するのかすぐに解るのである。つまり、入札にあたって、誰と談合すればよいかを事前に市が教えているということなのである。これは、談合指示型入札と呼ぶべき、茶番である。
それにしても、地方債許可団体に転落するまで財政が悪化しているにもかかわらず、談合を放置し、いや指示し税金を垂れ流すのだから呆れる。かつて、市長は、議会で「談合はあってはならないもの」と言っていたが、「談合はなくてはならないもの」と考えているとしか思えない。よほどの事情があるのだろうか。
ところで、談合と言えば、昨日福島県前知事汚職論告求刑が東京地裁であった。参考までに、そのもようを報じる河北新報の記事の一部を抜粋して紹介しておく。
「清 廉潔白を装いながら、裏では実弟が談合で得る謝礼金で政治活動を支えてきたことを黙認、利用してきた」。1日、東京地裁であった前福島県知事佐藤栄佐久被 告(68)と実弟祐二被告(65)の収賄事件の論告求刑公判。栄佐久被告が掲げた「クリーン県政」は汚れたカネで支えられていたと指弾する検察側の論告 を、無実を主張する栄佐久被告は目を閉じたまま聞き続けた。
先の大戦のとき辻政信という参謀がいた。石川県の炭焼きの息子だが、無能なくせに、ポーズをつけるのがうまかった。移動するにも柳行李ひとつだけ、将校用の個室にも泊まらず兵隊と一緒に寝て清廉さをアッピールした。自転車で通勤して見せたどっかの市長とよく似ている。辻は弁舌が達者で、その言動は「小学校の道徳の教科書が正しい、という意味で正しいため誰も反対しようがなく、大多数の無言の反対を押しのけて通るのであった」とある作家は評している。口できれいごとを言いながら、裏で勝手なことをするのに、誰も阻止できない、という体質が日本の軍隊にあった。日本の組織にしばしば見られるこうした欠陥は、最終的に非常に高いものにつく。沼田市の公共工事の発注方式も一見地元にカネが落ちる地元優先のやり方に見せつつ実は住民に大損させ、業者の体質を弱くする悪辣なものである。市民は早くこれを見破り、明るい公共事業を目指せと声をあげよう。辻政信が無謀な作戦によって無数の日本兵を犬死させたことを忘れてはならない。
投稿: 峯崎淳 | 2008年5月 6日 (火) 11:13