公債費負担適正化計画を読み解く(4)
公債費負担適正化計画を読み解く(3)に続いて、沼田市が昨年9月に県に提出した「公債費負担適正化計画」を見ていく。
今回は、「2.実質公債費負担適正化の方策(2)借換債の発行」について。
ここは、2月の市民説明会でも強調された事項であり、短いので全文引用する。
平成19年度から始まった公的資金の補償金なし繰上償還制度を活用し、公金利債の低利の民間資金への借換を行います。計画期間中の借換による公債費削減額は、一般会計で6千万円程度、公営企業会計(水道事業、簡易水道事業、下水道事業、農業集落排水事業の4会計)で2億7千万円程度の見込みです。
要は、借換を積極的に進めるということである。公的資金をから民間資金への借換が推奨されるように制度が変わった背景には、隠された事情を感じざるを得ないがここでは深入りしないことにする。
制度が変わり繰上償還に伴う補償金がなくなった以上、低利の資金への借換のメリットは増えた。借換によって3億3千万円が削減されるのであれば、沼田市にとってメリットは大きいとも思える。
しかし、騙されてはいけない。ここにも落とし穴がある。
公債費の削減額は、計画期間中つまり、平成19年度から平成25年度までのものであって、26年度以降は含まれていないのである。低利の資金への借換によっても、償還期間によってはかえって金利負担が増えることもあり得るから、26年度以降を含めれば公債費負担が削減されるとは限らないのである。
【わかりやすくするために、例をあげよう。高金利の借入とはバブル期のものであるから、平成5年に20年ローンで20億円の借り入れがあったとする。金利は10%である。この場合、平成21年度から25年度の元金返済額は、1億円×5年=5億円。利息は平成21年度が5千万円、毎年1千万円づつ減って平成25年度は1千万円となるから、計1億5千万円である。結局、計画期間中の公債費は、6億5千万円である。26年度以降の負担はない。
次に、この借金の残金を平成20年度に借り換えたとしよう。残金5億円の金利は5%、償還期間は20年とする。この場合、計画期間中の元金返済額は、2500万円×5年間=1億2500万円。利息は平成21年度が2500万、毎年125万円ずつ減って平成25年度は2000万円となるから、計1億1250万円である。元金、金利あわせた計画期間中の公債費は2億3750万円となる。たしかに、期間中の公債費は、4億1250万円もの削減となる。しかし、26年度以降の負担が残る。これを考慮しなければいけない。まず、元金について言えば、3億7500万円を26年度以降に返済しなければならない。結局、元金の総返済額は5億円である。借換だから当然である。また、26年度以降は利息も払わなければならない。その額は、1億5000万円になる。結局、平成21年度以降の公債費の総額は7億6250万円となる。借換をしない場合よりも1億1250万円公債費負担が増加するのである。これは、単純化した例だから、実際にはさまざまなケースが考えられる。】
もちろん、借換した方が公債費負担が減少する場合もあるし、たとえ増額したとしても借換をした方がよいとの判断もあり得る。問題は、借換のメリットだけを示してデメリットを示していない点である。計画期間中の公債費だけを比較するのは、メリットだけを強調しデメリットをわかり難くするためなのだろうか。
議会や市民に借換のメリット、デメリットを示し、意見を聞いた上で借換をするべきか、するとしてもどのような条件でするのかを決めるのが住民自治だろう。
思い返して欲しい。そもそも、議会や市民に対してデメリットを隠してデタラメな政策を進めてきた結果が現在の財政危機を招いたのではないか。財政再建の対策で同じ事を繰り返しているようでは、結果は見えている。
コメント