ブログ内検索

  • Google

    WWW を検索
    ブログ内を検索

メンバーの裁判

« 一般市民の政治参加について | メイン | 公債費負担適正化計画 »

2008年3月12日 (水)

老人ホーム補助金違法支出事件の概要

一、背景事情

1 被告大淵は、利根沼田地区で有数の総合建設会社大淵建設株式会社の筆頭株主であり、平成九年までは同社の代表取締役を務めるなど、大淵建設を中心としてそ の関連会社で構成するいわゆる大淵グループを統率していた。 大淵グループは、大淵建設の他に、主として設備工事を行う株式会社大淵設備、主として大淵建 設の下請け業務を行う株式会社成和工業、主として墓地管理、保養地管理や損害保険業を行う株式会社ユアビジネスサービス等九社で構成され、大淵設備の代表 取締役は大淵建設の設備部長をしていたOSであり、成和工業の代表取締役は、大淵建設の建設課長であったSAであり、ユアビジネスサービスの代表取締役 は、大淵建設の常務取締役部長をしていたMである。 また、Mは、平成六年四月からは、被告沼光会が運営する「ききょうの里」の施設長でもあった(甲第五七号証 三頁乃至一七頁) 。

2 被告内田は医師であり、沼田市にある利根中央病院に勤務していたが、昭和五一年沼田市高橋場町に内田外科病院を大淵建設に請け負わせて建設し独 立開業した。 この際、困難であった建設用借地の手配に被告大淵が協力したことから、被告内田は被告大淵と親しくなり家族ぐるみのつきあいをするように なった(甲第五八号証 三頁乃至七頁) 。

3 昭和六二年頃、被告内田は自分の子供に医者を継がせるためにもっと大きな病院や老人保健施設を造りたいと考え、そのための土地の手配等を被告大 淵に依頼した。 被告大淵は、被告内田が大きな病院を建設すれば、大淵建設で建築工事が受注できると考え、土地の手配を始め被告内田にさまざまな協力をす ることにした。 当時、利根沼田地区には厚生省等による病床規制があり新しい病院を造ることは困難な状況であった。 そこで被告大淵は懇意にしていた熊川 次男衆議院議員(肩書きは当時)と深代栄三沼田市議会議長(肩書きは当時)に頼んで、厚生省や沼田市に働きかけを行うなどして、医療法人を設立し地域に病 床を増やす事についての許可をもらうことについて手助けを行った。さらに被告大淵は、建設資金の借入についても、群馬銀行沼田市店に口添えをした。 被告 大淵の協力により、病床数九九床の内田病院、ベッド数一〇一の老人保健施設という沼田市内にあっては大規模な施設を有する医療法人「大誠会」は設立認可さ れ、被告内田は大誠会の理事長となり、被告大淵も大誠会の理事に就任した。 また、大淵建設は両施設の建築工事の受注を得て、被告大淵も利益を得ることに 成功した(甲第五八号証 七頁乃至一〇頁) 。

4 しかし、元々病床規制が存在していた地域であり、患者数は被告内田の予想より少なく、借入金の返済等の資金繰りは苦しいものであった(甲第五八号証 一〇頁乃至一四頁)。

二、設置主体の選定
1 被告内田が大誠会の資金繰りに苦しんでいた昭和六三年頃、群馬県知事により、沼田市内に特別養護老人ホームを設置する計画が示された。 それを知った被告 内田は、特別養護老人ホームの設置主体になれば内田病院の患者の予備軍を増やすことが出来るし、内田病院のベッドが空いたときに、特別養護老人ホームから 入院させれば病院経営も安定化させることが出来ると考え、特別養護老人ホームの設置主体になろうと考え、被告大淵に協力を求めた。 被告大淵は福祉には全 く興味が無かったが、被告内田が特別養護老人ホームの設置主体になれば、その建設工事を大淵建設で受注することが出来ると考え被告内田に協力することにし た(甲第五八号証 一五頁乃至一七頁より)。

2 特別養護老人ホームの設置主体となるには、沼田市長の選定推薦を受けたうえで、群馬県知事による社会福祉法人の設立認可を受ける必要があったが、当時、被告内田・大淵らの計画を含め計五件の設置主体の希望が沼田市長に提出された(甲第四三号証の二) 。

3 そこで、被告大淵は、自分たちが設置主体として選定されるように、市長である被告西田に働きかけを行い、その結果平成元年五月頃には、被告大淵及び同内田らの計画が特別養護老人ホームの設置主体として、沼田市長により選定され群馬県知事に推薦された(甲第五八号証一六頁乃至一八頁及び二八頁)。

三、資金計画と法人認可
1 特別養護老人ホームを設置運営するには、市長による推薦を受けるだけでなく、法人を運営する役員を選任し、施設 建設用地又はその取得資金、建設資金及び運転資金等の自己資金を準備したうえで、社会福祉事業法に従い群馬県知事による社会福祉法人の設立認可を受ける必 要がある(甲第三五号証)。 
 法人役員については、被告大淵及び同内田がそれぞれ知人を勧誘し、平成元年八月五日に開催された被告沼光会の第一回設立準備会にて決定した(甲第五九号証の二)。

2 施設建設資金については、被告大淵及び同内田は当初、四億円程度と考えており、その財源として国からの補助金一億六〇〇〇万円、群馬県からの補助金八〇〇〇万円、沼田市からの補助金一億六〇〇〇万円、合計四億円を見込んでいた(甲第五八号証二五頁)。 
し かし、被告大淵は社会福祉には興味がなく、大淵建設で建設工事を受注して利益を上げることのみが目的であったから(甲第五八号証 二五頁)、建設費が高い 方が好都合であり、検討が進むに連れて、施設建設費の見積もりは膨らみ、最終的には予定価格は五億一五〇〇〇万円まで膨らんだ(甲第四一号証)。
一方、沼田市内部でも建設費補助金について検討が進んだが、沼田市長である被告西田は最終的に、六四八七万円の補助を実施すれば、事業が進められると判断した(甲第五四号証)。
こ れらによって、被告沼光会の資金計画は変更を余儀なくされ、不足分は群馬県と協議の結果、社会福祉医療事業団(以下事業団)から、一億八二〇〇万円、群馬 県社会福祉協議会(以下協議会)から一〇〇〇万円、合計一億九二〇〇万円を借り入れる計画となった(甲第五九号証の四) 。

3 一方、群馬県の指導を受け、平成二年九月八日の理事会において「ききょうの里」建設工事の発注業者の選定は指名競争入札によることとされ、指名業者は萬屋建設、大淵建設、山一工業、飯塚工務店、深津建設(現成和工業)の五社と決定した(甲第五九号証の五) 。
   しかし、被告大淵は大淵建設の子会社である深津建設(現成和工業)に落札させることを決めており、萬屋建設、山一工業、飯塚工務店とは談合をして深津建 設より高い金額で入札するように依頼しておいて、競争入札は被告大淵の予定通り、深津建設(現成和工業)が予定価格に対して一〇〇%の五億一五〇〇万円で 落札し、実質的な工事は大淵建設が行った(甲第五八号証五二頁乃至五五頁、五九号証の一二) 。
   被告大淵は、談合と子会社を迂回するという 巧妙な手段により、出来るだけ安い価格にて契約をしたい理事会と「理事長が社長になっている会社が建設を受注するのはまずい。」と指導していた群馬県を欺 き、上限価格にて建設工事を受注することに見事に成功した(甲第四一号) 。

4  談合が行われたため、競争入札の形式をとったにもかかわらず、「ききょうの里」建設工事の契約価格は予定価格から全く下がることはなく、被告 沼光会はほぼ予定通り、事業団から一億八五〇〇万円、協議会から一〇〇〇万円、合計一億九五〇〇万円を借り入れることになった。
これらの公的融資 の償還利子については、群馬県と沼田市が負担することになったが、償還元金については、被告大渕が毎年四七〇万円、被告内田が毎年五五五万円負担し、それ を保証するために両名と被告沼光会の間で償還金贈与契約を結ぶことが借入及び法人認可の条件とされた(甲第五八号証四四頁) 。なお、被告大淵が被告沼光 会の運転資金六〇〇万円も負担することとされ、被告大淵と被告沼光会の間で運転資金六〇〇万円の贈与契約を結ぶことも法人認可の条件とされた。
事業団、協議会及び群馬県は、被告大淵及び同内田の申告に基づき、平成元年度に被告大淵は二一七二万円、被告内田は四九三八万円の課税所得があることを確認し、贈与契約の履行が十分実行可能であると判断したものである(甲第四〇号証)。
しかしながら、被告大淵及び同内田は施設が動き出せば、一般市民や取引先業者及び入所者の家族から寄付を集め、寄付金収入で償還財源をまかなえると考えており、当初から贈与契約を履行するつもりはまったくなかった(甲第五八号証四六乃至四九頁)。
被告大淵及び同内田は、自己の利益のため群馬県知事、事業団、協議会を騙して法人認可を受けたものであった。

5 施設建設用地取得資金について、被告大淵及び同内田は五五〇〇万円くらいの自己資金が必要であると考えており、沼田市高橋場町にあった旧内田外 科病院の借地権付き建物を売却してその財源に充当しようと計画していた。 しかしながら、買い手は現れず資金は得られなかったため、理事らが以下の通りの 寄附を行い財源とすることになった (甲第五八号証二五頁乃至三三頁)。
**理事     一〇〇万円
**理事    一〇〇万円
大淵建設     二〇〇〇万円
大淵設備      五〇〇万円
大淵光男理事    六〇〇万円
内田好司理事   一八〇〇万円
内田絹代理事    五〇〇万円
 これらの寄附は、群馬県知事による被告沼光会の法人認可の条件であり、法人設立時に法人の資産として登記された(甲第五九号証の一〇)。

6 しかしながら、施設建設用地購入に充てる自己資金の寄附について大淵建設は半額である一〇〇〇万しか寄附をせず、被告大淵個人は六〇〇万円のと ころを全く寄附をしなかった。 そのうえ、被告大淵は、これまた認可条件であった運転資金贈与契約六〇〇万円も全く実行しなかった。 このため、被告沼光 会の運営は、大淵建設、成和工業、ユアビジネスサービスから合計二三三〇万円を借り入れてのスタートとなり、法人設立時申請書にある資産五五〇〇万円、負 債〇円の記載も虚偽であった(甲第三八号証の一) 。
また、一部の施設建設用地については、これまた認可条件と異なり、購入することが出来ずに借 地となったことも重なり、被告沼光会の資金計画は群馬県から認可を受けたものとは大幅に異なり、当初から社会福祉事業法二四条に違反するものとなった。  これらの違法な借入金の返済及び借地料の支払いは、被告沼光会の本部会計を圧迫し、本件違法な補助金申請を行う要因となった。

四、認可後の資金繰り
1 特別養護老人ホーム「ききょうの里」開所後は、公的資金である老人保護措置費や業務委託料などで、各福祉事業は運 営されたが、厚生省通達などにより、施設単位毎に会計を分け、独立して収支を経理することとされており、被告沼光会に於いても、本部会計のほか、ききょう の里会計、デイサービスセンター会計などの施設会計を設け、財務処理を行っていた(甲第三六号証)。
 このうち、施設整備に係わる負担金について は本部会計でまかなうこととされていたことから、事業団借入及び協議会借入については本部会計で経理し、償還財源についても本部会計内で調達する必要が あった。また、施設会計から本部会計への繰入も厚生省通達により上限が決められていて、被告沼光会の場合は年間二百数十万円しか見込めず、借地料なども本 部会計でまかなう必要があったことから、贈与契約通りの履行がなければ、一般市民などの第三者からの毎年一千万円近い寄付金収入がなければ、毎年少なくと も一〇二五万円の償還元金財源の調達は出来ない状況であった(甲第三八号証の一乃至七) 。

2 被告沼光会が設立認可され、特別養護老人ホーム「ききょうの里」の運営が始まると、被告大渕及び同内田は、当初からの予定通り、一般市民や取引 先業者及び入所者の家族から寄付を募ったが、寄付は両名が思ったようには集まらず、毎年一〇二五万円もの償還元金財源にはほど遠いものであった (甲第五 九号証の一二)。
しかも、設立後得られた寄付金は、大淵建設、成和工業、ユアビジネスサービスから合計二三三〇万円の借入金の返済に優先的に充てられたために、償還元金財源はまったく残らなかった(甲第三八号証の一)。

3 このような本部会計の財政状況の中で、平成三年一二月には、事業団及び協議会に対する第一回の償還期限が迫ってきた。 被告大淵は、施設会計か ら約七三〇万円を流用するなどして償還財源を工面したが (甲第六二号証)、施設会計には年度内に返還しないと群馬県の監査により指摘を受けるため、どう しても年度内寄附をする必要に迫られた。
被告大淵及び同内田は実際に償還金贈与契約に従って寄附をすることには大きな抵抗があったが、寄附を実行 しなければ、贈与契約を偽って法人認可を受けたことが明らかになってしまうため、平成三年度中にそれぞれ二三五万円を寄付せざるを得なくなった。 この時 の心境を被告大淵は、「贈与契約書に書いたように四七〇万円でなくてもそれに近い金を寄付させられるのは自分の懐が痛むのでたまらないと思った。」と話 し、被告内田は被告大淵に対し、「毎年、これじゃ困るな。寄付はまいるな。どうにかならないのですか。」 と話している(甲第五九号証の一 三三頁)。

五、補助金支給の決定
1 被告大淵及び同内田は、形式的なものと思っていた贈与契約によって実際に私財を寄附することが現実となったことに より、今後の自らの贈与義務を免れるため償還財源の確保に必至に取り組むことになった。 そして、被告大淵は、入所者の家族等からの寄付を積極的に集める ように運営会議で指示するとともに、沼田市から被告沼光会に補助金を支給させようと考え陳情をすることにした(甲第五九号証の一 三五乃至三九頁)。

2 平成四年六月八日、被告大淵は被告内田ら他の理事と連名で、本件補助金支給を求める陳情書を沼田市議会及び沼田市長に 提出した。 しかし、贈与契約によって償還財源をまかなう資金計画を前提に法人認可を受けたものであり、両名が法人認可条件を守り贈与契約を履行すれば補 助金の必要性が無くなるのであるから、贈与契約の存在を明らかにしてしまえば贈与契約が履行できない理由を説明しなくてはならなくなるうえ、履行できない 正当な理由もなかったので、贈与契約の存在を隠したままとした。
また、被告大淵及び同内田は当時高額納税者として沼田税務署から公示されており、 贈与契約を履行するに充分な所得能力を有しており、贈与が可能であったにもかかわらず、沼田市議会及び沼田市長に、被告沼光会の理事ら関係者が可能な限り の努力を実施したが償還財源が得られず窮状に陥っていると思い込ませるため、陳情書に、「もとより、私どもといたしましても、それぞれの友人、知人を始 め、利用者のご家族、関連会社などに後援会加入を要請するなど可能な限りの努力をいたしておりますが、これとても借入金の五割程度が限界であります。」と 虚偽の記載をした(甲第七号証)。

3 沼田市議会議長は陳情書を受理し、議会内の教育民政常任委員会にその審議を付託した。 委員会では二回の審議が行われたが、沼田市内に特別養護 老人ホームが設置されるのは「ききょうの里」が始めてであり、沼田市議会議員はその会計制度を充分に理解していなかったことから陳情書の記載内容を鵜呑み にし、右陳情書は同年七月一三日に採択された。この時点で、沼田市の方針として本件補助金支給が事実上決定した(甲第二号証)。

4 議会で陳情が採択されたことを受け、被告西田及び同福島は担当部課である福祉事務所長に要綱を整備した上で 予算案を作成するように指示した。 そして、沼田市老人福祉施設整備費償還費補助金交付要綱が整備されたが、市の内部検討の結果、補助率は元金償還金の三 分の一とされた。 福祉事務所長は陳情のとおりに五割の補助率とするため、平成二年度に支給が済んでいたききょうの里建設費に対する補助金を遡って上積み し、今後の償還に合わせて分割支給する予算案を立て、企画財政課長の査定を受けた。 企画財政課長は二年も前に補助額が確定し支給が完了していた建設費補 助金を遡って増額し、それを分割支給することに不自然さを感じ問題としたが、贈与契約の存在は全く知らされなかったため、補助は必要であると思い込み、大 きな反対はしないで不自然さを指摘した上で予算案査定の経過を市長である被告西田に報告した(甲第五五号証)。  
被告西田及び同福島は、贈与契約の存在を知りながらあえてこれを無視し、あるいは不注意にもこれを見落として、平成四年度の支出及び平成五年から二二年度までの債務負担行為についての補正予算案を決裁し、同補正予算案を九月定例議会に提出した(甲第一九号証)。
   沼田市議会では、同補正予算案の審議が実施されたが、ここでも贈与契約の存在は示されなかったため、同補正予算案は原案通り、同年九月一六日に可決された。
5 予算決定を受け、被告大淵は被告沼光会の代表者として、沼田市長に対して平成五年三月五日に平成三年度、四年度分の計九一二万六千円の補助金交付を申請した(戊第二号証の二)。
  補助金交付申請にあったっては、沼田市社会福祉法人の助成に関する条例によって財務諸表の提出が義務づけられているが、財務諸表は提出されず、被告西田及 び同福島もその提出を求めなかったため、ここでも、贈与契約の存在は明らかにされず、同年三月八日申請通り補助金支給は決定し(戊第二号証の六)、同年三 月二九日に支給された(甲第六二号証)。  補助金が支給されたことにより、平成四年度は被告大淵及び内田は贈与契約の履行を全額免れた(甲第三七号証の 二)。

6 その後平成八年度まで被告大淵及び同内田は贈与契約をまったく履行しなかったが、それでも平成五年度のように入所者から得た寄附により贈与財源が賄えた時もあった(甲第三七号証の二)。
しかし、毎年、被告大淵は、沼田市長に対して財務諸表を添付しないまま補助金交付を申請し、被告西田らも提出を求めなかったため、贈与契約の存在と被告沼光会の財務状態は沼田市にはまったく明らかにされず、本件補助金は支給され続けた(甲第一五号証)。

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.kazelog.jp/t/trackback/308121/12266234

老人ホーム補助金違法支出事件の概要を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

2012年8月

      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

最近のトラックバック