闇に葬られた市民参加検討会議の提言(4)
闇に葬られた市民参加検討会議の提言(3)の続きを示す。
市民参加・市民協働の前提となる情報公開のあり方に対する提言の核心部分です。かなり具体的な内容であり、市長がその気になりさえすればすぐにでも実現出来るものが多く含まれています。
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4. 公開・共有すべき情報内容の視点からの提言
行政の説明責任(アカウンタビリティ)に照らせば、事後の追随承認といった「釈明」でなもく、「しかたなく渋々」情報を漏らすようなものでもなく、市民納得型の説明をしなくてはならない。特に行政情報の公開・提供にあたっては、行政機関に都合の良い情報だけを公開・提供するのではなく、行政機関にとって都合の悪いと思われる情報についても、積極的に公開・提供する姿勢が重要である。都合の悪いと思われる情報も隠さずに公開することにより、市民と行政機関との信頼関係が育まれ、主体的な市民参加が推進されるのである。このような観点から、公開・提供すべき行政情報を以下に示す。先進諸例を参考に積極的に公開・提供していくべきと考える。
(1) 会議(庁議等の庁内の会議や各種審議会)の公開及び会議記録の公表
市の政策形成過程である庁議及び市民参加の重要な手段でもある各種審議会の会議記録はすみやかに市のホームページと「(仮称)情報共有コーナー」で公表する必要がある。審議会は市民が政策決定に関与できる貴重な場所である。したがって、このような審議会等の会議を公開し、会議録を積極的に一般市民に公表することが市民参加の推進には重要である。さらに、原則として全ての審議会に「一般市民」公募枠を設定することも、市民参加の推進には必要である。
なお、平成13年2月の行政事務近代化推進委員会の答申では、公開できない審議会が11件、公募にできない審議会が9件抽出されている。しかし、会議の性質から公開できない審議会でも事後に個人情報保護に対する配慮を施した上で議事録を公表することが可能なものもあるし、一般公募が適さない審議会でも他団体等に人選を委任することで人選の客観性を担保することが可能なものもある。前記答申は行政機関の視点からの提言なので、市民参加の観点から「会議録の公表」と「人選の客観性」について見直しが必要であろう。
なお、審議会等の会議録の公開・公表を提言する本検討会議こそ率先して会議を公開し、会議録を市のホームページに公開・公表すべきであった。残念ながら、事務局から予算上及び一般市民からの意見に対する対応方法上の問題提起がされ、また、公表の程度について委員間で意見が一致に至らなかったため、残念ながら議論の経過を示す会議録をホームページ上で公表することは出来なかった。しかし、事務局から提起された問題については、添付2に示すようにいずれも解決可能と思われ、会議録全てを公開・公表している先進事例が多くあるので、公表の程度についての議論を継続し早急に公開・公表を実現したい。
(2) 市民からの意見・質問・提言及びそれに対する行政の回答・対応内容の公表
市民参加をする、他の市民が行政機関に対して、どのような意見・質問・提言をしているかを知ることは極めて重要である。「市長宛Fax」や「ふれあい広場」で寄せられた意見や要望及びそれに対する行政の回答を、一覧形式にまとめて市のホームページと「(仮称)情報共有コーナー」で公表する必要がある。請願や陳情及びそれらの審議結果も同様である。
公表にあたっては、公表されることでかえって市民が意見提出等を躊躇することが無いように、意見提出者のプライバシー保護に留意することは言うまでもない。
一般市民から寄せられた意見と回答を公表することで、市民の言い放し・行政の聞きっぱなしを防ぐだけでなく、他の市民がどのような意見・要望を持っているかを市民の間で共有することが可能になる。同じ考えの市民がいることを知ることが出来れば、一緒に活動をすることが出来るし、違う考えの市民がいることを知ることが出来れば、行政機関に対する提言の質もより深まることになるだろう。それによって、「行政」対「市民」という一次元的な対立から脱却し、様々な立場の市民の存在を認識した洗練された議論がまきおこることが期待でき、市民と行政機関の信頼関係の構築にも寄与することだろう。
飯能市のホームページでは、市長と市民の対話集会(市長ほっとミーティング)で出された意見と回答をうまく整理して公表している。沼田市でも参考になる事例と思われる。
なお、市民からの質問等に対する行政機関の「応答義務」を制度化しておくことが前提であることはいうまでもない。
(3) 議会提出案件の公開
現在は、市民が議会を傍聴しても説明資料等を見ることが出来ない。これでは、市政に興味を持っても、市長から議会にどのような提案がされ、どのような議論がされているのかを理解することが出来ない。議会に提案された案件は、添付資料も含め直ちに市のホームページと「(仮称)情報共有コーナー」で公表し、一般市民が資料を見ながら傍聴できるようにする必要がある。
なお、行政の執行状況は、毎月議会の委員協議会に報告されているが、委員協議会が非公開とされているため一般市民は執行状況についてタイムリーに正しい情報を得ることが困難である。委員協議会に報告する情報についても市のホームページと「(仮称)情報共有コーナー」で公表する必要がある。また、議会においては、委員協議会を公開とすることが必要であろう。
(4) 記者会見での発表情報の公表
市長定例記者会見等、行政機関が記者クラブ等の報道機関に発表した情報について市のホームページと「(仮称)情報共有コーナー」で公表提供しておく必要がある。このような市政における旬の情報提供も政策形成過程への住民参加の推進にとって不可欠である。
(5) 監査結果の公表
監査委員による監査結果を公表することが、市の事務事業の評価段階への市民参加を進めるための前提条件である。監査結果は現在も市役所の掲示板で公表されてはいるが、A4の書類を市役所の掲示板に張り付けただけでは、広く市民に公表されているとは言いがたい。市のホームページと「(仮称)情報共有コーナー」で多くの市民の目に付くように公表する必要がある。県がホームページで監査結果を公表しているので具体的な公表方法について参考になるだろう。
(6) 行政評価結果の公表
まずは、総合計画の達成度について、行政機関が自己評価した結果を市のホームページと「(仮称)情報共有コーナー」で公表提供しておく必要がある。このような情報を公表することで、中長期的視野に立っての住民参加が可能になる。次のステップとして、市民が中心となって、充分な情報をもとに、市民満足度という尺度で市の事務事業を評価できる制度を構築すべきと考える。市民参加による政策形成(plan)、行政執行(do)、市民参加による行政評価(see)の繰り返しにより市民参加が増幅された形での行政運営が可能となろう。
(7) 公職選挙候補者の情報の発行
市長や議員を選挙で選ぶことは最も重要な市政への市民参加である。そして、情報提供という観点からは、候補者の政策情報等がわかりやすく記載された選挙公報の発行が不可欠である。なお、今年4月の市議会議員選挙にあたり選挙公報が発行されたことは高く評価される。今後は、市民の立場から分かり易い「選挙公報」のあり方を求めていくことが重要であろう。
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