空の軌跡エヴァハルヒ短編集
第二十四話 LAS小説短編 シンジが死んじゃったのよ!
※世界観は学園エヴァとなっています。
※使徒やゼーレなどは出て来ません。
※シンジとアスカの両親も健在です。
※碇家と惣流家は隣同士となっている幼馴染版LASです。
第三新東京市第壱中学校二年A組の女子、惣流アスカ。
アスカはとても元気な声で朝のあいさつをする少女だった。
しかし、今朝登校して来たアスカは暗い顔で教室に居る誰ともあいさつを交わさずに自分の席に着くと塞ぎこんだ。
アスカの親友である洞木ヒカリでさえ、アスカが登校して来た事にしばらく気が付かなかった。
「アスカ、来ていたの!?」
「あ、ヒカリ……」
ヒカリに声を掛けられて机から顔を上げたアスカは目の下に大きなくまを作っていた。
「アスカ!?」
「惣流、なんちゅう不細工な顔しとるんや」
「せっかくの顔が台無しだな……いや、これは珍しい写真が撮れるかも」
そう言ってカメラに手を伸ばそうとしたケンスケの手をヒカリが押し止める。
「まったく相田ってば不謹慎なんだから。アスカ、いったい何があったの?」
「今朝起きたら、シンジが……冷たくなっていたのよ、ベッドの中で」
アスカが悲しさに満ちあふれた口調でそう言うと、ヒカリ、トウジ、ケンスケの3人も重苦しくため息を吐いた。
「そうか、シンジのやつ調子が悪そうやったしな……」
「やっぱり、病気だったのかしら」
「でも、今年で14歳だろう? 長く生きた方じゃないのか」
トウジ達が話す横でアスカは切なそうにため息を吐き出した。
「病院に行って治療すればよかったのよ」
「無理な延命処置は止めようって……」
ヒカリの言葉にアスカは目に涙を浮かべて答えた。
「最近は外を歩くことも出来なくなって、ご飯も食べられなくなっていたんでしょう?」
「そりゃあ内臓も悪くなって居たんだろうな」
「きっと苦しかったんやろうな」
「昨日の夜もシンジの苦しそうな声がアタシの部屋まで聞こえて来て……静かになった明け方までアタシも心配で眠れなかったの」
アスカは感極まって涙を流し始める。
「きっと最後は声も出せないほど力が無くなってしまったのよ、あの時シンジの側に行けば死に目に会えたかもしれないのに……」
泣き出してしまったアスカを前にして、ヒカリ達は何も声を掛ける事が出来ずに顔を見合わせるだけだった。
そして、泣きつかれて涙を止めたアスカにヒカリが恐る恐る声を掛ける。
「それで、お葬式はいつやるの?」
「明日にでも、シンジは火葬にされちゃうってママが……」
「そうか、俺も放課後、会いに行ってもええか」
「うん、シンジってば鈴原と仲が良かったもんね」
「私もお菓子を作って持って行ってもいい?」
「シンジってばヒカリのクッキーが大好物だったわね」
アスカは昔を懐かしむように視線を遠く窓の外へと移した。
「シンジと初めて会った時は、アタシも赤ん坊だったから良く覚えていないけど……」
「シンジのやつは周りから好かれていて友達も多かったよな」
「うん、友達のジョンやベッカム、ダイアンからもお見舞いのお花が届いていたわ。また元気に外で遊ぼうって」
アスカがそこまで話した時、予鈴のチャイムが鳴り響いた。
ヒカリ達はカバンの置かれていないとある男子生徒の机に視線を送ると、困った顔でため息をつく。
「全く碇のやつ、惣流を泣かせたままにして置いてからに……」
「小さい頃からずっと一緒に居た幼馴染なんだろう?」
「私達が励ますより碇君が側に居る方がずっとアスカは元気になるって言うのに」
ヒカリ達は口々に責めるような言葉を言いながら自分達の席へと着席した。
その時教室に息を切らせて掛け込んで来た一人の男子生徒を見て、ヒカリは声を荒げる。
「碇君! 今頃になって登校してくるなんて!」
「ごめん委員長、アスカは?」
「惣流のやつ、シンジが死んだって朝からグッタリしてたから自分らが必死に励ましていた所や!」
トウジの言葉を聞いて、シンジは慌ててアスカの所へ駆け寄る。
「ごめん……いつも元気で笑顔を絶やさないアスカが、大声を上げて泣いているところを初めてみたから、どうしたらいいのか分からなくて……朝から顔を合わせられずにいたんだ」
「アタシもシンジは近いうちに死んじゃうって覚悟はしていたんだけど……空っぽになったシンジのベッドを見たら急にシンジが居なくなっちゃったって実感がわいちゃって、とても悲しくなってしまったのよ」
「碇、こういう時は胸を貸してやるんだよ」
ケンスケに言われたシンジはアスカの顔をそっと自分の胸に抱き寄せた。
アスカはまたせきを切ったように泣きはじめた。
廊下で教室の前のドアの入口から中をのぞきこんだ2−A担任教師の葛城ミサトは、出席番号1番の綾波レイを手招きして事情を聞く。
「いったい何が起こったの?」
「惣流さんの家で飼っていた犬が死んじゃって惣流さんが泣いているので、碇君が慰めているんです」
「そっか、もうしばらくそっとしてあげるか」
ミサトはそうつぶやくと、2−Aの教室を通り過ぎ、校舎をゆっくりと歩いてもう一周してから朝のホームルームを始めるために教室へ入った。
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