空の軌跡エヴァハルヒ短編集
※この話は、PerfumeさんのPuppy
loveを聴きながら勢いで作ってしまった短編です。
アスカはリビングに寝っ転がって、そんな事を言っている。
「じゃあ、ここに居ないで外に遊びに行けばいいじゃないか、委員長の家とか」
僕も不満をもらすアスカの側に居たくないから、外で気晴らしをする事を勧めたんだけど、アスカはヘリクツをこねるんだ。
今までアタシは、誰も信じる事が出来なかった。
「面白いテレビ番組もやってないから、映画でも見に行きましょうよ」
アスカにそう言われて、僕は胸がドキリとした。
「勘違いしないのよ、これは暇つぶしなんだからね」
アスカは無理やり怒っているような顔を作っているけど、その蒼い瞳は不安そうに泳いでいる。
「じゃあ、着替えてくるよ」
そんな事を言ったアスカの方が服を選ぶのに時間がかかっていて、僕より部屋から出てくるのがずいぶん遅かった。
「あれ、碇君とアスカ、もしかしてデート?」
夕方になりはじめた街の中を映画館に向かってアスカと2人で歩いていると、買い物をしていた委員長に声をかけられた。
「アタシがバカシンジとデート? そんなわけないじゃない。アタシが映画を見に行くって言ったら、ついて来たのよ。まったく邪魔で仕方が無いわ」
アスカはそう言いながら大げさに困ったと言った感じのジェスチャーをした。
「そんな意地を張っちゃって」
デートをしている事を疑いもしない委員長に、アスカは僕を指差してそんな事を言った。
アタシはまた大好きなシンジを傷つける事をしてしまった。
第二十一話 LAS短編 アスカのツンデレーション
「あーっ、退屈! せっかくの休みなのに、ちっとも面白くないわ!」
「そんな気分になれないのよね」
じゃあ、どうしろって言うのさ。
アスカはエヴァのエースパイロットだからって、僕や綾波に対していつも偉そうに見下したような態度を取ってわがままばかり。
学校ではトウジやケンスケの前で僕に文句を言って怒ってばかりいるんだ。
使徒との戦いも、エースパイロットだから僕達の助けは要らないって、いつも独断専行。
でも、弐号機がマグマの海に沈みそうになった時は僕の腕をしっかりつかんでくれたんだよね。
ネルフの大人達は、アタシを使徒と戦うための駒としてしか見てくれないと思っているから。
そう、もしかして加持さんもそうかもしれないって心の底で疑ってしまっていた。
でも、今のアタシはシンジを絶対的に信頼している。
だって、アタシを命懸けで助けてくれたから。
初号機だって、一緒にマグマの海に沈んじゃうかもしれなかったのよ?
アタシだって、自分が死んでしまうって覚悟して居たのに。
シンジのおかげで、アタシはこうして生きている。
アタシはシンジの事が好きになってしまったかもしれないけど、それを認めたくないプライドが邪魔をしてシンジに辛く当たっちゃうのよね……。
シンジに構って欲しくて、振り向いて欲しくてちょっかいをだしているんだけど、シンジにはきっと伝わっていないわね……。
これって、アスカが僕をデートに誘っているんだよね。
そんな素直になれないアスカの不器用な表情も、僕は好きになれた。
「当ったり前じゃない、アタシに恥をかかせるんじゃないわよ!」
僕はテーブルの上にミサトさん宛てにアスカと映画を一緒に見に行く事と、夕食は自分で温めて食べるようにとメモを残して、コンフォート17を出た。
「こんなやつをアタシが好きになるわけがないじゃない、やっぱり加持さんみたいに素敵な男性じゃないとね」
アスカの照れ隠しだって僕にも分かっていたけど、加持さんと比べられて僕はいい気分はしなかった。
買い物の途中だと言う委員長と別れて、僕とアスカは映画館に入った。
映画館の入口から席に着くまでの間、不機嫌だった僕はアスカとなるべく口もきかないで目も合わせようとしなかった。
でも、映画の上映が始まって辺りが暗くなって静かになった時、アスカは座席の手すりの下で僕の手を繋いできたんだ。
もう委員長が見ているわけでもないのに、他のお客さんにも見えないようにこっそりと。
映画の上映が始まってしまって、アタシはシンジを見つめる事も、声を出して謝る事も出来ない。
今、アタシがシンジに謝る事の出来る唯一の方法はシンジの手を握る事だけなの。
アタシが恐る恐る隣に座るシンジの手に向かって自分の手を伸ばすと、シンジも手を握り返してくれた。
「ごめんね」って気持ちを込めて、シンジを握る手に力を入れたり緩めたりしていると、シンジの方も優しく手を握ってくれた。
良かった、シンジはアタシの事を許してくれたみたい。
でも、アタシがシンジの事が好きだってことはシンジにしっかりと伝わっているのかしら。
アタシも不器用だし、シンジも鈍感なところもあるから……。
シンジとデートをしたいと思って、適当に選んだ映画は地球の人類が宇宙生命体と戦うホラーアクションだった。
途中で、主人公の男性がヒロインを守り切れずに殺されてしまうシーンが映し出されてアタシはショックを受けた。
アタシとシンジもエヴァのパイロットとして得体の知らない使徒と言う生物と戦っている。
いつ命を落としてもおかしくない絶望的な運命の中に居るのよ。
決めた、家に帰ったらアタシはシンジに好きって気持ちを告白しよう。
言わなくて後悔してしまうよりは絶対にマシだから。
アタシはそう決意してもう一度シンジと繋いだ手に少しだけ力を込めた。
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