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五輪とソーシャルメディア

8月14日 14時05分

佐伯敏記者

今回のオリンピックは、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアが、初めて大きな役割を果たすオリンピック「ソーシャリンピック」になるといわれてきました。
ソーシャルメディアは、オリンピックにどのような影響を与えたのか。
ロンドンで取材した佐伯敏記者が解説します。

“ソーシャリンピック”

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ロンドンオリンピックは、なぜ「ソーシャリンピック」と位置づけられたのでしょうか。
まず、ソーシャルメディアの利用者が前回の北京大会と比べて急激に増えていることがあります。
ツイッターの利用者は、2008年の時点で世界で600万人だったのが、今では1億4000万人、20倍になりました。
同じくフェイスブックは1億人だったのが9億人で9倍です。
また、ソーシャルメディアの成長を後押ししたスマートフォンやタブレット端末も、この1、2年で広く普及しました。
この結果、スポーツをこれまでになく大勢の人が、同時にさまざまな方法で視聴し、その感想などを即座に発信できる環境が、今回のロンドンオリンピックで整ったのです。

IOCも後押し

新聞・テレビを問わず、イギリスのマスコミ各社は「ソーシャリンピック」に向けて体制を強化しました。
多くのメディアが、オリンピック専用のツイッターのアカウントを開設。
BBCテレビは、テレビでの放送以外にもホームページで競技などをストリーミングし、配信時間は、北京大会を1000時間上回る合わせて2500時間に上りました。
さらに注目すべきは、国際オリンピック委員会=IOCも、積極的にソーシャルメディアの使用を後押ししたことです。
今大会で選手がツイッターやフェイスブックなどで発信した情報を見てもらう専用のサイト「アスリート・ハブ」を立ち上げたほか、ロンドンオリンピック組織委員会は競技会場の天井などに固定カメラを設置し、競技中の選手を撮影して、ツイッターで写真を随時、配信する試みを始めました。

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(ロンドンオリンピック組織委員会のツイッターから)

一方で、IOCはオリンピックの競技会場でのソーシャルメディアの使い方についてのガイドラインも示しました。
内容を見ると、会場でツイートなどをすることは認めていますが、個人的な出来事を記す日記形式に限るとしています。
また、写真は良いが動画は認めないなど、細かくルールを定めています。
これは公式スポンサー以外の企業が、宣伝目的でソーシャルメディアを使わないようにするのが主な目的だったようですが、開幕前から賛否を呼びました。

アスリートがかつてなく身近に

それでは、オリンピックはどう変わったのでしょうか。
最も大きな、そしてうれしい変化は、アスリートたちの存在がぐっと身近になったことです。
選手たちはそれぞれのソーシャルメディアのアカウントで、華やかな舞台の裏側を相次いで発信しました。
例えば、ツイッターで130万のフォロワーを持つボルト選手は、開幕からこれまでに60回ちかくツイートをしています。
チームメイトに散髪をしてもらっている様子を紹介することもあれば、200メートル決勝で金メダルを獲得したあとには「これで伝説になった」とも。

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(ボルト選手のツイッターから)

ロンドンオリンピック組織委員会が会場に備え付けた固定カメラからは、ツイッターを通じて生き生きとしたアスリートたちの表情が次々に発信されました。
ソーシャルメディアは、極限の競技に挑む選手たち自身によって吐露された、生々しい声にあふれ、その結果、過去のどのオリンピックよりも多角的な情報が発信されました。
それに競技を会場や自宅などで見た人たちのツイートなどもオリンピックの一部といえるでしょう。
ロンドン大会の、ソーシャルメディアの担当者は、開幕から折り返し地点となった5日の時点で、「オリンピック」や「ロンドン2012」などの言葉を含むツイートが1500万に上ったと発表しています。

負の側面も

一方、「ソーシャリンピック」には負の側面も散見されました。
ギリシャ代表の三段跳びの選手、パラスケヴィ・パパクリストウ選手がツイッターでギリシャのアフリカ系移民を侮辱するような発言をしたことが発覚。
オリンピック開幕直前に、参加資格を停止されました。
パパクリストウ選手のページからは問題の発言は削除され、おわびのコメントだけが残されています。
開幕後にも、スイスの男子サッカー代表、ミシェル・モルガネッラ選手がやはり人種差別的な発言で出場停止になっています。
また、大会運営に支障をきたす場面もありました。
サイクリングの競技では、沿道の観戦者による大量のツイートでGPSの信号に影響が出て、バイクで移動する中継カメラからの放送が乱れました。
予想外のトラブルに大会関係者が沿道からあまりツイートしないよう呼びかける事態となりました。

どこにいても同じ情報を同時に共有する時代

今回の「ソーシャリンピック」は何を意味するのでしょうか。
テレビ、スマートフォン、タブレット、パソコンのいずれからも競技の様子を見ることができ、競技の途中経過が刻一刻とソーシャルメディアで発信される時代。
つまり世界中の人々が同じ情報を、ほぼ同時に入手できる時代の本格的な到来だといえます。
これを象徴するような動きがアメリカでありました。
放映権をもつテレビ局、NBCが人気の競技を生放送せず、視聴率競争が激しいプライムタイムと呼ばれる時間帯にあわせて放送する対応をとったことに、インターネット上で抗議の声が広がったのです。
ソーシャルメディアがオリンピックと密接に関わったロンドン大会。
2年後、ロシアのソチで開かれる冬のオリンピックは、ロゴマークそのものがURLになっています。
これも、もちろん初めてのことです。
オリンピックのような世界的なイベントで、ソーシャルメディアの存在感、そして役割は、今後もますます大きくなっていくでしょう。