なかなかブログを更新できずに申し訳ありません。暑さもあって、体調がすぐれない日も多く、更新が滞っております。今後もこんな感じになるかとは思いますが、ファン(?)の皆様におかれましては、温かい目で(夏なので冷たい目でもいいですけど)見守ってください。(^_^;) お詫びに今日は、真夏日が続く中で涼しくなる話をご提供します。 宇宙の始まりがビッグバンであることは、現代社会ではほとんど疑われていません。ビッグバンという考えを初めて知った子供は、たいてい「じゃあ、ビッグバンより以前は、宇宙はどうなっていたの?」と質問します。当然の問いです。 すると、物理学をかじった大人は、たいてい「ビッグバンとは、時間と空間が始まった瞬間のことだ。時間もそこから始まったのだから、それより以前っていうのはないんだよ」と説明するでしょう。普通に考えれば、正しい答えのようです。 ところが、車椅子の天才物理学者として有名なスティーブン・ホーキングは、「そんなことはない。ビッグバン以前はこうなっていたんだよ」ということを示しています。それが「虚時間仮説(きょじかん・かせつ)」です。ビッグバン以前の時間は虚数だったというのです。 虚数と実数については、ここでは説明しません。詳しく知らないかたは、どうぞ勉強してください。(^_^;) ともかく虚数の「虚」とういう字から分かるように、現実的な数ではありません。 確かに、ビッグバン以前の時間を虚数と考えると、ビッグバンがどうやって生じたのかということも、数学的にはちゃんと説明できるのです。数学に詳しい人は「なるほど! うまい!」と感じる説明です。 でも、時間が虚数だなんて、どうしてもイメージが湧きません。実数の世界で生活している我々には、現実感をもって受け止められません。そういう疑問をホーキングにぶつけた学生も多かったようです。しかしホーキングは涼しい顔で、こう答えたそうです。(言葉づかいは私流にアレンジしています。述べられている思想はホーキングのものです。) 「数学で計算できれば、実数だろうが虚数だろうが関係ないよ。そもそも、時間が実在するのかどうかも分からないよ。時計が動いていることが、時間実在の証ではないでしょう? つまり、時間がどんなものかも分からない我々が、『時間が虚数であるのは変だ』という根拠などないんだよ」 ホーキングにとっては、数学で計算できるものが「真」であって、それ以外はどうでもいいことなんです。確かに科学(物理学)というものは、数学を駆使して自然界の仕組みを説明します。数学で説明していない科学論文なんて、誰も認めません。 ホーキングのような思想の人を「実証主義者」といいます。実証とは、数式と実験データが一致することです。実証主義者は、実証できさえすれば、それが実在しているかどうかさえ問わないのです。 極端だなあ、と感じるでしょうが、これは実に奥が深い哲学的な問題を秘めています。詳しく語りませんが、例えば「皆さんの目の前にあるリンゴが実在することを実験で証明してください」と言われたら、どうでしょうか? 結論から言えば、証明できないのです。むろん、反証もできません。証明も否定もできないということです。 だからホーキングのような実証主義者たちは、数式と実験データが一致することだけを判断基準にしているのです。時間が実在するかどうか、リンゴが実在するかどうか、ということは問わないのです。 そういう立場を貫いていくと、宇宙の始まりの前にも世界があって、そこの時間は虚数だと考えたら良いという結論を得たということです。ビッグバンが起きた数学的な説明もできるし、ビッグバン後の宇宙の動向も説明できる、実験データとも合う。実証主義者にとって、これで十分なのです。 しかし、時間が実在するかどうかも分からない、リンゴ(を含む私たちの物質世界、私たちの身体など)も実在するかどうかも分からない、というのは気味が悪いですね。背筋がゾッとします。 夏の怪談話でした。(^_^;) |
<< 前記事(2012/07/08) | ブログのトップへ | 後記事(2012/08/09) >> |
タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
---|
内 容 | ニックネーム/日時 |
---|---|
う〜ん、何だか深く考えるほど奇妙な話です。 |
光太朗 2012/08/05 09:13 |
自分の存在を自分が証明できないというのは、そら恐ろしいですね。だからこそ、親なる神から与えられる召命観が大切になるのかもしれません。 |
大久保直也 2012/08/06 00:52 |
●光太朗さん |
小林浩 2012/08/06 06:08 |
実数と虚数の関係は、表と裏や光と陰のような、言わば明在系と暗在系の概念に通じるのかと思います。 |
光太朗 2012/08/07 01:26 |
<< 前記事(2012/07/08) | ブログのトップへ | 後記事(2012/08/09) >> |