2011-07-19
震災ヘドロも除去できて、体にも良い『EM菌』の真実
ヘドロの除去に活躍するEM菌
3.11の震災以降、津波によるヘドロの除去やプールの清掃にEM菌が大活躍しています。EM菌を散布した田畑は、他の田畑と比べてヘドロの分解がとても早く、ドジョウ等の生物が生息できるようにまで改善したようです。
そんなEM菌だが、ニュースに取り上げられるなどして再び脚光を浴び、ある問題が再び露呈されました。
そもそもEM菌とは？
ネットで調べるとしても、EM菌について解説しているサイトは非常に多いのですが、EM菌は科学的に論証されているわけではない擬似科学なので、一番信頼できるサイトだっとしても『有用微生物群 - Wikipedia』しかありません。
Wikipediaから引用すると、こう書かれています。
自然界にある（乳酸菌群、酵母群、光合成細菌群から嫌気、微好気の複数の 有用な微生物を集め培養し、液中に複合共生させた資材。また、悪玉菌や遺 伝子組替技術によって作出された微生物は使用していない。商品として EM1、EMW、EMX-GOLD（飲用）、EMセラミックスなどがある。 微生物環境（微生物相）では、酸素の多い現在の大気中において、酸素を 使って有機物を分解する（酸化）微生物の勢力の方が強い。この酸化分解は、ほとんどの場合、腐敗、腐蝕という環境悪化を招いている。そこへ抗酸 化力の強い有用な微生物群（EM）を投入することで、発酵、蘇生など生分解 型の善循環へ変化させることができるとされる。
つまり、人間の体に良い善玉菌で、かつ酸素を必要としない菌だけを集めて、まとめてEM菌と呼んでいるようです。
飲むEM菌飲料の存在
AmazonでEM菌飲料と検索をかけると、ペットボトルに入った飲むことができるEM菌飲料を見ることが出来ます。その商品ページから一部抜粋すると
健康飲料「EMXゴールド」は私たちが昔から食してきた味噌・醤油などの 微生物の発酵を利用した発酵飲料で、製造には最新のEM技術が導入されてい ます。 自然力の原点であるEMが、発酵の力で生み出した酵素を低分子化し て吸収しやすくしたものです。 各種原材料をEM(有用微生物群)で発酵さ せ、発酵物を抽出する製造技術の基本コンセプトは継承し、最新の研究成果 に基づくEM技術が導入されて製造されたEMXのニューバージョンの製品で す。
と書いています。
3.11の震災以降、ある理由でEM菌飲料を飲み始めている人が急増しています。それが「放射能」です。なにやら、EM菌飲料には放射能を除去する働きがあるそうなのです。もちろんデマなのですが、それでとんでもないことになっているそうです。
SYNODOS JOURNAL : あやしい放射能対策 片瀬久美子
このサイトによると、「米のとぎ汁乳酸菌」によって、手作りで放射能を除去するEM菌を作ることができるそうなのです。しかし、それを使って顔に直接吹きつけたことにより、目が充血し目やにが大量にでてしまった事例が紹介されています。また、Twitter上では子どもに飲ませている母親もいるらしいとのこと。この米のとぎ汁乳酸菌を開発した人は驚異の米のとぎ汁乳酸菌培養！ 〜お金をかけずに放射性物質対策〜 Ｂあや ちぇんそーぐるいによると、飯山一郎氏がそうであるようです。
このように、「EM菌が放射能の除去に良い」というイメージが、雑誌などのメディアや放射線の害を警告する活動をしている一部の団体などから広まりつつあるそうなのです。しかし、EM菌に含まれる光合成細菌によって電磁波のひとつである放射線を吸収すると言えば、否定できなくもないのですが、だからといって放射性物質自体を除去することにはなりません。体内で放射線が出たらEM菌がそれを餌にして成長するの繰り返しで、体内で放射線が出たらもう遅いのです。なので、どっちみち「EM菌による放射能の除去」ということは不可能なことで、明らかなデマになります。
ましてや、EM菌が体内に取り込まれたら体内の細胞を傷つけないとは言えません。それどころか体内で増え続け『感染症』の状態になりかねず、体内に取り込むことは非常に危険なことです。そんな危険なEM菌飲料がなぜAmazonで売られているのでしょうか。
EM菌飲料の正体
健康飲料EMXゴールドの商品説明をよく呼んでみてください。「私たちが昔から食してきた味噌・醤油などの微生物の発酵を利用した発酵飲料」と書かれています。味噌・醤油に含まれる菌は麹菌と言い、好気性の菌なのです。EM菌は主に嫌気性の菌が使われているので、全く異なる菌を使っているということになります。それどころか、EM菌に含まれているはずの光合成菌がAmazonで売られているEM菌飲料では確認することができません。
つまり、EM菌飲料はただの冷たい味噌汁、しょうゆを薄めた物とほぼ同じものであることがわかります。
EM菌の真実
健康食品や環境改善に使われるEM菌。そのEM菌の真実は、都合によって菌の種類を変え、効果があると謳うだけの商売文句に過ぎなかったのです。ヨーグルトもEM菌と言ってしまえばEM菌になりえるし、味噌汁や納豆だってEM菌と言ってしまえばEM菌になる。バイオ生ごみ処理機に使われている菌だってEM菌と言ってしまえばEM菌になる。目的によって、配合される菌が異なるような、そんなものを総称してEM菌と言ってしまっていいのでしょうか。それによって飲料目的か、環境改善目的か変わってしまう。
ただ、Wikipediaに書いている通り光合成細菌も含まれているものが本当のEM菌であり、それ以外はただの発酵菌なのです。この点に関しても、EM菌がただの売り文句になってしまっているという現状を表していることになるだろう。
EM菌の河川流入は水質汚濁の原因？
EM菌をヘドロの多い河川に流入することによって、ヘドロがだんだんとなくなり水質汚濁を改善する効果が見られるそうです。しかし、溶けたヘドロが下流へと流れ、その課程で魚が死滅してしまった原因にもなったそうです。なので、福島県では、河川への流入に関する見解をだしています。
しかし、EM菌と言われているものはどんな菌でもEM菌と呼べる実態があるため、使用する菌によってどのような魚にどんな悪影響があるのかは不明なため、実際全てのEM菌がこのように悪影響を及ぼすのかは定かではない。しかし、EM菌によって河川のPHバランスが変わったことによる環境変化が原因という事も考えられます。
河川への流入は、そこに生態系が存在しており、何らかの魚などが死滅する可能性があるのであればやらないほうがいいと思います。
最後に
納豆菌で水質汚濁が改善したニュースが以前流れたことがあります。
納豆菌が水質浄化！丸紅がアジア新興国に向けて拡販へ | 世界の水事情
更に納豆菌も、EM菌であると紹介しているところもあります。
もちろん、納豆菌が光合成細菌なわけがない。ヘドロ除去として大変有用性のあるEM菌ではありますが、飲用にするのであれば、そんなあやしいEM菌飲料など飲まず、ヨーグルトや納豆、味噌汁等発酵食品を食べたほうがよっぽど早いと思います。
追記：EM菌の解説について疑ったほうがいいサイト＆参考にしてほしいサイト
疑ったほうが良いサイト
- EMって何？ - イーエムテックフクダ
- 豊橋市 マサキクリーニング（こんなにスゴイＥＭ菌）
- 甦れ！食と健康と地球環境
- EM菌飲用による体へのアクション−モコモコの美追求塾
- のじさんの徒然草 - Yahoo!ブログ