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2012年8月12日23時32分

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いじめている君へ

《いじめている君へ》小島慶子さん

写真:小島慶子さん拡大小島慶子さん

■濁った心を書いてみて

 私は、周(まわ)りの人との距離(きょり)の取り方がわからない子どもでした。いじめたことも、いじめられたこともあります。

 後になって思えば、幼稚園で友だちをいじめたときは、家族や先生にいらだっていた。そのはけ口として、いじめていたんだと思う。でも、そんなの言い訳にならない。40歳の今も、とても後悔(こうかい)しています。

 今の君の、人をいじめたいっていう気持ちは何なんだろう。そういうドロドロと濁(にご)った感情を持つことは誰(だれ)にだってある。でも、それに流されちゃいけない。君がどんなつもりでも、いじめは犯罪なんだ。

 まず、君がいじめる理由を知ろう。ノートに書こう。誰にも見せなくていいから。Aさんの何が嫌(きら)い? 率直(そっちょく)に書いて。例えば「服が嫌い。変だから。話し方がむかつく。面白くないから」って。

 次に、君がAさんにどんなことをするのかを書く。「靴(くつ)を隠(かく)す。給食に消しゴムのカスを入れる」とか。そのときどんな気持ちがしたのかも。「靴を捜(さが)す様子が面白かった。消しゴム入りの給食を食べたとき、ざまあみろと思った」って。

 それを書いている君は今、濁った感情の池から出ようとしているんだ。

 今度は自分が望んでいることも書いてみよう。「Bさんみたいな人気者になりたい」「お母さんに甘えたい」「お父さんは殴らないでほしい」とか。

 恥(は)ずかしくても苦しくても、書くんだ。書きながら、きっと君は自分が卑劣(ひれつ)だって気づくだろう。そう、君は卑劣だ。Aさんに謝らなくちゃならない。そしてそれと向き合う力は、君を最低なやつから、考える人に変える力なんだよ。(こじま・けいこ=エッセイスト)

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