社説:竹島問題 深いトゲをどう抜く
毎日新聞 2012年08月12日 02時32分
日本と韓国が領有権を主張している竹島(韓国名・独島)に李明博(イ・ミョンバク)韓国大統領が上陸し、実効支配をアピールした。なぜ今、大統領が先頭に立って日韓関係に無用な波風を立てるのか。理解に苦しむ。
竹島は、1905年の閣議決定で島根県に編入された。これに対し韓国は52年、海洋主権宣言を行って一方的に公海上に線引きをし、竹島を内側に組み入れた。その後は沿岸警備隊を常駐させ、ヘリポート、接岸施設を建設するなど、実効支配を続けて今日に至っている。
その一方、国家元首である歴代大統領は、これまで竹島上陸を避けてきた。深刻な外交摩擦を生じさせないため、一定の配慮が働いていたともいえる。それだけに、今回の上陸は竹島をめぐる日韓の対立構図を一変させる、新たな挑発的行為と受け取られても仕方がない。
日本政府が、武藤正敏駐韓大使の一時帰国などの対抗措置をとったのは当然だ。日韓関係は当分、冷却期間が続くことになろう。
韓国では年末に大統領選が予定され、李大統領の任期はまもなく終わる。政権末期で支持率低迷にあえぐ大統領が、世論の矛先をかわすために対日強硬カードを切った、という見方が出ている。だが、実効支配をしている側の韓国がそれをことさら誇示することは、竹島問題に関心の薄かった人も含め、日本の世論の反発を強めるだけである。