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■話題の市長に会って参りました・・・
友人の紹介で、佐賀県武雄市の樋渡啓祐市長にお会いする機会があり、先日インタビューすることができたので、今回はぜひみなさんに樋渡市長の生の声をこの場を借りてご紹介したいと思う。
樋渡市長は、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社、以下CCC)に市営図書館の運営を委託するとか、図書館の書籍を読むとTSUTAYAポイントを付与するなど、斬新な市政を打ち出して、何かと話題の多い市長。
昨年9月には武雄市で「第一回日本Facebook学会&日本Twitter学会総会および講習会」を実施し、津田大介氏や林信行氏など特別ゲストも迎え、全国から300人以上の参加者、当日の模様を映像で見た人を入れれば1000人を超す参加者で賑わった。
その斬新な活動ゆえ批判する声も多く、ネット上の声を拾うだけでは、樋渡市長の真意は見えてこない。今回は、CM・映像ディレクターで映像作家の新井博子氏の運営する表現者の映像アーカイブ「interviewers(インタビュワーズ)」との共同取材となった関係もあり、都合約2時間近くに渡って話を伺う事が出来た。
話題は、樋渡市長が幼少のころから政治に関心があったというあたりから、大学に進学し総務省に入行した時代の話、回りまわって武雄市長になったことや市民病院の民営化の大騒動(このあたりまでは市長が書かれた「首長パンチ(講談社)」にもかなり詳しく書かれている)、そしてここ1年のツイッターやフェイスブックなどを活用した動きから図書館のCCCへの運営委託の話まで、ほぼすべてのことをお話いただくことが出来た。(映像版インタビューも後日サイトにアップされるそうなのでそちらのほうもご覧ください。リンク後述)ご本人も久々に自由に話が出来たととても上機嫌でいらした。
紙面の都合および皆さまを私の不慣れな文章で退屈させないためにも、ここでの紹介は、その中でも特にここ1年の市長の活動に絞って紹介したいと思う。
また、樋渡市長の発言内容については、私なりに意図を汲んで文章化していることをご容赦いただきたい。樋渡市長の真意は正しく伝わっていると確信している。
佐賀県武雄温泉駅
■佐賀県武雄市とは・・・
現在の武雄市について簡単にまとめておきたいと思う。ホームページ等の情報によれば、人口は、約5.1万人(男性2.4万人、女性2.7万人)で約1.7万世帯(平成22年9月)。全総生産は年間約1620億円(平成19年)で、サービス業26.5%、製造17.6%、金融・保険業・不動産業16.1%の2事業で全体の6割を越える。温泉は現在、大分・由布院、熊本・杖立と合わせて「三湯物語」として話題を振りまいている。また1950年から続く競輪事業も重要な市政財源のひとつ。文化事業としては、有田や伊万里などと隣接することもあって、武雄自体もやきものが盛んで、市内に90以上の陶器や磁器の窯元がある。武雄市のキャッチコピーは「温泉とやきもののまち」である。
そんな「温泉とやきもののまち」がなぜ市政にITを積極的に取り入れるようになったかというかあたりからインタビューを紹介する。(7月31日(火)9時〜11時:佐賀県武雄市・市役所応接室にて)
■流行りものに飛びつく・・・
佐賀県武雄市・樋渡啓祐市長
ツイッターをやろうとおもったきっかけは?
はやりだったから。はやるということは必ず理由があると思います。うまくいっている理由を理解するためにもなります。
自分でもはまったようですが・・・
あの独特のライブ感、オープンであるということにはまりました。当時意見の質も高かった。意見の流通に自由が担保されていることが良いと思います。
市長が言われる「市民に選択の幅を増やす」ということですね。
ツイッターが市民への表現手段・伝達手段のひとつとして、市民に選択の幅を増やすことができます。これが僕の言う「選択の自由」ということ。テレビや新聞では伝えきれない情報が伝えられ、そしてその反応をくまなく吸収できる。行政の世界では、市民を始めとする様々な情報を持たない限り勝者にはなれません。いかに情報を多く持てるか、いかに多くの情報を市民に伝えられるか。それが行政の役割であると思っています。
ツイッターからリアルな人との結びつきも生まれた・・・。
そうです、みなさんとつながったのもツイッターからです。これはBlogではできないことだと思います。
樋渡さんがツイッターが大好きだったからこうなったということでしょうか。
自分が好きになるものは、みんなも好きに決まっているというのが僕の心情です。だから職員390人全員にツイッターアカウントを登録させました。しかし僕がやることはここまで。あとの使い道はそれぞれの職員に考えてもらいました。
職員たちは何を始めましたか?
自由な喜びを体感しようと、各々発言を始めました。そして講習会をやろうとなったわけです。それがツイッター学会に発展しました。
なぜツイッター学会だったんでしょうか?
お笑いですかね笑・・・。ニュースになるんじゃないかという狙いもありました。「学会」を調べると、認証など必要ない、言ったもん勝ちだとわかったので名乗ることにしました。
町のいたるところにあるfacebookと連動するお店のポスター
■武雄を日本のダボスに・・・
その学会の立ち上げ式(講習会)に300人以上の人が詰めかけたそうですね。
田舎でもこんなに人を集められるんだと実感しました。新聞等では小さくしか告知が出ていなかったにもかかわらず・・。北海道からもわざわざいらした・・・。ソーシャルネットワークの力も感じました。コンテンツが良い、良さそうだと思えれば人は集まる、飛びつくことが実証されました。
これからツイッター学会(フェイスブック学会)で何をしたいと思っている?
日本のダボスを目指したい。ダボスだって辺鄙な場所。でもダボス会議で何千人もの人が全世界から集まってきます。武雄にもそういった「知」を求める人々が集まって欲しいんです。
武雄市は観光地、温泉地で人が呼べるのでは?
ありふれた観光地や温泉地のままでは難しい。そこに「知」の拠点が作れれば、必ず人が惹きつけられる。ツイッター学会、フェスブック学会、CCCが運営する市立図書館、どれも知の拠点を支えるためのものなんです。民営化された素晴らしい病院だってそうです。
元々温泉は目的ではなくて手段であるべきだと思っています。ただ単に温泉に行くのではなくて、温泉に行って何をするのかを作らなければならない。全国の名湯100の中からオンリーワンとして武雄温泉を選んでもらうのはなかなか難しい。でも別のオンリーワンで武雄に来てみたら、温泉もあったとなったときこそ、温泉がプラスアルファとしてさらなる効果を発揮できるわけです。
別のオンリーワンとは「知」なんですね。
「知」しかない。こんな知恵や知識が得られる。或いはここに来たらこんな人に会える。東京が強いのはそこじゃないですか。短時間でたくさんの人に会える。その魅力を武雄に持ってくる。起業家に会えるなどなど。
若い人達に起業する拠点にもしてもらおうと・・
そうです、武雄はこういった「知」の拠点づくりで、ホッテントット時代からネアンデルタール時代にようやくなってきたんです。ここから北京原人時代にまで進化するときが一番市政が楽しくなると思っているわけです。笑。
■勝ち馬に乗る・・・
知の拠点作りのために民間と組むことが大事だと・・。
いままさにおもしろい人達が続々と移り住み始めています。それに加速度をかけていこうと思っているわけです。移り住みやすいように「シェアハウス」なども立ち上げようと思っています。そして新たなビジネスを産んでもらうわけです。
組んだ結果を示すことで人はさらに集まると・・。
失敗したら失敗したでそれもありだと思っています。いろいろな対等な無限の組み方があることを示すことが大事だと思ってます。そしてうまくいってる組み方にまた人は集まっていきます。
ホームページをフェイスブックに置換えようという発想はどこからきたんでしょう?
それは資源の集中と考えています。弱小自治体なのでホームページもやってツイッターもやってフェイスブックもやるなんて不可能な話です。資源を集中投下させようと思うのは市の経営者としてはあたりまえの発想。そのとき何に集中させるかを決めるかが腕の見せ所だったわけです。
武雄市役所内にあるつながる部facebook city課
それでフェイスブックに集中させようとなった・・・。
勝ち馬に乗ったってことです。それが組み方の基本だと思ってます。元々日本のサービスでも何でも良かった。しかしこれからの時代、匿名性の許されるものはだめだと思っていた。例えばツイッターやミクシィなど。匿名性があることがかえって自由度を奪ってしまう。
フェイスブックは運営は保証されず、勝手に止まったりするのでは?
一般のホームページや紙やデータでも残しているので、その都度対応できるようにしています。一時的に消えても問題ない情報しかフェイスブックには流していません。
フェイスブックではなくて、市独自のSNSを立ち上げることは考えなかったのでしょうか?それで市の意図に反した意見など書かれる心配もなくなるのでは?
資源の集中を考えれば、独自で立ち上げるほど予算はなかった。また市の意見に反したことが書かれるからこそやる意義があると思っています。そして何よりも使っていて楽しい。そういうものは、いろいろ探してもフェイスブックしか見当たらなかったわけです。
■知の拠点を作るために・・・
一方、図書館は民間化する考えはなかったのでしょうか?
武雄市営図書館
図書館法で各自治体に1つ以上、運営主体は自治体でなければならないと決まっています。なので病院のように民間移譲はそもそもできなかった。しかし、平成15年に制定された「指定管理者制度」で、運営を民間に委託することはできるようになったので、CCCに運営委託をすることに決めたわけです。
指定管理者制度に則ってないのではないかと言われていますが・・。
まったく事実無根です。
だったらなぜこんなに図書館の運営委託を民間にすることが問題になっているのでしょうか?
個人情報がイデオロギーになっていて、個人情報過保護を唱える人たちの集団がいます。彼らが異議を唱えているから問題があるように見えるわけです。
個人情報は大事だがここまで過保護にする必要はないということでしょうか?
個人情報は個人のもの。出すか出さないかは本人が決めれば良い。文句を言ってる人たちが異議を唱えてることは、個人情報保護法ではなくて、憲法第13条の幸福追求権の問題になっていると思います。個人としてどこまでプライバシーを持ち得るかと問われれば、それは十分尊重しています。にもかかわらず、幸福追求権問題を個人情報で輪切りにするような(にすり返るような)発言は認めません。
悪意を持って個人情報を利用しているサービスも中にはあると言っているだけでは?
もちろんそういうものが存在することは認めますが、CCCがその悪意ある会社だとは全く思いません。そこを十把一絡げに悪いとか言うのは乱暴な話だと思います。
しかし問題は大きくしないほうが良いのでは?
これまでの政治家は問題が出てきたときに消そうとするが、僕は火炎瓶を投げ込む派です。地方で火柱を上がることがめずらしいし、どうせなら成層圏まで突き抜けさせたいと思っている。その上で何が一番市民の幸福の追求になるのか、福祉の向上になるかを考えれば良いと思っています。
樋渡さんはITの最先端を意識して採り入れているように見えますが・・
流行りものに飛びつくことが大切なんです。個人的にはITの最先端など興味はないですが、流行っているものには流行る理由が必ずある。勝っている、すなわち勝ち馬に乗る、それが武雄の知名度を上げる。それも一番乗りがいい。一番乗りしかニュースにならないですからね。
最後に、時代にかわいがられていると言われていますが、どうお感じになりますか?
すごく感じています。自分が旬だと思う一方、いつか終りが来るとも、橋下市長とも話をしています。でもそのときまではとにかく踊ろうと。風が吹いている間は、魂込めをして踊り続けようということです笑。
ありがとうございました。
市の天然記念物の武雄の大楠
■市政にイベントで人を巻き込む・・・
樋渡市長は全体を通じて、とにかく武雄市を元気にするためには「知名度」が絶対必要だと語っている。知られているからルイビトンだし、青山といえるのだと言われた。外部の優秀な人材を起用するのも、結果を良くすることだけでなく、彼ら優秀な人材に武雄を知ってもらうことが何より大事なのだ。
僭越ながら、私もひとつ共通の思いがこみ上げてきた。メディア業界の話なので市政とはもちろん次元の違うことかもしれないが、テレビ全盛の時代で弱小メディアのラジオをどう盛り上げていくか。その一つに「イベントラジオ」というキーワードがあった。
とにかく人を巻き込む。ラジオを知ってもらう、ラジオの楽しさを知ってもらう、そのためには一緒に体験してもらわなければ始まらない。それを徹底した80年代のニッポン放送は「10回クイズ」や「恐怖のヤッちゃん」「ヒランヤ」などなどメディアの雄を極めた。
武雄市を盛り上げること、それは知名度を上げることであり、知名度を上げるためには、市に「知」の拠点作りを徹底すること。これからの武雄市、そして樋渡市長の活動をぜひ支援していきたい。
■参考リンク
-
佐賀県武雄市
http://www.city.takeo.lg.jp/
http://www.facebook.com/takeocity -
武雄市長物語
-
(書籍)首長パンチ 樋渡 啓祐(講談社刊)
-
interviewers(今回のインタビュー動画をアップするサイト)
http://interviewers.jp/
https://www.facebook.com/interviewers
■樋渡 啓祐(ひわたし けいすけ)
1969年(昭和44年)、佐賀県武雄市朝日町生まれ。
1993年(平成05年)、東京大学経済学部卒業後、総務庁人事局に入庁。内閣府参事官補佐などを歴任。
2005年(平成17年)、総務省を退職し、翌年、新設合併後初の武雄市長選挙に立候補当選、最年少市長
2006年(平成18年)、テレビドラマ「佐賀のがばいばあちゃん」のロケを誘致。
2008年(平成20年)、自治体病院の経営形態を巡る対立から市長リコール、辞職。出直し選挙で再選。
2010年(平成22年)、武雄市民病院を民間移譲。同年、武雄市長に再選(2期目)
同年8月19日に「日本Twitter学会」設立、市職員390人がアカウントを取得
2011年(平成23年)、東北地方太平洋沖地震の発生に伴い「被災者支援課」を設置。
同年、市公式ホームページをFacebookに完全移行。
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