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韓国の李明博(イミョンバク)大統領が、竹島(韓国名・独島(トクト))を訪問した。ヘリで上陸し、約1時間滞在したという。
竹島は日韓双方が領有権を主張している島である。現在は韓国が宿舎や監視所を設置して警備隊員を常駐させ、島を実効支配している。
日韓関係への配慮から、韓国はこれまで、大統領の竹島訪問を慎重に避けてきた。知日派として知られる李大統領が、日韓関係を台無しにすることを承知で、あえて竹島上陸を強行したのはなぜか。竹島上陸は韓国の立場からみても得策とはいえない。
日本政府は、その日のうちに武藤正敏駐韓国大使を帰国させた。事実上の「召還」措置である。国際司法裁判所(オランダ・ハーグ)への提訴も検討中だ。要するに李大統領は、自らの短慮によって、竹島が領有権問題をめぐる紛争地であることを国際社会にアナウンスしたことになる。
李大統領は来年2月に任期切れを迎える。実兄や側近が不正資金事件で逮捕され、政権与党の中でも急速に求心力を失いつつあるといわれている。日本国内では「威信回復を狙った上陸」との見方が有力だ。
しかし、それだけとは思えない。李大統領は竹島訪問に先立って、同島から約90キロ離れた鬱陸島(ウルルンド)を訪問し、住民らと昼食を共にした際、「従軍慰安婦問題を提起したのに、日本はまだ心からの謝罪表明をしていない。残念だ」と日本の対応を批判したという。
李大統領の竹島訪問には、慰安婦問題の解決を迫る意思表示という側面もあったのではないか。
韓国の憲法裁判所は2011年8月、慰安婦問題で韓国政府が日本側と個人請求権をめぐる交渉をしないのは基本権の侵害にあたる、と違憲の判断を示した。この判決を契機に韓国では、慰安婦問題が再燃し、日本大使館前で抗議行動が続いている。
11年12月、京都で開かれた日韓首脳会談で、李大統領は初めて慰安婦問題を取り上げ、「優先的解決」を求めた。
1965年の国交正常化の際、請求権協定を交わしており、法的には解決済み、というのが政府の公式見解である。李大統領がいら立ちを募らせていたのは間違いない。
竹島が閣議決定によって島根県に編入されたのは1905年。この年に日本政府はソウルに統監府を置き、いわゆる統監政治を始める。日本政府による竹島編入と、日本による朝鮮半島植民地化の動きが、韓国の人々にとっては、重なって見えるのだという。
韓国にとって竹島問題が「歴史問題」としての性格を帯びるのは、このような歴史的背景があるからだ。竹島問題と慰安婦問題は、「歴史問題」というキーワードを通してつながっている
8月15日は、韓国にとって、日本の植民地支配からの解放を祝う「光復節」にあたる。時あたかも、日本の国内政治は、消費増税政局に没頭し外の動きが見えない状態。政府は足元を見られたのである。対抗措置だけでなく、日本外交の敗北を真摯(しんし)に反省する姿勢が求められる。