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【社説】

大統領竹島訪問 日韓の未来志向壊した

 韓国の李明博大統領が島根県竹島(韓国名・独島)を訪問した。日韓両国は竹島の領有権を主張しながらも、決定的な対立は避けてきた。李大統領の訪問は日韓の協力関係を台無しにしかねない。

 李大統領は就任以来、日本の植民地支配など歴史問題の追及は抑え、未来志向の日韓関係を訴えてきた。

 日韓併合百年にあたる二〇一〇年八月には当時の菅直人首相の談話に対し、李大統領が「日本の一歩前進した努力だと評価する」と明言した。宮内庁が保管する李朝時代の文化財が引き渡された。ところが昨年から韓国人元従軍慰安婦への補償が不十分だと批判するようになった。

 李大統領の残る任期は半年。しかも実兄を含む側近が収賄や不正政治資金授受で訴追され、支持率は急落している。一方で、竹島領有では与野党を問わず世論も強硬姿勢を支持する。大統領には領土問題で「愛国心」を鼓舞して、政権の求心力を回復させる狙いがあったとみられる。

 日本は領土問題に敏感にさせられている。ロシアのメドベージェフ首相が大統領時代も含めて北方領土を訪問し、中国が尖閣諸島に対する強硬姿勢を強めているからだ。こういう時期に、韓国の歴代大統領が自制してきた竹島上陸を、李大統領が強行したのは日韓関係を大きく損なうものだ。任期の大半は良好な関係を築いてきただけに、失望感は深い。年末の大統領選でも竹島訪問が争点になろう。反日感情の拡大が心配だ。

 日本政府は駐韓大使を一時帰国させたが、併せて竹島は歴史的にも国際法上も固有の領土だと各国に訴える必要がある。竹島が日韓両国の「紛争地域」だという認識が国際社会に広まれば、交渉を拒否したまま実効支配を既成事実にしようとする韓国にとって、マイナスに作用しよう。

 しかし、国民感情の悪化、不毛な対立だけは避けたい。七年前、やはり竹島をめぐって対立したとき、韓国側は文化やスポーツ交流を相次いで取りやめたが、今回は日韓双方とも民間交流には影響させない冷静さを保ちたい。

 日韓関係の修復は韓国の次期政権に持ち越されよう。署名寸前で棚上げになった軍事機密を含む情報保護協定など、北朝鮮情勢に備えた防衛協力という新しい課題もある。日本と韓国は歴史を踏まえつつ、市場経済と安全保障の両面で協力を深めていく努力が必要だと再確認したい。

 

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