『僕のアスカ。太陽のような君。』
リベール王国来訪編(FC)

第十話 解放された輝く環


《王都グランセル 西区画 グランセル港》

静かな港で、ボクとアスカとミサトさんと加持さんの四人と、ロボット兵器の手のひらに乗っているレンとその後ろに居る特務兵達と特務兵の戦車がにらみ合っている。
その静寂を破ったのは勝ち誇ったレンの声だった。

「このパテル=マテルはね、ママのように優しくレンを包み込んでくれてパパのように力強いのよ! 本当のママとパパなんて要らないわ!」

レンの言葉を聞いて、アスカは怒りを抑えきれないで呟いている。

「ロボットをパパとママだと思いこむ事でしか自分の傷ついた心をいやす事が出来ないなんて……悲しすぎるわ」

そんな様子のアスカをレンはせせら笑った。

「こっちには特務兵の戦車までいるのよ、バカな抵抗は止めたらどうかしら」

ボクはこの状況に歯ぎしりした。
これじゃあ、突破できないじゃないか……。

「ほら特務兵のみんな、アスカ達をやっつけちゃいなさい!」

ボクはアスカだけは守ろうと、ATフィールドを張るために精神を集中させようとした。
でも、予想もしなかった事にボクは驚いてしまったんだ。

「きゃあ、何するのよ!」

特務兵の戦車砲が大きな音を上げて打ったのはレンの乗っているロボット、パテル=マテルだった。
背後から不意をつかれたパテル=マテルは衝撃を受けてレンを地面に落した。

「オーホッホッホ、よくも今まで私達を利用してくれたわね」

そう言って高笑いをして戦車から顔を出したのは情報部特務部隊の副隊長のカノーネさんだった。

「何よカノーネ、私達結社を裏切る気なの?」

地面に落ちたレンは一瞬驚いた顔になったが、すぐに振り返ってカノーネさんをにらみつけた。

「裏切りとはお笑い草ね、リシャール様に汚名を着せる事は許せません!」
「ふん、リシャール大佐は自分でクーデターを起こしたんじゃない」
「フン、全てあんたの所の教授の企みじゃないの。リシャール様の心の闇を利用してね!」

ボクは二人の言い争いを聞いて驚いた。
立派な軍人として知られるリシャールさんにも暗い心の部分があったんだね。
そして、リシャールさんは昔のヨシュアみたいにアルバ教授によってそこをつけ込まれてしまった……。

「ここで結社の幹部を倒せば、女王様もきっとリシャール様の罪を許して下さる! 撃ちまくりなさい!」

カノーネさんがそう号令を下すと、戦車をはじめとして特務兵達は一斉射撃を始めた。
パテル=マテルはレンをかばって砲弾の前に立ちふさがった。
爆発と煙が上がり、次々とはがれ落ちて行くパテル=マテルの装甲。

「や、やめて……! このままじゃパテル=マテルが壊れちゃう!」

レンは泣きそうな顔で必死に特務兵達に向かって呼びかける。
でも、なかなか砲撃は止まらなかった。
砲撃が止んで視界が晴れると、そこにはコアがむき出しになったパテル=マテルに守られるレンの姿が見えた。

「フフ、もう一息ね。あのコアを破壊してしまえばあの物騒な機動兵器を完全に破壊することが出来るわ、やってしまいなさい!」

カノーネさんの命令で特務兵達は武器を構える。

「止めて!」

アスカはそう叫んで駆け出して、パテル=マテルとレンをかばうように立ちふさがった。
ボクもミサトさんや加持さんと一緒にアスカの側にかけつけた。

「もうこの子達には戦う力は無いわ!」
「邪魔よ、そこをどきなさい!」

アスカとカノーネさんが言い争う姿をレンは驚いた様子で眺めている。

「カノーネ、結社の幹部を無力化すると言う貴方達の任務は完了したはず。すぐに攻撃を停止して、リシャール大佐の援軍に向かいなさい」
「ミサト、貴方まで何を言い出すの!?」

特務部隊の指揮官の一人であるミサトがそう命令を下すと、特務兵達も混乱してざわつきだした。

「レンの今のパパとママを壊さないでください、お願いします……」

アスカがそう言って特務兵達に向かって頭を下げると、辺りは静まり返った。
そして視線がカノーネさんに集中する。

「わ、分かったわよ……」

カノーネさんがそう言って引き下がると、ボク達の間にホッとした空気が流れた。

「じゃあ、その幹部の子はこちらで保護するから引き渡しなさい」

溜息をついてカノーネさんがそういうと、レンは突然アスカに抱きついた。

「いやっ、レンはアスカお姉ちゃんについて行く!」
「レン?」
「だって、パパもママも、カノーネも、うそつきな大人達なんて大っきらい! 優しくしてくれたのはアスカお姉ちゃんだけなんだから!」

レンがそう叫ぶと、カノーネさんは苦い表情でレンをにらみつけた。
そんなカノーネさんに向かってミサトさんが愛想笑いを浮かべて話しかける。

「まあまあ、ここはあたし達に任せて」
「くっ、何かあったら貴方の責任ですからね!」

カノーネさんはそう吐き捨てた。

「おいミサト、急がないとやばいぞ」

加持さんにそう声をかけられたミサトさんはボク達を先導するように走りだした。
ボクとアスカはレンの手を取って後について駆け出していく。
その後ろをダメージを受けたパテル=マテルがついて来る。
ボク達はミサトさん達と一緒に待っていた船に乗り込んだ……。

 

《ヴァレリア湖沿岸 秘密の研究所》

アタシ達が連れて来られたのは、以前に見た事のあるような場所……ネルフの発令所のようなところだった。

「もしかして……ボク達にまたエヴァに乗れって言うの?」
「……そうなのよ、ごめんねアスカ、シンジ君」

そう言ってアタシ達の前に姿を現したのはリツコだった。

「ミサトさん達はボク達をまたエヴァに乗せるために優しいフリをしたんだ……」
「シンジ君、私達の話を聞いて!」

ミサトがそう言っても、シンジは頭を抱えて聞く耳を持たない。

「またボクの気持ちを裏切ったんだ!」

そう叫ぶシンジをレンが心細い目で見つめている。
アタシもシンジと同じようにショックを受けていたけど、何とか理性の方が勝ったみたいだ。
このままじゃいけないと思ったアタシはシンジを思いっきり突き飛ばした。

「アスカ?」

しりもちをついて驚いた顔になったシンジにアタシは指を突き付けてやった。

「リツコ達の話も聞かないで決めつけるんじゃないわよ!」
「アスカお姉ちゃん……」
「相手の気持ちを理解しようとしないで自分の気持ちを押し付けようなんていけないわ」

アタシはシンジの手を握って優しく話しかける。

「人を信じる事は大切だって、シンジもアタシに言ってくれたじゃない」
「……」
「今まで何回も人を信じて傷ついた事もあったけど、心を閉じちゃうのは悲しい事よ」
「そうだね……」

シンジはアタシに向かって穏やかに微笑むと、リツコやミサト達に向かって謝った。

「ごめんなさいミサトさん、リツコさん、加持さん……ボクもひどい事を言ってしまって……」
「いいのよ、私も今までシンジ君達を傷つけるような事をしてしまったし」

急に仲直りしたように見えたシンジ達を見て、レンはちょっと戸惑ったように見える。

「アスカお姉ちゃん、一体どうなっているの? シンジお兄ちゃんが急に仲良くなったように見えるんだけど」
「雨降って地固まるって事よ。傷つけあっても、取り戻せる絆はあると思うわ」

アタシがそう言うと、レンは暗い顔をしてうつむいた。

「レンはヨシュアお兄ちゃんにひどいこと言っちゃった。……謝れば許してくれるかな?」
「きっと、ヨシュアなら大丈夫よ」

アタシがそう言ってレンの頭をなでると、レンは安心したように笑顔を見せてくれた。

「アスカ、あなたが居てくれて助かったわ」
「んで、アタシ達がエヴァに乗らなければいけない理由は?」
「これから、北の国境のハーケン門から帝国軍の戦車部隊が攻め込んでくるの」

リツコがサラッと言った衝撃的な事に、アタシとシンジは固まってしまうほど驚いた。

「何で突然?」
「きっと結社の仕業よ。帝国の宰相は結社と繋がっているって聞いたわ」

レンがそう言うと、リツコは頷いた。

「過去に帝国がリベール王国に進攻してきた時は、あっという間にハーケン門は打ち破られてロレントとボースが占領されたらしいわね」

確か、エステルのママも戦争の犠牲者になったんだっけ……アタシはリツコの言葉を聞いて胸が痛んだ。

「通常兵器がATフィールドに無力だと言う事は知っているわよね」
「それって……」
「そこで二人にはエヴァでハーケン門からの侵攻を食い止めて欲しいのよ」
「アタシ達二人だけで!?」

アタシがそう言うと、リツコは申し訳なさそうに頷いた。

「戦車って事は人が乗っているんですよね……」

シンジが暗い顔でそうポツリと呟くと、アタシはハッとなった。
アタシ達は今まで人の命を奪ってきたことなんて無かった。
使徒に飲み込まれてこの世界に来た後だって……。

「この武力衝突による被害を抑えるために……あなた達にエヴァに乗ってもらいたいの」
「二人はなるべく相手側にも死傷者を出さないように、侵攻を防いで欲しいのよ」

リツコとミサトの言葉にアタシとシンジは顔を見合わせた後、ゆっくりと頷いた。

 

《ボース地方 ハーケン門》

ボクとアスカは二年ぶりに初号機と弐号機に乗り込んだ。
エヴァに乗るのはかなり久しぶりだったからシンクロ出来るかどうか不安だったけど、リツコさん達に聞かされたエヴァの真実がその不安をやわらげてくれた。
初号機と弐号機の中にはボクの母さんとアスカの母さんの魂が入っているんだって。
魂と言うのは言いかえれば肉体を失った精神みたいなもので、それを人造人間のエヴァに入れているってことみたいだ。
エントリープラグの中に居るのは母さんのお腹の中に居る事になるのかな……。
ボクとアスカはエントリープラグから母さんに呼びかけるかのようにエヴァにシンクロをした。
すると、ボク達二人は今までにない程の高いシンクロ率が出せたんだ。

「ママ、ずっとアタシの側に居てくれたのね……アタシの方から心を閉ざしていただけだったんだ」
「もしかして、母さん達はボク達のために自分からエヴァに……?」
「でも、それを強要したのは当時のゲヒルン……今のネルフなのよ。ごめんね……」

リツコさんは辛そうな顔をして謝っている。
でも、ミサトさんはもっと辛そうな顔だった。

「私はそんなシンジ君達を自分の使徒の復讐のための道具に……」
「ミサトさん、もういいです」
「でも、謝らないと……」
「いいって言っているだろう!」

ボクはついミサトさんに向かって怒鳴ってしまった。

「ミサトは今はアタシ達の事、そうは思っていないんでしょう?」
「ええ……」
「アタシ達は今を大切にして行こうと決めてるのよ。あんまり過去を振り返らなくても、ね?」

アスカがフォローしてくれたおかげで、雰囲気はやわらいでくれた。

「母さん、ボクに力を貸して……アスカやみんなを守りたいんだ」
「ママ、お願い」

ボクとアスカがさらに念じると、初号機と弐号機の背中から翼のような物が生えて来た。

「エヴァの中に眠る、S2機関が覚醒したのよ」

リツコさんの話によると、エヴァは空を飛べるようになって、電源ケーブルが無くてもいつまでも動けるようになったみたいだ。
エヴァにこんな力があるなんて……。

「行くよ、アスカ」
「そうね、シンジ」

ボク達は空を飛んで、ハーケン門の北、帝国側の平原で戦車の列が王国に向かって進撃中なのが見えた。

「間にあったみたいだね」
「ギリギリってところね」

ボク達は急いで戦車達の進路を塞ぐように着地した。
着地の衝撃で、平原に大きなクレーターのような段差が出来る。
きっと帝国軍の戦車隊は王国軍の不意をついたと思い込んでいたんだろう、ボク達のエヴァが現れただけでかなりの間混乱をしていた。
やがて、戦車達の主砲がこちらに向けられた。

「ママ、解っているわ、ATフィールドの意味!」

弐号機の周りに強力なATフィールドが展開された。
ボクも母さんの魂の宿っている初号機を守ろうと強く念じると、今までとは違った力強いATフィールドが張られるのを感じた。
帝国の戦車達がボク達に向かって一斉射撃を始めた。
派手に爆煙が上がるけど、エヴァには傷一つ付けられなかった。

「無駄よ! こっちにはATフィールドがあるんだから!」

砲撃でエヴァを破壊することが無理だと言う事が分かると、戦車の一部がボク達を強行突破しようと動き出した。

「行かせない!」

ボクは戦車をわしづかみや足蹴りをして戦車の侵攻を防いだ。
着地した時クレーターのようになってしまった地形も足止めに役立っているようだった。

 

《グランセル城地下 封印区画》

「結社が特務兵達を使って城の地下を掘っていたなんて……」
「私も伝承でその存在は聞かされていましたが、城の地下深くにあるとは知りませんでした」

クローゼもアリシア女王様も知らなかった輝く環の存在を結社が知っていたなんて驚きね。
すでに結社の幹部、アルバ教授はリシャール大佐達と一緒に地下の最深部に向かって潜って行っているみたい。
あたし達は何が起こっているのかよく分からないけど、アルバ教授達の企みを止めなければいけない事は確かだった。
あたし達は遊撃士のみんなと一緒に、封印区画を守る魔獣を蹴散らしながら奥へと進んで行った。

「輝く環なんて物がアルバ教授に渡ったらとんでもない事になるわね」
「そうだね、何としてでも追いつかないと」
「こっちや!」

後から合流してくれたケビンさんとリースさんが案内人になってくれたおかげで、あたし達は迷路のような場所でも迷わずに進む事が出来た。
ケビンさんとリースさんは聖杯騎士だから、こういう遺跡の構造には詳しいんだって。
でも、いくら急いで進んでも、先に進んだアルバ教授達には追いつけなかった。
そして、あたし達はついに最深部にある大広間までたどり着いてしまった……。

「くくっ、この台座にゴスペルをはめ込めば『輝く環』の封印が解けるのだな?」
「……はい」

アルバ教授の声と、それに答える大男の特務兵の声、側に無言で立っているリシャール大佐とヴァルターさんの四人が台座の前に居るのが見えた。
あたし達の見ている前で、アルバ教授は持っていた黒い物を台座にはめる。
すると遺跡全体が大きく振動した。

「ふふ、役者はそろったようですね。これから私は『輝く環』の力を手に入れる。そして私は神となり、人類補完計画を実行するのだ!」

アルバ教授はあたし達の方を振り返って、勝ち誇ったようにそう宣言をした。

「人類補完計画?」

ルシオラさんも言っていたその言葉が気になったあたしは大声で聞いてしまった。

「人類補完計画とは、出来そこないの群体である人類を完成された一つの存在に昇華させると言う事ですよ」
「ええっ?」

アルバ教授が得意気に話し始めた説明に、あたしはポカンとしてしまった。

「人類は不要な肉体を捨て、補完された無欠の存在となる」
「それって、みんなの体が抜け殻みたいになっちゃうって事!?」

話を理解できたあたしは武器である棒を構えてアルバ教授をにらみつけた。

「フハハ、新たなる神の誕生をその目で見るがいい!」

アルバ教授は狂喜してそう叫んだ。
でも、次の瞬間アルバ教授は特務兵の大男に突き飛ばされ、リシャール大佐によって持っていた杖を奪われた。

「碇ゲンドウ、まさか私を裏切って貴方が神になるつもりですか!」

アルバ教授ににらみつけられた特務兵の大男がカブトを外して答える。

「私は神になるつもりはありませんよ」
「ヴァルター、何をしているんですか、裏切り者の二人を蹴散らしなさい!」
「ふん、何を言っている。結社を裏切って神になろうとしたのは教授じゃないか。福音計画はどこに行ったんだよ」

ヴァルターさんはそう言うと、立ちあがろうとしていたアルバ教授に思いっきりパンチとキックを叩きこんだ!
派手に骨の折れる音がこちらまで聞こえる。

「ありゃりゃ、教授の足は思いっきり骨折したね」

今まで気配を感じさせなかった結社の一員、カンパネルラが姿を現した。
カンパネルラの言葉通り、教授は膝を押さえて苦しんでいる。
あたし達は目の前で起きた結社の幹部の仲間割れに驚くしかなかった。
そして部屋の振動は治まって、台座にまばゆい光を放つ光の環が姿を現した。

「これが、『輝く環』?」
「エステル君、ヨシュア君、『輝く環』の元へ来るのだ」

突然、大男の特務兵に呼ばれたあたし達は驚いた。

「なんで、あたし達の事を!?」

あたしとヨシュアが『輝く環』に近づくことをためらっていると、リシャール大佐とヴァルターさんが道を開けた。

「行きたまえ」
「フン」

どうやら二人ともあたし達と敵対する様子はないみたい。
あたしは後ろに居る仲間達に向かってうなづくと、ヨシュアと一緒に『輝く環』と大男さんの居る所へと近づいた。

「私の名は碇ゲンドウ。君達の事は息子のシンジから聞いているし、私自身も君達を知っている」
「ええっ、おじさんみたいな怖そうな人がシンジのお父さん? あんまり似てない!」
「エステル、驚くところが違うって」

あたしはそう言ってゲンドウさんの顔をまじまじと眺めた。

「言われてみれば、おでこの部分が似ているかもね!」
「エステル、だから違うって」
「ふっ」

あたし達のやり取りを見てゲンドウさんは少し笑ったみたいだった。

「私は未来からやってきた存在なのだ」
「え?」
「君達を呼んだのは、君達の手で『輝く環』の力を発動して欲しいと思ったからだ」
「待ってください、僕達は『輝く環』を止めるために来たんですよ? 人類補完計画などと言うバカげたことを防ぐために」

ヨシュアはゲンドウさんの言葉を聞いてたまらずそう叫んだ。

「君達なら『輝く環』の力を正しく解放できる。インパクトにより人は魂だけの存在になってしまっても再び戻れる」
「そんなこと言われても……」
「『輝く環』の力が発動されなければ、こうして私がここに立っていることもできないのだ、頼む」

ゲンドウさんに頭を下げられても、あたし達は迷っていた。
広間の中にいるみんなもゲンドウさんの言う事を信じていいのか疑っている様子だった。

「エステル、ヨシュア、逃げてはいけないぞ」
「父さん!」
「兄さん!」

広間の入口から姿を現したのはカシウス父さんとレーヴェさんだった。

「確かにお前達の前には新たなる困難が立ちふさがるかもしれない。しかし、希望があるんだろう?」
「それに、『輝く環』を再び封印する事は未来に不安を残すと言う事だ」

父さんとレーヴェさんに言われて、あたしとヨシュアは考え込んだ。
広間に集まったみんなも黙ってあたし達を見つめている。

「ヨシュア……あたし達、大丈夫だよね」
「うん、きっと大丈夫だよ」

あたし達は見つめ合うとそっと手を取り合った。
そして、ゲンドウさんに向かってゆっくりとうなづいた。

「それでは、『輝く環』に念じて二人で手を触れるのだ」

あたしは素早くヨシュアを抱き寄せて軽くキスをすると、口を離してヨシュアの手を握って、もう片方の手をヨシュアと一緒に『輝く環』に向かって伸ばした。

「魂だけになったらキスすることもできなくなるかもしれないから」
「そうだね」
「ヨシュアは、何を考えているの?」
「エステルのことばっかり考えてる」
「……あたしもヨシュアの事……」

あたし達の目の前がまばゆい光に包まれた。
その光はどんどんと広がり、世界を飲みこんで行くのだろう。
きっと、シンジとアスカも。
この光が希望の光でありますように……。
あたしはそう願っていた……。


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