(cache) 仙波敏郎愛媛県警巡査部長に聞く「裏金告発の行方」
 




 

なぜ「署長になったら家が立つ」のか


愛媛県警巡査部長
仙波敏郎 氏  

仙波  だから正規に毎年配分される捜査費以外に、何か事件があったら、捜査費が余分に配分されるわけですから、捜査本部を設けたいと考えているんじゃないかと思うこともしばしばですよ。

運営者 お金が入ってくるからですね。

仙波  僕が宇和島署にいたときは、だいたい年間1200万円くらいの裏金がつくられていたと聞いていました。
 裏金作りは会計課長の仕事です。そのために会計課長が署員や職員にニセ領収書を書かせます。僕もその依頼を受けましたよ、すでにお話したとおり。だけど県警は万が一のことを考えて、筆跡については注意を払っています。

運営者 会計検査とか、監察で不正がばれないようにするためですね。

仙波  そうです。ですから、当時はひとりの警察官・職員には領収証の偽造は毎月一人3枚までになっていました。宇和島署は100人規模でしたから領収書は300枚ほどしか偽造できません。ということは、僕が「領収書を書きません」と言ってしまうと、297枚の領収書しか偽造できないことになってしまうのです。

運営者 会計課長はとっても困るわけですね。

仙波  そうすると会計課長は、隣接署に「50万円分の領収書をおたくの署員に書かせてもらえないか」と依頼するわけです。「その代わりウチの人間にも、おたくの領収書を書かせますから」なんてことをやっているわけです。
 なんでもありなんですよ、裏金作りのためにはね。

運営者 そうなんですか。

仙波  裏金は、一部幹部の飲み食いにあてられるんですよ。

運営者 まあ、そうでしょうね。飲み食いくらいならかわいいと思いますが。

仙波  使い方がうまいんです。正月に署長官舎にみんなが年始に行きますよね。そういうときに使うんです。
 課長連中は、だいたい月に5〜10万円渡されて、「これを交際費としてお前にやるから、ちゃんと領収書をまとめろ」と言われるわけです。
 人の良い課長はその金で、課員に酒を飲ませます。悪い課長はその金を全部懐に入れてしまいます。

運営者 どちらにしろ不正は不正ですよね。なんかもう頭が痛くなってきました。

仙波  そうなんですけどね。年間で1200万円ほどの裏金が作られていたと言いましたよね。課長連中のいわゆる交際費や実際の捜査の経費として400万円くらいが使われていたらしい。800万円ほどは残りますよね、残った金は、全額署長がキャッシュで餞別として年度末の転勤のときに持っていきます。全額です。
 だから署長の任期は短いんです。長くても2年です。年度末には残った金は署長の懐に消えてしまって、裏金を保管する金庫はからにしますからね。年度が変わればまた、金が入ってくるからですよね。

運営者 ということは、みんな転勤をしたいんですね。そして単年度決算だから、年度末には金庫を空にしなければならないわけですね。
 この悪習は1年サイクルで繰り替えされているわけですか。

仙波  「署長になれば家が建つ」といわれるのは理由のないことじゃあないんですよ。

 

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